「嫌なら見るな」

ネット上でフジテレビを批判する際によく用いられる、この決まり文句。もともとは数年前、ナイナイの岡村が口にした放言を皮肉ったものだというのは、有名な話です。


2011年。ナインティナインのオールナイトニッポンの生放送中、当時話題になっていた、フジの韓流偏重をTwitterで批判し、所属事務所を解雇された俳優・高岡奏輔の騒動に触れた岡村は「見いひんのやったら、見いひんかったらええのよ。ただそれだけのことやのに、それをなんでみんなに言う必要があんのやろなって思ってまうのよね」と、持論を展開してみせたのです。

岡村としては、「8は今マジで見ない」と呟いた高岡を含めた、批評家気取りの視聴者に、自分なりの正論を述べたつもりなのでしょう。しかし、「テレビ側」の人間、それも当時フジの顔的存在だった岡村が「嫌なら見るな」とは、殿様商売的上から目線の暴論に聞こえなくもありません。
かくして岡村は、ネット上で大バッシングに見舞われることとなり、それから6年半経った今もなお『めちゃイケ』が低視聴率のときは「嫌だから見ませんでした」などと、ネット掲示板に嫌味を書き込まれる始末となっています。

けれども、彼が批判的な視聴者たちへ、つい感情的になるのも分からないではありません。なぜなら、2000年、まさにその批判的な視聴者たちからのクレームにより、看板番組の人気企画が終了に追い込まれたのですから。

全国の小中学生が夢中になった『しりとり侍』


問題となった企画は、2000年3月11日~2001年2月10日にかけて『めちゃイケ』で放送されていた『七人のしりとり侍』。その名の通り、黒澤明の名作『七人の侍』のパロディであり、侍の格好をしためちゃイケメンバーが、「三文字しりとり」に取り組むというものです。

ルールは至ってシンプル。「さん、はい、フォッフォッ、フォフォフォ!」の掛け声と共に始め、一人目「いくさ」(フォッフォッ)⇒二人目「さかな」(フォッフォッ)⇒三人目「なすび」(フォッフォッ)……というふうに、「フォッフォッ」の掛け声で間を取りながら、テンポ良く、円形に並んだ7人がしりとりをしていきます。

こうした、単純明快なルールと、一瞬の判断力が求められるゲーム性の高さが評判を呼び、瞬く間にブームとなった『しりとり侍』。
当然、真似する人も続出し、当時筆者が通っていた中学校でも、休み時間には「フォッフォッ、フォフォフォ!」の掛け声がいたるところから、聞こえてきたものでした。

袋叩きにされる罰ゲーム、真似する児童も?


しかし、大人しくゲーム部分だけ真似すれば良いものを、やんちゃな盛りの男子学生たちは、失敗した際の罰ゲームまで、模倣したようです。
『しりとり侍』における失敗者に課せられる罰は、乱入した野武士軍団から模造刀で袋叩きにあうというもの。当然、そこには、安っぽいウレタン製の刀をつかうなど、「オトナの手加減」が加えられていたのですが、加減を知らない子供たちの手に掛かると、凶暴な暴力になってしまいます。

BPOの見解発表を受けて打ち切りに


このような現状を憂慮した視聴者から、放送番組向上協議会(現・放送倫理・番組向上機構)「放送と青少年に関する委員会」へ同企画に関するクレームが殺到。
委員会は審議の後に、2000年11月29日、「暴力やいじめを肯定しているとのメッセージを子どもたちに伝える結果につながると判断せざるを得ない」との見解を発表します。

それを受けて、岡村はコーナーの続行を自身のラジオで強く訴えたものの、結局、願いは叶わず。翌年2月10日、惜しまれつつも『しりとり侍』は打ち切りとなってしまいました。

あれから16年。果たして、放送倫理・番組向上機構の取り組みにより、以前よりテレビは健全になったのか、いじめはなくなったのか……。判断は難しいところです。いずれにしても、岡村が規制だらけになった地上波ゴールデンの番組などよりも、ネット配信用コンテンツ『めちゃ×2ユルんでるッ』に出演しているときの方がよほど楽しそうなのは、間違いありません。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonよりナインティナインのオールナイトニッ本 vol.6 (ヨシモトブックス) (ワニムックシリーズ 207)
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