アニメは97年4月スタートだから、この春で放送開始20周年。
そんな『ポケモン』がテレビから消えたことがあった。97年12月16日、テレビアニメ『ポケットモンスター』を見ていた子どもたちが突然倒れた、いわゆる「ポケモンショック」である。
被害者が1万人を超えた「ポケモンショック」とは?
問題となったのは第38話「でんのうせんしポリゴン」。主人公たちがコンピュータの世界に入り込む内容であり、その世界観の表現に激しい点滅を繰り返す画面効果が多用されていた。
特に問題視されたシーンは、午後6時51分34秒からの約4秒間とされている。赤と青の光が超高速で激しく点滅したことにより、「気分が悪くなった」「目がかすむ」程度の症状から「全身けいれん」まで、体調を崩す子どもが続出。緊急搬送される自体が相次いだ。
翌日のNHK夜7時のニュースでは、729人が病院で手当てを受けたと報道。さらに消防庁の集計によると、17日午後5時までの段階で、30都道府県で計685人が病院に運ばれ、意識不明などの重症者3人を含む計208人が入院したという。
18日の読売新聞朝刊では「各地の教育委員会の調査では、小学生を中心に病院には行かないまでも、1万人以上が吐き気などの症状を訴えていたことが分かった」と報道されている。
現在では、「光過敏性発作」によって引き起こされたとの見方が大半であるが、当初は原因が特定できず、大混乱となっていた。
チャンネル占拠率は30%強! 圧倒的影響力あってこその悲劇
元々は『ゲームボーイ(GB)』のソフトとして始まった『ポケモン』の歴史。低迷していたGB人気を復活させただけにとどまらず、『コロコロコミック』とのメディアミックス戦略により、部数を120万部から200万部まで拡大させるなど、その影響力は当初から絶大だった。
アニメ放送間もなく、永谷園がふりかけやカレー、ホットケーキミックスなどの商品をポケモンのライセンス契約で売り出したところ、半期の売り上げ予想15億に対して、実績は47億円を達成。予想の3倍以上にもなったという。すでに4,000億円とも言われる一大市場を築いていたのである。
問題となった『ポケモン』放送時のチャンネル占拠率は30%強。つまり、テレビを付けていた10軒に3軒は見ていたことになる。テレビ東京の発表では、345万人の視聴者が見ていたと推定。それだけに、騒動の余波は大きかった。
アメリカ&ロシアでは「ポケモンショック」を兵器に応用している!?
人気アニメが引き起こしたショッキングな事件に報道は連日過熱、そして情報は錯綜して行く。
直接の被害者の声を報道するよりも、『ポケモン』そのものやアニメ、ゲームのあり方を叩く声の方が上回っていた印象。ここら辺、いつの時代も同じである。
中には、こんな変わった意見もあった。
12月18日の読売新聞朝刊では、当時の橋本総理大臣がこの事件についてこのようなコメントを残している。
「光とかレーザーは、もともと武器として考えられていたものだ。
……本気で言ってんの?なんて考えていたら、それを裏付けるような説が続いて登場する。
12月24日の朝日新聞朝刊では、アメリカの「USニューズ・アンド・ワールド・リポート」の記事を引用し、今回の事件を応用した光線点滅兵器の開発が、すでにアメリカ、ロシアで進んでいると報道。
「同誌によれば、米国防総省は点滅するストロボ光線を非殺傷兵器として利用することを研究、ロシアは人体機能に影響を及ぼす特定の光の配合をパソコン画面に出現させるコンピューターウイルスの開発を完了したといわれる」
……信じるか信じないかはあなた次第です!
4ヶ月の自粛を経て復活した『ポケモン』
テレビ東京は、原因が究明されて再発防止策が取られるまで、『ポケモン』関連の放送を全面的に自粛することとした。地方局もこの動きに追随。大手のビデオレンタル店では貸し出しも自粛。特番ラッシュの年末年始、テレビから『ポケモン』は消えたのだった。
その後、厚生省(当時)が「光感受性発作に関する臨床研究班」を発足、郵政省(当時)も「放送と視聴覚機能に関する検討会」を設置するなど、行政もこの問題解決に務めた。
4月8日、NHKと民放連は光の点滅などを規定したガイドラインを発表し、再発防止に務めることを宣言。そして4月16日、今まで火曜18時30分からだった枠を木曜19時に移この回は16.2%の高視聴率を獲得。全国の子どもたちにとって、待望の復活だったことは間違いない。
現在、テレビで目にする「部屋を明るくして離れて見てね」的な注意書き。
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