映画の予告編でよく流れるこの常套句。「漫画原作モノ=地雷」というのは、もはや一般常識。
原作の知名度が高ければ、映画の注目度はもちろん上がります。しかし、その分、査定の目も厳しくなるのが、漫画原作モノの辛いところ。
仮に『ONE PIECE』を実写でやるとしたら、半端じゃなく盛り上がるでしょうが、誰がルフィ役やナミ役をやるにしても袋叩きに遭うことは、容易に想像がつくでしょう。
漫画『ROOKIES』を選んだ絶妙さ
そういう意味で、森田まさのり原作の高校野球漫画『ROOKIES』を、2008年にドラマ化したのは絶妙なチョイスでした。なぜならこの作品、同時期に連載していた『ONE PIECE』や『NARUTO -ナルト』『HUNTER×HUNTER』などと比べると、爆発的人気を誇った……というほどでもなかったからです。
人気のバロメーターである掲載順も、雑誌中盤から後半を行ったり来たりといった感じでした。
市原隼人、小出恵介、桐谷健太らが野球部部員役で出演
しかも『ROOKIES』の連載期間は、1998年10号から2003年39号にかけて。なぜ、10年も前にスタートした漫画を、あえてドラマ化しようとしたのか……。
その理由は、メインキャストにあたる二子玉川学園高校野球部部員の配役を見れば、一目瞭然。市原隼人、小出恵介、城田優、中尾明慶、高岡蒼甫、桐谷健太……。いずれも当時売り出し中だった若手イケメン俳優ばかりです。
『花ざかりの君たちへ』も……量産されたイケメン学園ドラマ
『ROOKIES』がドラマ化された2000年代後半といえば、イケメン俳優を大量起用した学園モノの流行期。2000年代前半にヒットした、『ごくせん』(日テレ系)や『WATER BOYS』(フジテレビ系)、『花より男子』(TBS系)、ミュージカル版『テニスの王子様』の影響もあり、「学園モノ×複数の若手イケメン」という図式は定番化していきます。
その流れは、2000年代後半にも引き継がれ、『花ざかりの君たちへ』(フジテレビ系)、『メイちゃんの執事』(フジテレビ系)、『桜蘭高校ホスト部』(TBS系)などが、同系統の作品として人気を博したものです。
こうした背景があったからこそ、連載終了から5年経過という今更なタイミングで、『ROOKIES』はドラマ化されたのだと思われます。
興行収入年間1位! 映画『ROOKIES -卒業-』も快挙
また、若手イケメン俳優を多数起用しつつも、『ろくでなしBLUES』の原作者・森田まさのり先生らしい、男臭い世界観をかなり意識した作風になっているのが、何ともニクイところ。
これにより、新規の女性ファンを獲得しながらも、同時に、原作ファンからも支持される作品にしようという、製作者サイドのクレバーな意図が透けて見えるというものです。
かくして、ドラマ版『ROOKIES』は、平均視聴率15%弱を獲得。翌2009年には映画化もされ、興行収入85.5億円で、この年の邦画・洋画全作品中で興行収入1位という快挙を成し遂げるに至るのです。
この『ROOKIES』のヒットから見えてくるのは、時流を読むことと原作の世界観を守ることの大切さ。特に漫画原作モノ作品の創り手が、後者を疎かにした場合どうなるかは、言うまでもないでしょう。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonよりROOKIES (ルーキーズ) 表(おもて)BOX通常版