中でも最大のブレイク銘柄といえば、モーニング娘。をおいて他にないでしょう。
1997年に行われた「シャ乱Q女性ロックボーカリストオーディション」の落選者(中澤裕子・石黒彩・飯田圭織・安倍なつみ・福田明日香)で結成された同グループ。“インディーズシングル「愛の種」5万枚完売でメジャーデビュー”という難題を突きつけられた彼女たちは、全国5都市で手売り販売するというキャンペーンを実施し、見事に条件を達成します。
その後、『LOVEマシーン』の記録的ヒットにより、国民的アイドルの名を欲しいままにしたのはご存知の通りです。
敏腕プロデューサーとしての地位を確立したつんく♂
このモー娘。成功における最大の立役者が、つんく♂です。つんく♂が行ったモー娘。への楽曲提供及びプロデュース活動は、松浦亜弥、藤本美貴など他のアーティストにも及び、結果として女性アイドル集団『ハロー!プロジェクト』の形成に尽力することになります。
それ以前まで隆盛を誇っていた小室哲哉率いる「小室ファミリー」にとって変わるように登場した、つんく♂率いるアイドルたちは「つんく♂ファミリー」と呼ばれ、2000年代前半に大変な権勢を誇りました。
しかし、ASAYANにおいて、つんく♂とモー娘のような成功を収めたプロデューサー×アーティストは、ほんの一握り。不発に終わったプロジェクトも数多く存在します。
河村隆一がプロデュースした『Say a Little Prayer』というグループも、そんなASAYAN発グループの一つです。
モー娘。と同じ手法で売り出された
ソウル・ミュージックの大御所、アレサ・フランクリンのカバーで有名になったポピュラーソング『I Say a Little Prayer』(邦題:小さな願い)に由来する同グループの母体は、「AIS (アイス)」というユニット。
これは、ASAYANの人気オーディションコーナー『コムロギャルソン』の落選者を集めたデビュー支援プロジェクトであり、そこに参加していた田口理恵・片桐華子・大櫛江里加の3人で結成されました。
この落選者から敗者復活戦のように選抜するというやり方や、その後展開させたレコード会社と契約するためにインディーズ盤1万枚を10日間で完売させるという条件……。
Say a Little Prayerは、まんまモーニング娘。と同じ方法論で売り出されていました。しかも、モー娘。よりも前に、こうしたマーケティングを実践。見事に10日間の猶予を与えられながらも、わずか2日間でタワーレコード渋谷店において完売するという、抜群の実績をたたき出したのです。
1999年に解散したSay a Little Prayer
メジャーデビュー後にリリースされた、ЯK(河村隆一)プロデュースのシングル『小さな星』はオリコンウィークリーチャート初登場6位を獲得。これは、モー娘。のメジャーデビューシングル『モーニングコーヒー』と全く同じ順位です。
しかしその後、モー娘。が2ndシングル『サマーナイトタウン』=4位、『抱いてHOLD ON ME!』=1位と、着実にステップアップしていったのとは対照的に、Say a Little Prayerは、2ndシングル『a day』=20位、3rdシングル『深愛』=29位と目に見えて失速。
結局、シングル・アルバム合わせて計10枚発売されたものの、泣かず飛ばずで1999年に解散。皮肉にも、『LOVEマシーン』でモー娘。が大ブレイクしていた時期でした。
同じ番組の同じ手法で売り出された両グループ。明暗を分けたものは、いったい何だったのでしょうか……。
明確な理由は分かりません。いずれにしても、何らかの歯車がうまくかみ合っていれば、河村隆一がつんく♂のように、巨大アイドル帝国の象徴として君臨していた未来があったのかも知れません。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonより抱きしめて