ワイドショーのメインコンテンツともいえる芸能人・著名人のバッシング。ベッキー、乙武洋匡、成宮寛貴、江角マキコ、清水富美加、茂木健一郎などなど、ここ最近は特に全人格を否定する勢いで袋叩きにされている印象だ。


元々は、女性週刊誌のお家芸だったこの流れ、テレビに本格進出して来たのは大物へのバッシングが相次いだある年からではないか、と筆者は考える。
その年とは94年。様々な理由から、数多くの芸能人・著名人がやり玉に挙がり、ワイドショーが連日フィーバーしていたのである。

不倫バッシングで窮地に立たされた松田聖子だったが…


神田正輝との結婚後、数々の不倫疑惑が報じられた松田聖子。特にワイドショーを賑わしたのは、3年におよぶ関係にあったとされるアメリカの無名俳優との不倫騒動だろう。

2人の関係は90年秋に発覚。写真誌が東京ディズニーランドでのデートやホテルでの密会をスクープしたのが発端だ。当時の聖子は活動の拠点をニューヨークにしており、信ぴょう性も十分。ワイドショーや週刊誌の報道は過熱して行ったが、時とともに騒動は沈静化していた。

しかし94年春、2人のキス写真が流出。さらに噂の交際相手が暴露本を出版する自体となる。タイトルは『真実の愛』。聖子直筆のラブレターや親密な写真なども公開する念の入りようだった。
要は、捨てられた恋人の腹いせ&売名行為である。

これを受け、聖子は「キスはアメリカではよくある挨拶」「相手はアルバムのデュエット相手で、英会話教師」と苦しい釈明をしたが、大スターの不倫が確定的なことにワイドショーは大騒ぎ。過去のVTRも引っ張りだして、一斉に叩き始めたのだ。

しかし、聖子のありのままに生きる自由さ、強さ、さらに言えばしたたかさが次第に女性の共感を得る形となって行ったのだから、世の中わからない。
その後、バックダンサーの外国人新恋人も発覚するが、どこ吹く風。「女性の不道徳を常識にした女」として、特に同世代の働く女性にとっては「憧れの生き方」として特集が組まれるほどにまで発展していった。

バッシングを消し去るどころか、再浮上のきっかけにしてしまった松田聖子。昭和の生み出した最大のアイドルは、カリスマ性もケタ違い。ワイドショーをも味方に付けてしまうのであった。

野田秀樹を略奪!? 大竹しのぶも不倫で大バッシング


こちらも94年の春、大竹しのぶが野田秀樹を略奪したことで大バッシングを受けている。

交際がキャッチされた2人は共に会見に応じ、恋人関係を認めた。大竹しのぶは明石家さんまと離婚済み、野田も前年末に離婚していたから問題はなかった……はずだった。
しかし、野田が離婚前に大竹と密会旅行をしていたことが発覚。
野田が17年掛けて心血を注いだ劇団「夢の遊眠社」の解散の原因も大竹にあるとされ、大バッシングを受けることになったのだ。

逆風の中、大竹は構わず野田との同居生活をスタート。聖子同様、動じることなく自然体を貫いた。激しい攻撃を続けたワイドショーも次第に"バカ負け"の印象。結果、こちらも女優としてのキャリアアップの糧としてしまうのであった。

ちなみに、2人の交際は5年にも及んだが、結局入籍はしないままの関係だった。

女性が嫌いなタレントNo.1! 突然の大バッシングを受けた裕木奈江


裕木奈江が「女性が嫌う女性タレント」として猛烈なバッシングを受けたのも94年春ごろだ。

当時の裕木は、山田洋次監督の映画『学校』で日本アカデミー賞の助演女優賞と新人俳優賞を獲得し、まさに上り調子だった時期。
なぜか、様々な女性誌が「上目遣いの表情がいじめたくなる」「男に媚びてるような目が嫌い」など、完全な言いがかりを一斉に報道。「裕木奈江はなぜ嫌われる」と題して、人相学や運勢面から叩く企画まであったほどだった。

バッシングの原因には、前年の日本テレビ系ドラマ『ポケベルが鳴らなくて』での役柄にあると見る向きが多い。
緒形拳演じる妻子ある男性と不倫する29歳年下の女性であり、しかも男の娘と親友という役どころ。
大人しそうな雰囲気の裕木が略奪愛で(結果として)家庭を崩壊に追い込むのは、あくまでドラマ上の話である。

しかし、そのイメージが鮮烈すぎたのか、「不倫をしそうな女性」「男を略奪しそうな女性」などのレッテルが完全に貼られてしまったのだ。これにより、好感度が急落し、CM・ドラマへの出演が激減。芸能界を干されたような形となってしまった。

実はバッシングが始まる直前、ドラマ主題歌『ポケベルが鳴らなくて』のCMでの裕木奈江の起用方法や、裕木自身が歌ったエンディング曲の扱い、役の設定等をめぐって、裕木の事務所がドラマ制作会社に訴訟を起こしている。
事実、裕木はドラマの最終回を「他番組の海外ロケのため」という理由で不参加。代役が吹き替え撮影をしたという前代未聞の経緯があった。

ドラマ終了半年後に突如始まったバッシング、そこには芸能界の闇が垣間見えるのである……。

バッシングを糧にした松田聖子、大竹しのぶに対して、完全に飲み込まれてしまった裕木奈江。バッシングを活かすも殺すも、その人の力量次第ということだろうか?

しかし、芸能人ならまだしも一般人がバッシングを受けたらたまらない。次の犠牲者は、当時芸能人ではなかったあの人である……。(後半に続く)

※イメージ画像はamazonより輝いた季節へ旅立とう
編集部おすすめ