開局以来、さまざま話題番組を世に送り出してきた一方で、“エッヂを効かせすぎた”ことによって、ほとんど世に知られることなく終わるものも数知れず。
衝撃的だった番組オープニング
この番組は、2000年7月~12月にかけて放送されていた。強引にジャンル分けをすると、バラエティーなのかもしれないが、そんな枠を飛び出すくらいの衝撃的な企画を次々に繰り出していた。
とある放送回のオープニングを紹介しよう。セピア色の画面。鏡に向かってメイクをしている女性。そして静かな音楽と女性の鼻歌。見様によっては、アート系映画のワンシーンかと見間違うほどの美しい映像だ。
その女性が、メイクをしながら、背後に気配を感じ、ゆっくりと振り返ってみると……そこには、坊主頭のドラッグクイーンが立っていて、「バミリオン・プレジャー・ナイト!」と、タイトルを叫ぶ……。
ほとんど理解できない内容だが、こうした短い映像がなんの脈略もなく延々と続いていくのがこの番組の特徴だった。それでは、ほかにどんなコーナーがあったのか。とりわけ過激なものを厳選して紹介してみよう。
放送コードギリギリ!?「ミッドナイトクッキング」
このコーナーは前期と後期で内容が変わってしまったが、より衝撃的だった前期について紹介する。
内容は、タイトル通りの料理コーナーで、清楚そうに見える女性が調理&進行役で登場する。
あるときは、どういうワケか、女性の手がブルブルと震えて仕方がないという設定。その状態だと調理に支障がでるので、震えをとめるため、万力に腕を入れてギリギリと締め上げていく。当然、最後は骨が砕けてしまう……。
またあるときは、“目隠し&手錠付き”で、揚げ物に挑戦。こちらも案の定、顔を油の中に突っ込んでしまう……。
演出として、そんなスプラッターの場面で、アメリカのシチュエーションコメディーのようなカラッとした笑いが効果音的に流れるのが、より不気味さを際立たせる。ブラックな笑いが好物な人には、たまらないコーナーだろう。
一部の人から絶大に支持される「オー!マイキー」
こちらは、サブカルファンならご存じという方も多い、出演者全員がマネキン人形という異常なミニドラマ。
まず、表情を一切変えず(笑ったまま!)、動きもしないマネキン人形を役者として起用し、アテレコでドラマを進行させる時点で、なんとも恐ろしさを含んだ不可解な世界観をもたらしてくれる。
また、パパ、ママ、子どもで構成される「フーコン・ファミリー」が主演なので、一応は、ホームドラマを装っているが、展開されるエピソードは残虐非道なものに偏りがちで、一般のそれとは全くちがう。
例を挙げれば、気に入らない隣人を始末したとか、体調が悪そうな子ども(悪霊がとり憑いていた)を強引に学校に行かせるとか、浮気相手を新しいパパだと子どもに思い込ませる母親といった、波乱に満ちたストーリー展開ばかり。
そんな、ホラーかコメディーか区別がつかないこのドラマが、一部の人から絶大に支持され、番組終了後にワンコーナーから独立し番組化された。数百万人を対象とする地上波テレビで、この内容が一本の番組として放送されたことは奇跡と呼べるだろう。
もはや理解不能だった「Dr.フェロー」
そして、最後に紹介するのが、もっとも理解に苦しむこのコーナー。
登場するのは、ナースのような格好をしたふたりの女性。このふたりがトランス系の音楽に乗って、治療のような行為をするだけのコーナーだが……。デカい注射を患者のお尻に突き刺したり、手術台にのせた女性の体をまさぐりながら臓器のような部位を取り出したりと、やっていることはメチャクチャ。
しかしだからといって、退屈かといえばそうじゃない。おそらく出演する女性はダンサーなのだろうか、それらのアクションと音楽が絶妙にマッチしていて、華麗なるダンスに見える。さらに、映像もクオリティーが高いので、退屈どころか見入ってしまうような不思議な魅力に満ちているのだ。
とはいえ、他のコーナーがそうであるように、このコーナーも一応は“笑い”を主眼としているはず。しかし、どこかに笑いが隠れているのではと目を皿にして探しても、一向にどこが笑えるのか見えてこない(それ自体が笑えてしまうのだが……)。
もっと言えば、どうしてナースが踊っているのか? Dr.フェローなのになんでナースなのか? 映像に映っている、あらゆる事柄すべてに理由が見出せない。
まさにこの番組を象徴するような、シュールの極み! どれくらいの人が理解できるのか、アンケートをとってみたくなる怪作だ。
この番組は、いまでも動画サイトなどに(違法配信ではあるが)定期的にアップされている。そうしたことからも、20年以上経った今でも人気が根強いことが分かるだろう。
(村井 茜)
※イメージ画像はamazonよりバミリオン・プレジャー・ナイト Vol.3 [DVD]