
1992年に発売された『ファイアーエムブレム外伝』を現代的にリメイクした作品
本作は1992年3月14日に発売されたファミリーコンピューター用ソフト『ファイアーエムブレム外伝』(以下「外伝」)のリメイクにあたる。
ファイアーエムブレムシリーズは、ジャンルとしてはロールプレイングシミュレーションゲームだ。プレイヤーは自軍を動かし、敵の集団と戦い、成長させる。そうして強敵に打ち勝ち、ストーリーを進めていく。
外伝およびEchoesは、最近のファイアーエムブレムシリーズとは仕様が異なる部分が多いため、独自の部分を中心に見ていこう。
三すくみが無い、陣取りゲーム
最初に戸惑うのは、戦闘時だろう。最近のファイアーエムブレムシリーズでは、兵種による相性システムがあった。剣は斧に強く、斧は槍に強く、槍は剣に強い。これを利用することで、弱点となる兵種で攻撃し、強敵を倒すことができた。
ところがEchoesは三すくみがない。どの武器で戦っても、有利不利は存在しない。
実は、三すくみの概念が導入されたのは1996年発売の『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』からなのだ。ベースとなった外伝に三すくみがそもそもないので、Echoesにも導入されていない。別のリメイク作品では三すくみが導入されているものもあるが、そもそも外伝では斧を使うキャラクターが主人公側の軍には登場しない。
ではどうやって強敵との戦いを有利に進めるか。地形を使うのだ。
キャラクターがいる場所によって、回避力にボーナスが加わる。例えば全く同じ敵と戦っても、平地で戦えば相手の攻撃が100%命中するが、森林で戦うと40%のボーナスがついて、60%命中(40%の確率で回避)となる。いかにも武器を振り回しにくそうな森の中や、建物の中では回避ボーナスがつくと考えるといいだろう。

つまり、相手より先に地形効果の高いところに陣取って攻撃する方が圧倒的に有利になる、陣取りゲームとなっている。したがって防御側がとても強く、砦の中などは地形効果が高いため、攻め落とすのがかなり大変だ。
では先に敵に有利な位置をとられた場合にはどうすればいいのか。ここで魔法の出番だ。魔法攻撃は地形効果を無視することができるため、どこにいようと関係がない。
そうなると、全部魔法で済ませてしまえばいいと思う人もいるだろう。だが、本作での魔法は、発動にHPを消費する。強力だったり射程が長い魔法ほどHPを多く消費してしまうため、使いまくっているとあっという間にやられてしまう可能性がある。
さらに、弓の射程が従来のシリーズよりも大幅に長いため、魔法が届かないところから弓でやられてしまうことも多い。
というわけで、兵士で有利な陣を取り、地形効果の高いところにいる強敵は魔法で倒し、敵の魔法使いは弓で倒す。これが基本的な戦闘となる。従来の三すくみとは違ったバランスで面白い。
ちなみに弓も従来とは感覚がかなり違っていて、射程が長いことの他に、隣接しているマスにも攻撃ができるし、飛行特攻がついていない。ここも、最近のファイアーエムブレムだけしかやったことがないプレイヤーは戸惑うところだろう。
クラスと武器の育成要素
ファイアーエムブレムシリーズでは、キャラクターを育てることに楽しみを見出すプレイヤーが多い。
敵を倒して経験を積み、レベルアップすることで上級職へとクラスチェンジができる。ここも、最近のシリーズとは少し異なるので注意が必要だ。
Echoesではクラスチェンジ時に、もらえるボーナスが一定ではない。
もちろん、元のクラスで育てきってからクラスチェンジをした方が強くなる。Echoesでは上級職の上に最上級職が用意されているクラスもあるので、とことん育てあげることも可能だ。
もうひとつの育成要素は、武器の使い込み度。特定の武器を装備させて、何度も使用すると、その武器を使った時のみ使用できる「戦技」を覚える。戦技はHPを消費することで使うことができ、強力な効果を発揮する。敵に合わせて武器を変え、戦技を変えるといった戦い方もできる。

武器によっては、戦技だけではなく効果をもっているものもある。前述の飛行特攻は、効果を持った弓を使った時のみ発動するようになっているのだ。
二つの軍に分かれて戦う
Echoesの最大の特徴は、主人公が「アルム」と「セリカ」の2人いて、それぞれの軍を率いて戦うところだろう。

単に分かれてそれぞれのストーリーを進めるというよりも、片方の進捗がもう一方に影響を及ぼすことがある。できるだけバランス良く進めていくといいだろう。
また、村人からのお願いなど、さまざまなサブクエストが発生するが、中にはアルム軍で受けた依頼の品をセリカ軍で入手するということもある。二つの軍を行き来している行商人経由でアイテムを受け渡さなければクリアできない。

それぞれの軍のキャラクターは、基本的にはもう一方へと移籍はできない。
その他、Echesならではの部分
全体的には、外伝に比べて大幅に遊びやすくなっている。一番大きいのはストーリーだろう。
実は外伝では、作中ではほとんどストーリーが語られることがなかった。取扱説明書にストーリーや、キャラクターの設定などが書かれていたのだ。現在では取扱説明書を読まないで遊ぶ人も多いため、作中で全て語られるように変更されている。
新要素「ミラの歯車」も面白い。戦闘中に用いると、1手ずつターンを巻き戻すことができる。
ちなみに、レベルアップ時の能力値の成長が悪かったら、ミラの歯車を使って今は成長させずに次の戦闘でレベルアップするようにする(乱数が変化する)ということも可能だ。
全体マップでミラの歯車を使うと、サイドストーリーである「記憶の欠片」や「支援会話回想」を読むことができる他、amiiboを使うことができる。

Echoesに対応しているアルムやセリカのamiiboを使うと、アルムのamiiboでは「戦神の試練」、セリカのamiiboでは「女神の試練」ダンジョンへと挑戦可能だ。少しややこしいのだが、これはアルム軍だったら必ず戦神の試練しか挑戦できないということではない。アルム軍でも女神の試練に挑戦できるし、セリカ軍でも戦神の試練へ挑戦できる。ただし、クリア時にもらえるアイテムは両軍合わせて1回きりなので注意しよう。
その他にも、アルムやセリカのamiiboでは現時点の強さを登録できる。登録したamiiboを使えば、戦闘中に戦技「amiibo召喚」で、1ターンだけ援軍として呼び出すことが可能だ。自分の分身を増やしてここぞというときに使っていいし、自分より強い友人のアルムなどを登録させてもらって、絶体絶命の危機を救う援軍にしてもいい。
ちなみにamiibo召喚では、その他にもファイアーエムブレムシリーズのamiibo(マルス、アイク、ルフレ、ルキナ等)ではそれぞれのクラスに対応した「英雄の幻霊」が助っ人として登場する。

ちょっとだけ面倒だなと感じたのは、ダンジョンマップ。3Dでキャラクターを動かし、障害物を壊したりしてアイテムを回収しながら進めるのだが、連続で戦闘していくと疲労が溜まり、能力が落ちてしまう。食べ物を食べれば回復するのだが、食べ物を売っている店が見当たらないため、なんとなく貧乏性を発揮してしまい、食べていいのか悩むことがあった。ちなみにミラの神像に食べ物を捧げると全キャラクターの疲労が回復する上にミラの歯車の回数も戻るので、個別に食べるよりも捧げた方が効率が良い。捧げるときは、他に使い道がほとんどないお酒を使うといいだろう。
個人的に一番うれしかったのは、字幕のオン/オフ機能がついたことだ。電車で移動中などに3DSを遊んでいる際、ヘッドホンをつけずに音を消していることが多い。そのときにアニメーションシーンが入ると、何を喋っているのかわからない。アニメーションシーンの台詞でストーリー上の重大な秘密が明かされることもあったため、話がわからなくなることがあった。それが、字幕をつけられるようになったため、文字通りどこで遊んでもストレスを感じなくて済むようになったのだ。もっとも、シリーズ初のフルボイス対応で、全ての台詞に声がついているため、今のところはなるべくヘッドホンも持ち歩いて遊ぶようにしている。
Echoesは、外伝の要素を残しつつ、現代風に改めるべき所はきちんと改めている、しっかりとしたリメイクと感じた。
(杉村 啓)