日本で繰り返された“動物ブーム”
そのため、「珍しい動物」に大衆が群がるのは、至極当然なこと。過去を振り返ると、いつの時代も私たちは、日常に違和感をもたらす不思議な生き物たちに熱狂してきました。
1972年には、ジャイアントパンダの「ランラン」「カンカン」を一目見ようと上野動物園に5万6000人が押し寄せ、1976年には、直立二足歩行チンパンジー「オリバー君」の花嫁募集に100人以上の女性が応募。そして2002年には、多摩川に現れたオスのアゴヒゲアザラシ「タマちゃん」が、一大旋風を巻き起こしたものです。
かような動物による社会現象の中でも、近年の出来事として思い出されるのは、2005年の直立レッサーパンダ「風太くん」フィーバーでしょう。
人間でいうと80歳超えのおじいちゃんとなった風太くん
千葉県千葉市若葉区にある、千葉市動物公園。風太くんは、今も昔もここで暮らしています。現在の年齢は13歳。人間でいうと、もう80歳超えのおじいちゃんで、子供は8匹、孫、ひ孫も多数いるといいます。
高齢のため昔よりも頻度は減り、多少ぎこちなさはあるものの、今もまだなんとか二本足で屹立できるようです。
思い出されるのは、12年前。全盛期の風太くんの立ち姿といえば、それはもう、見事なものでした。
はじめはローカルな出来事として、地方紙で報じられていたに過ぎなかったのですが、その情報を聞きつけた全国紙や情報番組に取り上げられたのがきっかけとなり話題沸騰。以降、マスコミが大挙して動物園へと押し寄せました。
JTのCMに起用! 模倣したグッズも多数発売された
そもそも、レッサーパンダとは元来、後脚と尾でバランスをとるのが得意な生き物であり、屹立すること自体は珍しくないのだとか。
ただ風太くんは、その立ち姿があまりにも綺麗で愛くるしく、かつ、30秒程度という比較的長時間体勢を維持できたために、注目が集まったようです。
かくして、一大ブームとなった風太くん。JTのCMに起用されたり、ぬいぐるみやフィギュアといったグッズが多数販売されたり、『ガキ使』で大沼ディレクター(当時)が着ぐるみを来てマネをするなど、さまざまなバラエティ番組でパロディ化されたりもしました。
二足歩行するレッサーパンダまで登場
さらには二匹目のどじょうとばかりに、二足で立つだけではなく、歩行すら可能なよこはま動物園ズーラシアの「デール」や、佐世保市亜熱帯動植物園の「海」などのレッサーパンダが登場。
「無理やり芸を仕込んでいるのではないか」といった無為な批判にさらされながらも、しばらくは、そういった風太くん関連のニュースが世間を賑わせたものです。
そんな嵐のような社会現象が過ぎ去り、今では穏やかな余生を送っている風太くん。彼のような、大きなインパクトをもたらす動物がまたいつか現れて欲しいものです。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonよりレッサーパンダ 風太くんのすべて