近所の某大型古本屋チェーン店へ行くと、よくそんな貼り紙とともにワゴンで大量の中古DVDが売られている。いわばニッポンのありふれた日常の風景。
でも、いったいああいうの誰が買うのだろうか? 動画配信サイトで月額1000円ほど払えば、いくらでも映画見放題のこの時代に、あえての中古DVD。パッケージも変色したり傷んでいる。
いったいなぜ? 考えれば考えるほど謎が深まり、最終的に実際に買って確かめることにした。
1枚500円のワゴンセールDVD映画は面白い?
今回のキネマ懺悔は「1枚500円のワゴンセールDVD映画は果たして面白いのか?」を検証してみよう。
ここで自分ルールをひとつ作る。事前に作品レビューをスマホで検索しないことだ。
最近はなんでもググる癖がついてる。確かに便利だけど、いわば失敗にビビっている状態とも言える。「ピッチャービビってる!」って子どもの頃は野次ってたけど、いまや俺が一番ビビってる日々。分かったよ。あえて調べない。ノーSNSの世界でこのDVDの山と向き合おうと思う。
3つ並ぶカート内から無作為にDVDをチョイス。
えっと、1枚目は『キャラ弁教室』って、もはや映画ですらない。ハイやり直し。続いて『M-1グランプリ2002』。どうやらこの手の10数年前のお笑い系DVDはかなりの数が置かれている。動画配信がほとんど普及していない頃、なんでもかんでもDVDにしていた時代があった。いやこの連載は一応90年代映画コラムだからね。
続いて引いたのが『日本の山8』と『メトロポリタン美術館10』。しかも未開封。ゴメン、死ぬほどいらない……。
で、5枚目に引いたのが『リプレイスメント・キラー』である。
香港のスーパースター、ハリウッド進出第1弾作品
98年公開でパッケージには「映画史上、最も美しい銃撃戦!」の煽り文。主演は香港のスーパースター、チョウ・ユンファ。
まあ細かいことは気にしない。なにせヒロイン役には、『誘惑のアフロディーテ』でアカデミー助演女優賞を獲得した美女ミラ・ソルヴィノである。ハリウッド資本の「香港ノワール」だ。
このDVDが500円? もしかしたら、とんでもない掘り出し物を引き当てたのかもしれない。期待に胸躍らせながら、家に帰りプレーヤーにディスクを入れた。
『リプレイスメント・キラー』のストーリー
ストーリーはシンプルだ。麻薬取引現場で麻薬課刑事スタン・ジーコフ(マイケル・ルーカー)は激しい銃撃戦の果てに、抵抗する若いチンピラを撃ち殺してしまう。
射殺された若者の父親は、チャイニーズ・マフィアの首領ミスター・ウェイ(ケネス・ツァン)だった。報復のために派遣された殺し屋は、母国に残した家族を人質に取られているジョン・リー(チョウ・ユンファ)。
しかし、ジーコフと息子が幸せそうに遊ぶ姿にどうしてもライフルの引き金が引けない。
そんな心優しき殺し屋リーは、組織の命令に歯向かい中国にいる家族を守ろうとパスポート偽造屋の美女メグ・コバーン(ミラ・ソルヴィノ)の元を訪ねる。
だが、ウェイ軍団がその場を襲撃し、激しい銃撃戦になるのだった。果たして、リーとメグの運命はいかに……。
見所はガンアクション!
まあ「いかに…」って結末は誰にでも読めるけど、やはり香港ノワールの見所と言えば、ガンアクションだ。お馴染みの2丁拳銃アクションにスーツケースの仕込み銃まで。とにかく撃って撃って撃ちまくる驚愕の銃弾連射546発が炸裂。マジ快感……。
ぽっちゃり体型のチョウ・ユンファが劇団ひとりに見えて仕方がないという問題点はあるが、個人的にこの勢いは嫌いじゃない。5歳児でも分かるシンプルなストーリーを1時間28分でサクッと観れる佳作だ。
一言で言えば「感動もしないが、退屈もしない」。この感じ、まさにC級映画の王道。
昔なら、こういう映画は忘れた頃に深夜テレビか昼下がりのテレビ東京で放送されていたのだろうが、今は1枚500円のDVDワゴンセールで売られちゃうリアル。例え、動画配信サイトにあってもスルーしていたと思う。
ちなみに、念のためググってみると本作は見事にHuluで配信されていた。やっぱり買う前にはスマホで調べた方がいいと思います。
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『リプレイスメント・キラー』
映画公開日:1998年10月31日
監督:アントワ・フークア 出演:チョウ・ユンファ、ミラ・ソルヴィノ、マイケル・ルーカー
キネマ懺悔ポイント:14点(100点満点)
もったいないのは当時全盛期バリバリのミラ・ソルヴィノの起用法。まさに感動もしないが、退屈もしない微妙なテンションで「お色気シーンもなければ中途半端に強いヒロイン」を淡々と演じている。ある意味、プロの女優だ。
(死亡遊戯)
※イメージ画像はamazonよりリプレイスメント・キラー ブルーレイディスク [レンタル落ち]