「人生に影響を与えたテレビ番組」を約20人に聞いてわかったこと

今やインターネット上にコンテンツは豊富にあり、映像を見るという機能面ではYouTubeはもはやテレビとほぼ変わらない。サイバーエージェントが出資するインターネットテレビのAbemaTVが5月7日に放映した「亀田興毅に勝ったら1000万円」という企画番組は、視聴者数のべ1300万超という驚異的な数字を叩き出した。


と、そんな感じで何かとインターネットの勢いに圧されているとも言われる昨今のテレビ業界ですが、ここで10代から60代までの方々に「人生に影響を与えたテレビ番組」というテーマでアンケートを取ってみました!想像以上に見えてくるみなさんの人生観。そして、分かったことは、みんなテレビを観ながら大人になったという事実でした。


猿岩石やパンヤオに憧れて貧乏一人旅へ


テレビ番組:電波少年シリーズ(1992~2003年・日本テレビ)
番組内容 :アポなしロケ、ヒッチハイクの旅、懸賞生活など、無名の若手芸人による実験的な体当たり企画が特徴の番組。テロップの見せ方やハンディカメラの映像を主体に進行する手法は後のバラエティ番組に多大な影響を与えた。

受けた影響:出ていた芸人さんたちが輝いて見えて、当時はどうしたら自分も出られるかずっと考えていました。猿岩石さんやパンヤオさんに憧れ、少しでも近づきたくて、今でも貧乏一人旅をときどきしています。(女性・29歳)


それまでのフォーマットを打ち壊した一発芸の魅力


テレビ番組:突然ガバチョ!(1982~1985年・MBS)
番組内容 :笑福亭鶴瓶がパーソナリティの観客参加型のバラエティ番組。「テレビにらめっこ」や「つるべタクシー」などのコーナーが人気となった。


受けた影響:突然ガバチョといえば、なんといってもテレビにらめっこ(視聴者からのハガキを鶴瓶が読み上げ、観客も出演者も鶴瓶自身でさえも笑ったらスタジオから退場させられるというコーナー)。その当時、ユーザー参加型&パーソナリティ主導型のコント的な企画が主流だったバラエティ番組の中で、「一発芸」という世界を教えてくれました。(男性・50歳)


海外に出るきっかけになった番組


テレビ番組:世界がもし100人の村だったら(2003~2009年・フジテレビ)
番組内容 :世界各地で過酷な状況に生きる子どもたちを取り上げる番組。ときには、著名人が現地へ行って取材する。2003年から2009年まで毎年一回ずつ放送された。

受けた影響:メディアを通してではなく、自らの目で確かめることや、コミュニティや、また現状を世界に知らせる重要性について学びました。人種や文化による価値観の違いを知るきっかけになった、自分のターニングポイントであり、海外で働くきっかけにもなっています。
(男性・27歳)


カッコイイ大人とはこういうものだ


テレビ番組:俺たちは天使だ(1979年・日本テレビ)
番組内容 :沖雅也主演のドラマ。金に縁のない麻生探偵事務所の5人が、さまざまな依頼を通して一攫千金を目論見というアクション・コメディ・ドラマ。

受けた影響:ホントにカッコイイ大人というのを軽快に映像化したコメディータッチの探偵物です。真剣にバカをやる大人のカッコよさをドラマから教わった気がします。(男性・42歳)


怯むことなく行きなさい、冒険は楽しい。


テレビ番組:ひょっこりひょうたん島(1964~1969・NHK)
番組内容 :海を漂うひょうたん島を舞台に、個性豊かなキャラクターたちがミュージカル形式で数々の笑いと風刺、冒険の物語を繰り広げる人形劇。

受けた影響:冒険というものについて、「怯むことなく行きなさい、楽しいよ」ということを教えてくれた。
テーマソングに唄われている内容は、僕にとってかなり現実的な未来図だったね。(男性・65歳)


日本の職人たちから生き様を学ぶ


テレビ番組:ワザあり!にっぽん(1993~1996年・中京テレビ)
番組内容 :日本各地のさまざまな分野の職人たちを取り上げる、ヒューマンドキュメンタリー番組。

受けた影響:毎週観てて、挫折したけど、クリエイターを目指すきっかけになった。(男性・35歳)


お笑いとは真剣勝負だ


テレビ番組:M-1グランプリ(2001~2010年、2015年~・朝日放送)
番組内容 :島田紳助の企画・プロデュースによる、結成15年以下のコンビを対象とした漫才コンクール。優勝コンビには1000万円の賞金が贈られる。この番組(コンクール)をきっかけに全国で知られるようになった芸人も多い。

受けた影響:お笑いが真剣勝負ってことを島田紳助が見せてくれたので!登場前の紹介VTRや、ライバルに「スベってくれ」と控え室で祈る麒麟、ワイプで映る松本人志が本気で笑ってる顔など、何もかもがとてもリアルで、それをきかっけに漫才の分析や若手のライブに走りました。2006年のM-1でPOISON GIRL BANDが緊張のあまり空ゲロを連発している光景など、印象深いです。
(男性・23歳)


「おもしろい」の価値観を変えられてしまった


テレビ番組:モグラネグラ(1993年・テレビ東京)
番組内容 :曜日ごとに異なるミュージシャンがホストを務めた深夜番組。金曜日は電気グルーヴの担当であり、「亀甲縛りトーク」などの珍企画が数多く放送された。

受けた影響:(金曜日の)モグラネグラにはおもしろいということに対する価値観を変えられてしまいました。お笑いのプロじゃないからこその、メチャクチャな感じが衝撃でした。(男性・43歳)


関西が吉本なら関東はとんねるずだ


テレビ番組:とんねるずのみなさんのおかげです。(1989~1994年・フジテレビ)
番組内容 :とんねるずと多彩なゲスト陣によるコント中心のバラエティ番組。「ねるとん紅鯨団」「とんねるずの生でダラダラいかせて」と並ぶ、とんねるずを代表する番組。1997年からは「~おかげでした」と名前を変えて現在も放送が続いている。


受けた影響:関東では、関西での吉本新喜劇並にみんなが見ていたと思う。田村正和のモノマネとか保毛尾田保毛男とか、先生役が「ヘイユー!」と叫んで生徒の頭をスリッパでパーン!と叩く流れが、気持ち良かったし、すごく笑った記憶がある。ノリダーがジャンプして、カメラが上にスクロールするけど、まだいて、キックされる!みたいな展開もおもしろかったなぁ。(男性・35歳)


憧れた結果、時を経て自分もエジプトへ発掘に


テレビ番組:NHKシリーズ「発掘・ピラミッドの下の貴族墓」(1998年・NHK)
番組内容 :吉村作治氏率いる早稲田大学古代エジプト調査隊とその発掘現場を舞台にした、4夜連続で放送されたNHKのドキュメンタリー番組。

受けた影響:考古学者になりたいという夢を抱いていた、高校生の頃に見た番組。発掘調査で活かされた最新テクノロジーと古代文明の奇跡の邂逅に感銘を受けた。大学では吉村作治先生が所長を務める研究所に入り、三年生の夏には念願叶って古代エジプト調査隊に参加し、現地での発掘調査も行った。
ちなみにそんな先生が、古代エジプト自体の船を復元するという人生を懸けたプロジェクトを実施中なのでチェックしてみてください。(男性・36歳)


音楽漬けからのデザイナー志向に


テレビ番組:MTV JAPAN ※番組ではなくケーブルチャンネル
番組内容 :ニューヨークとロンドンに本部を置くアメリカの若者向けのMTVの日本版。おもに洋楽を中心的に紹介していた。

受けた影響:音楽の好みに影響を受けたのですが、それとは別に新旧のミュージックビデオを見たり、MTVのジングルなどの映像がすごく好きになり、それがきっかけとなって現在はデザイナーをしています。お母さんに心配されるくらい、病的に見続けてたらしいです。(女性・30歳)


大切なことはすべてドラえもんから教わった


テレビ番組:ドラえもん・第2作(1979~2005年・テレビ朝日)
番組内容 :説明不要の国民的アニメ、1973年~、1979~2005年、2005年~の三期に別れる。

受けた影響:創造性、友情、正義の良し悪しを育むのに役立った。長編ばかり見ていたので、ジャイアンもいい人。(女性・32歳)


アメリカのホームドラマから世界の広さを知った


テレビ番組:フルハウス(1993~1997年・NHK)
番組内容 :アメリカで製作されたテレビドラマ、本国では1987年から1995年にかけて放送されている。妻を事故で亡くした男が、男友達に助けられながら子育てをしていく話。

受けた影響:小学生の頃、このアメリカンシットコム(シチュエーション・コメディ)を見るたびに、日本と全然違う日常を目の当たりにして、世界の広さや文化の違いの魅力にハマって海外で暮らしてみたいと思うようになった。実際にオーストラリアと台湾それぞれで暮らすことに。そもそもはアメリカに行きたかったけど…「海外」だから、いいか。(女性・33歳)


インディージョーンズ好きにはたまらない


テレビ番組:世界ふしぎ発見!(1986年~・TBS)
番組内容 :世界各地の歴史、風土、文化などの不思議、謎、ミステリーについて、現地取材のレポートをスタジオで司会者と解答者がクイズやトーク形式で紹介する番組。1986年から今まで30年以上と続く長寿番組。

受けた影響:もともとインディージョーンズが好きということもあって観ていた。ミステリーと考古学と世界文化に毎週触れられる数少ない機会でもあったが、お陰で今でも音楽などのアートに触れるとき、その歴史や背景を考えるようになった。(男性・34歳)


深夜のお笑い番組にハマって劇場へ通うことに


テレビ番組:ゴッドタン(2005年~・テレビ東京)
番組内容 :おはぎやはぎと劇団ひとりがレギュラー、バナナマンが準レギュラーの、バラエティ番組。「マジ歌選手権」「キス我慢選手権」などが人気の企画で、アイデア勝負の斬新な企画が多いことから、テレビ業界内での視聴率が最も高い番組と言われている。

受けた影響:深夜番組らしく視聴者と演者の距離が近く見えて、本人たちが楽しんでおもしろいことをやっている「テレ東らしさ」に惹かれて、それからいろんなお笑いを追いはじめました!(TBSラジオの芸人がパーソナリティを務める番組カテゴリーの)ジャンクのラジオを聴きはじめ、そこから彼ら自身のコントを知り、気に入ったら劇場まで行って観たりなど、お笑いにハマるきっかけとなった番組です。(男性・22歳)


ハッピーエンドばかりがすべてじゃない


テレビ番組:世にも奇妙な物語(1990年~・フジテレビ)

番組内容 :タモリがストーリテラーを務めるオムニバスドラマ。回ごとに主人公が奇妙な世界にいざなわれ迷い込む。1990年から1992年まで三期に分けて放映され、その後は特番として定期的に放送されている。
受けた影響:想像力の広がりや、ハッピーエンドではないというおもしろさを知った。(男性・35歳)


自分を形作る音楽のベースになった


テレビ番組:Glee(2010~2011年・NHK)
番組内容 :アメリカ・オハイオ州の高校の合唱部を舞台に描かれた、ミュージック・コメディ・ドラマ。毎回、プロのダンサーやミュージシャンなど実力派の出演者が名曲をカバーしたパフォーマンスを見せる点が見どころのひとつ。

受けた影響:アメリカの高校生がどんな暮らしを送っているのかということと、ミュージカルに興味を持つきっかけになった。毎回いろんな楽曲が出て来るので、自分が聴く楽曲の幅も広がったように思う。今でも弾き語りをするときの曲がもともとGleeで知ったものだったりするので、かなり影響を受けている。(女性・19歳)


演出らしかぬ、人間性をさらけ出す見せ方が好き


テレビ番組:水曜どうでしょう(1996~2002年・北海道テレビ放送)

番組内容 :大泉洋、鈴井貴之、藤村ディレクターと嬉野ディレクターの四人がやりとりしながら過酷な旅を続けるドキュメンタリー・コメディ。「低予算」「低姿勢」「低カロリー」の3低をモットーにしている。
ロケ中にひたすらカメラを回してるからこそ出てくる、映る人の関係性をそのままさらけ出しているところがすごくおもしろい。あと、説明的でツッコミ的なテロップがたまらなく好きです!ものづくりや自己表現をする際に、影響を受けています。(男性・34歳)


と、こんな感じでした!
ご覧の通り、多くの方に聞いたつもりだったのですが、番組タイトルがほぼ被らなかったことに驚きです。聞いてみると、みなさんいずれも思い入れのある番組があり、テレビを観ながら大人になったんだなーとしみじみ感じました。今はインターネットで娯楽コンテンツがたくさん溢れており、趣味趣向も多様化していく傾向は避けられないものだとは思うのですが、現場で活躍している業界人のみなさんには、このように大人になっても語られ続けるテレビ番組を生み出してほしいなぁとひとりの視聴者として切に願います。

ちなみに私は、お笑いのツボに関しては「吉本超合金」「ワールドダウンタウン」「働くおっさん劇場」から影響を受け、現在のライターとしての仕事にもつながるものとして、「ウンナンのホントコ!」(の毎週CMをつくるコーナー企画)から影響を受けています。

(ネルソン水嶋)