自身の歌唱風景を収めた映像がたまたま敏腕スカウトの目に留まり、瞬く間に世界的スーパースターの座へと駆け上がったというエピソードは、あまりにも出来過ぎたシンデレラストーリーではないでしょうか。
ジャスティンほどの成功は空前にして絶後だとしても、このように素人の歌がひょんなことからメディア関係者に引き上げられて、話題になるのは昔からよくあること。
本稿で紹介する"幸ちゃん"も、そんな幸運に恵まれたアマチュアシンガーの一人。
普段はなんの変哲もない地元JAに務める43歳のサラリーマン。しかしひとたびマイクを握ると、個性派シンガー「養老の星☆幸ちゃん」へと変身……。そんな彼のオンステージがテレビで初公開されたのは、今から約11年半前のことでした。
見た目は普通のおじさん、でも歌い出すと……
2006年1月8日。この日、岐阜県大垣市で開催された『NHKのど自慢』に、岐阜県養老町在住の幸ちゃんは18番目の歌い手として登場。
シャ乱Qの名曲『いいわけ』を選曲後、例の「デデッデデデーン!」というイントロと共に、顔つきが豹変。出だしのワンフレーズ目をシャウトした瞬間から、そのあまりにもクセが強すぎる歌唱法に、視聴者は度肝を抜かれたのです。
「淋しい夜は ごめんだ」⇒「スゥミスィユルワッ グミンナアッァィ!」、「淋しい夜は つまんない」⇒「スゥミスィユルワッ ツマンナアッァィ!」
いったい、どうしてこんな歌い方になってしまうのか……。誰にも理解できません。
けれども、原曲をあまりにも無視したスタッカートの多用と独創的過ぎる発音法によるその熱唱に、上手い・下手を超えた得体の知れないパワーを感じた人は多かったようです。
『めちゃイケ!』出演、つんくの前で生歌披露
事実、鐘は2つで終ったものの、放送終了直後から一部ネットユーザーの間で「あのおじさんは何者なんだ?」と話題沸騰。
その評判はすぐに大手メディアの知るところとなり、『探偵!ナイトスクープ』『めちゃ×2イケてるッ!』などへの出演を果たします。
さらには、全国各地で行われるライブやイベントへのオファーも殺到。GLAYの『HOWEVER』、T-BOLANの『離したくはない』など、『いいわけ』以外の十八番も歌い、会場の拍手喝采をさらっていたようです。
このように、わずか数ヶ月の間で、ただのカラオケ好きのおじさんが売れっ子歌手さながらの待遇を受けるようになっただけでも、相当な立身出世ではありませんか。
レコ直演歌・歌謡曲部門ダウンロードチャートで1位を獲得!
しかし、シンデレラストーリーはこれだけでは終わりません。2008年11月10日には、着うた『いいわけ 養老の星☆幸ちゃんVer.』で、本当に歌手デビューを成し遂げます。
しかも、レコ直演歌・歌謡曲部門の着うたダウンロードチャートで1位を獲得という快挙も達成。
なお、DAMなどの一部カラオケ機種には、この幸ちゃんバージョンの『いいわけ』が収録されているのだとか。だいぶ前の流行歌、しかもネタ系の歌なので、今歌うとしたらかなり勇気がいること間違いありません。
その後、同年12月にシャ乱Q・20周年ベストアルバムの応援隊長としてPR活動に携わったのを最後に、メディアの前には姿を現していない幸ちゃん。
芸能界での思い出づくりも一通り終えたであろう現在は、本職の会社員のほうに力を注ぎ、仕事終わりのカラオケで熱唱していることでしょう。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonよりいいわけ