二枚目サラブレッド・田村正和
田村の父親は、歌舞伎俳優・映画俳優だった阪東妻三郎。端正な顔立ちと高い演技力を備えた昭和の映像メディア界のトップスターで、「阪妻(バンツマ)」の愛称で親しまれていた。
阪東妻三郎には4人の息子がおり、そのうち3人が俳優の道に進んでいる。(長男・田村高廣(故人)、三男・正和、四男・田村亮)。
演技力確かなトップスターを父に持ち、兄・弟も芸能界に確固とした地位を築くなど、まさに芸能一家といえる。
コミカルな役も多かった
田村の近年の代表作として有名なドラマは意外にもコメディ系が多い。
初のコメディ作品となったのは、1984年放送の『うちの子にかぎって…』(TBS系列)。自由奔放な小学生の子どもたちが起こす騒動に翻弄される、担任の先生役を演じた。
1987年に放送『パパはニュースキャスター』(TBS系列)では、酒を飲むと記憶が飛んでしまうという設定のニュースキャスターをコミカルに演じている。独身主義ながら、過去に関係があったと思われる女性たちとの間に出来た3人の娘が現れて、彼女たちの父親になってしまうという内容だった。
90年代に入ってもTBS系列で放送された『カミさんの悪口』(1993年)で中年サラリーマンの夫役をコミカルに熱演。
ストーリーは、田村、橋爪功、角野卓造演じる大学時代からの同級生で中年男の三人組が、夫婦の間で生じる本音と建前を言い合う男の井戸端会議と、これに対抗する女房たちとのやりとりが軸になっている。
この“あるある”感満載のエピソードやセリフの掛け合いが視聴者の共感を呼び、ドラマは平均視聴率19.9%、最高視聴率23.7%を記録した。
田村正和の代表作『古畑任三郎』シリーズ
その後、翌1994年にスタートした『警部補・古畑任三郎』(のちに『古畑任三郎』に改題)は、長きにわたってシリーズ化され、田村の代表作として挙げられるほどの人気を誇った。
人気脚本家・三谷幸喜による作品で、刑事コロンボを彷彿とさせる一見おとぼけチックな役どころが愛された。
ちょっと間抜けな部下に小気味よくツッコミを入れながら、するどい観察眼と推理力で見事に事件を解決に導く天才刑事を2008年のファイナルシリーズまで演じている。
俳優一家に生まれた正統派でありながら、コミカルな役も鮮やかに演じる技量の高さが、長く活躍できた秘訣なのかもしれない。
(せんじゅかける)
※文中の画像はamazonより警部補 古畑任三郎 サウンドトラック Vol.2