00年代のワイドショーの主役と言うと、真っ先に浮かぶのは和泉元彌ではないだろうか?
足掛け7年ほども世間を騒がせ続けた芸能界屈指のトラブルメーカーである。

世間的には無名だった狂言師・和泉元彌の名が一気に広まったのは、2000年2月のこと。
翌年のNHK大河ドラマ『北条時宗』の主演として発表されたことがきっかけである。時宗の候補に中井貴一、木村拓哉、竹野内豊といった一流どころの名が上がる中での大抜擢だった。

これに伴い、この年の紅白歌合戦の司会も務めることに。まさに一足飛びで芸能界のトップに立とうとした矢先、数々の騒動が明るみになって行くのだった……。

勝手に独立して宗家を主張! 気付けば周りは敵だらけ?


まずは02年に「お家騒動」が大々的に噴出する。
きっかけは過去にあった。95年の父の死に伴い「和泉流二十世宗家」を名乗っていた元彌だったが、これがマズかった。
要は、必要な手続きや了解を得ずに勝手に継承してしまっていたのである。

しかも、「和泉流二十世宗家 和泉元彌」を商標登録出願するなど、あくまで自分たちが正しいと主張。それどころか、能楽宗家会、和泉流職分会、能楽宗家会など、伝統と格式を重んじる相手に批判を繰り返して行ったのだ。

和泉元彌の母親「セッチー」がさらなる炎上を招く!?


騒動はワイドショーで連日やり玉に挙がったが、この時に濃すぎるキャラクターで表舞台に出てきたのが、「セッチー」のあだ名でお馴染みの元彌の実母の節子さん。
相次ぐドタキャンやダブルブッキング騒動で集中砲火を浴びる息子を必死に擁護するのだが、そもそもがマネージャーであるセッチーに原因があったりで、口を開けば騒ぎは拡大するばかり。

ヘリコプターで移動することで無理矢理ダブルブッキングを消化してしまうやり方など、強引なマネジメントは公私に渡って繰り広げられていた印象だ。
元彌は、この年の2月に女優・羽野晶紀と結婚しているが、形として「できちゃった結婚」になったのもこのセッチーが大反対したためである。


強気な口調、傍若無人ともいえる振る舞いで、次々とガソリンを投下して行くセッチー。まったく動じない強心臓ぶりで、息子以上にワイドショーを賑わすのであった。

対戦相手の体重は元彌の倍!? まさかのプロレス参戦へ!


戦場をワイドショーからリングに移したのは05年秋のこと。
プロレスを「ファイティング・オペラ」と位置付けた新スタイルの興行『ハッスル』に参戦したのである。

過激な「M字開脚」で人気を集めたグラビアアイドルのインリンがエース格を務めるなど、エンターテインメント性の高さが売りであり、当時大ブレイク中のお笑い芸人レイザーラモンHGとともに和泉元彌の参戦は大きな目玉に。
ワイドショーが連日連夜取り上げるのはもちろん、写真週刊誌も一斉に特集を組んで決戦の舞台を盛り上げて行く。

170cm、63kgの元彌に対して、対戦相手の鈴木健想(現KENSO)は193cm、120kgの大型レスラー。
フィジカル面ではどうあがいても太刀打ちできないどころか、そもそも試合が成立するのかも世間の関心を集めることになった。
もっとも、健想は世界最大のプロレス団体『WWE』を経て、「ホウキが相手でも試合ができることを学んだ」と語るほどに、エンターテインメントの極意を掴んだ真のプロレスラーであるのだが。

今までの騒動を精算した圧倒的晴れ舞台


決戦の舞台は横浜アリーナ。1万4千人もの大観衆が見守る中、まずはマネージャーとしてセッチーが入場し、「宗家は遅刻もダブルブッキングも致しません!」と渾身のマイクパフォーマンス。それを受け、ヘリコプターの爆音が鳴り響く中、ド派手な衣装を身にまとった元彌が天井に突然登場した。そして、狂言流の口上を続ける。

「和泉元彌でござる。
遅刻もダブルブッキングもござらぬ。開場前から、ずっと上で待っていたのでござる!」


ワイドショーで散々責められた騒動を逆手に取ってのパフォーマンスに、館内バカ受けだ。ただ、勢い余って後半はイリュージョンのネタバレになってしまっているが。
20mもの高さから縄ばしごに掴まり花道に降りた元彌は、狂言の謡いで花道を練り歩いて堂々の入場。つかみはOK、観客を一気に味方に付けたこの時点で勝負ありだ。

相手の肩に飛び乗ってのチョップの連打、伝説の「空中元彌チョップ」で勝利とともに観客の支持をゲット。
翌日のスポーツ紙やワイドショーがトップで扱い、これまでの騒動の数々を精算するほどのインパクトを残した。

元彌本人も試合後に起こった大・元彌コールに「いま生きている中で僕は一番幸せ者だ」と熱く実感。芸の幅を広げた上で、狂言の道に邁進すると思われたが……。

相次ぐトラブル! ワイドショーに燃料を投下し続ける和泉元彌


同じく2005年11月、2年半の間に計6回もの駐車違反をしておきながら、出頭に応じなかったとして和泉元彌は逮捕されてしまう。
今までも常識知らずな部分やルーズさがバッシングの対象ではあったが、今回の事件はそれを完全に裏付けてしまう内容であり、再び世間から集中砲火を浴びることに。

翌2006年には所得隠し疑惑が報じられ、自宅兼事務所が国税局から差し押さえを受ける事態に。
さらに、バイクの高校生と接触事故を起こし書類送検にもなっている。
2007年にはマンション、アパート、駐車場、イベント会場費などが未納として報道され、2008年には信号無視で反則切符を切られてしまうのだから、悪い意味でアグレッシブすぎだ。

また、和泉元彌がワイドショーを賑わすことはあるのだろうか?
いつの間にかフジテレビ系『ノンストップ!』やTBS系『ビビット』にセッチーが出演していることが前フリにならなければいいのだが……。

※イメージ画像はamazonよりジェーン