第10週「谷田部みね子ワン、入ります」第55回 6月5日(月)放送より。
脚本:岡田惠和 演出:黒崎博

55話はこんな話
再就職先のせっけん工場が、ひとりしか雇えない状態に陥ったと聞いて、みね子(有村架純)は迷わず、澄子(松本穂香)に譲る。
「お父さん…来ます」
サブタイトル「谷田部みね子ワン、入ります」。
それはともかく。
12月27日の夜、やってきたのはせっけん工場の社長(諏訪太朗)だった。
何か言いづらそうにしている社長を見て、いやな予感を覚えたみね子は、
「早く言って楽になってもらいたいと思いました」とモノローグ。
「お父さん…来ます」
「ふたりともダメだというより、むしろきついです」
辛い状況だが、モノローグはなんとなくユーモラス。
せっけん工場の取引先が減ってしまったため、雇えるのがひとりになってしまったわけを、オリンピックの後に不況になって、たくさんの会社が倒産してしまったと説明する、増田明美のナレーション。
こんなこと言っちゃっていいのか。
これからオリンピックだというのに。
現実の世界では、オリンピックやると日本が活気づくと謳ってるというのに。
昔を知ってる人は、また昔みたいなことになる危険性をうすうす感じているわけだけれど、そのへんをぼかして、全体的にはオリンピックに突き進んでいるけど、大丈夫? という気分になるけど、大丈夫なのか・・・。
取り急ぎ、大丈夫なのか・・・はみね子のほうで。
ひとつになってしまった就職の枠を、澄子に譲ってしまう。
それを知った愛子(和久井映見)は、
「じゃ、切り替えて」
「じゃ、切り替えて」
と秋田の大きなかりとうを出してくる。これは、優子(八木優希)からもらったものだろうか。
みね子「あんたが遠慮なんて気持ち悪いからやめろ」
澄子「その言葉を待ってました」
さすがの澄子も、就職先を譲ってもらった手前、能天気にしてはいられないと気を遣うが、みね子は、そんな気遣いもさせまいとする。ほんとうに人の心に敏い(自分の恋心とかには疎いのに)。
だが、ひとりになったみね子はがくりと肩を落とし、
「お父さん カラダに力は入りません」「この年の瀬に 私、失業者です」と絶望のモノローグを吐く。
年下で妹みたいな澄子のために、明るく頼りがいあるふうにふるまっていたが、内面ではじわじわとダメージを溜めている様子。
そうして、澄子がせっけん工場に向けて出発し、愛子とみね子のふたりになった。
「威勢のいいこと言ってたわりにウジウジしてんだね」と愛子に指摘されたみね子は、気晴らしにすずふり亭に出かける。
と、そこで「何だかすてきな男の子」(ナレーション)が現れ・・・視聴者(おもに女性)がちょっと浮いた気分となったところで(「あさイチ」では有働由美子が「ヒロインと何か発展しがちな顔」とコメント)、つづく。
さて、その“発展しがちな顔”した竹内涼真。仮面ライダー出身イケメン(14年の「仮面ライダードライブ」)で、最近だと菅田将暉主演の映画「帝一の國」(この映画、とても面白いです!)で、じつにできた男・大鷹弾役を、心底、できた男として演じきっていた。とにかくさわやかで、健康的で、礼儀正しく、頭も良さそうで、頼りがいのある感じが全身から出ていて、例えるなら、変態仮面をやらない鈴木亮平(ふたりは同じホリプロ)という感じ。
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