けど、濃すぎて喉にタンが絡んだり、逆に薄すぎて物足りなかったりと、イイ感じに希釈できないこともしばしば。
それだけに、『カルピスウォーター』が登場した時の衝撃たるや凄まじいものがあった。薄からず、濃からず、バランスがとにかく絶妙なのだ。冗談抜きで、今まで飲んで来たカルピスとは別次元のグレードだったことが思い出される。
販売目標の5倍以上のメガヒットを記録
80年代後半、自動販売機の設置数は拡大の一途。各社がこぞって新商品を投入し、自販機のドリンク市場はかつてないほどに活性化していた。
しかし、水で薄めて飲む必要があるカルピス(当時はカルピス食品工業)は自販機での販売が不可能。せっかくのチャンスを掴めずに売り上げが激減し、88年からは赤字に転落してしまう。
そんな中、91年2月に満を持して登場したのが、ストレートタイプで楽しめるカルピスウォーターだ。
キャッチコピーは「遅くなってごめん。」誰もが待ち焦がれた商品だっただけに、ヒットは必然だった。
当初の販売目標である400万ケースを6月末の時点でクリア。8月末には1,000万ケースに到達し、この年の夏のメガヒットを記録した。
清涼飲料水業界的には年間500万ケース売れたら大ヒットである。
水で薄めただけじゃない!? 技術の結晶が生んだカルピスウォーター
単に水で薄めるだけなら、もっと早く商品化できたのでは?
なんて、考えるのは浅はかな話。実は研究自体は82年頃からすでに始まっていたと言う。
72年にはすでに『カルピスソーダ』が登場しているが、炭酸飲料の場合は低温での殺菌が可能だからこそ。炭酸水を含まない上での商品化には、数段高い技術レベルが必要だったのだ。
ただ水で薄めただけでは、作ってから時間が経つと乳成分のタンパク質が沈殿し、原液と水が分離してしまう。そこで、まずは沈殿するのはタンパク質が水より重いからであることを突き止めた。そして、タンパク質の粒子を細かく、常に浮遊するように改良。沈殿・分離しにくい仕組みを作り上げたのだ。
もちろん、カルピスの味を堪能できるベストな濃さ、美味しい水を使うことにもこだわった。
甘さ控えめ&後味すっきりに仕上がったのは、濃厚よりもあっさり系の甘さにシフトしていた当時の味の嗜好が反映されたため。家庭の希釈では絶対にマネできない絶妙なバランスなのは当然なのである。
カルピスウォーターのCMは新人女優の登竜門
カルピスウォーターの今日まで続くヒットには、やはりCMの果たした役割が大きい。
初代は当時雑誌モデルだった西田尚美。その後、後藤久美子や内田有紀などがバトンを受け、近年では長澤まさみや能年玲奈などがインパクトを残している。
共通するのは甘酸っぱい青春の味のイメージと、美少女系新人女優が出演すること。そう、ポカリスエットと並び、スターへの登竜門的位置付けなのだ。
現在、CMキャラクターを務めているのは13代目の永野芽郁。今後が楽しみな逸材である。
ちなみに、カルピスの命である牛乳由来の「カルピス菌」。
今から100年ほど前に偶然発見されて以来、新しい牛乳にずっと同じ菌を継ぎ足しながら品質を保ち、現在も使用していると言う。しかも、今あるカルピス菌がなくなってしまうと、2度とカルピスが作れないとか!
何だか、鰻屋辺りの「秘伝のタレ」を思い起こしてしまうが、ありがたみを感じずにはいられない裏話だ。
スキマスイッチの『全力少年』が耳に残る、現在のカルピスウォーターのCM。ことカルピス菌に関しては「積み上げたものぶっ壊して」はいけないようである。
※イメージ画像はamazonよりカルピスウォーター 350ml×24本