台本を一読しただけで暗記できる? 記憶力日本チャンピオンに聞いてみた

よく、一流の役者などが「台本を一読しただけで暗記できる」という話を耳にすることがある。よく考えると、初めて読む文章を一読しただけで一言一句を暗記するなど超能力レベルだ。
そもそも人間はそのようなことができるのか、記憶力チャンピオンに聞いてみた。

一読しただけで一言一句完璧に覚えることは不可能


今回、答えてくれたのは2012年度記憶力日本選手権大会の優勝者で、日本代表として世界記憶力選手権にも出場している青木健さんだ。いわゆる、記憶の達人中の達人である。
そんな青木さんに、まずは台本を一読しただけで覚えることはできるのかを聞いてみた。

「一読しただけで台本の一言一句違わず完璧に覚えることは不可能です。これは記憶力の日本チャンピオンの私でも、世界チャンピオンの選手でも同様です。
しかし、台本を一読しただけで内容を覚えることは可能です。これはどういうことかというと、台本には必ず話の流れがあり、必ずポイントとなる単語や場面があります。そのポイントなる単語や場面をイメージしながら暗記することで、おおよその台本の内容は簡単に暗記することが可能です。
また一流の役者さんは日常からたくさんの台詞を覚えなくてはならず、そのような厳しい状況に慣れているため、新人の役者さんよりも経験豊富な一流の役者さんのほうが台詞を覚えるのは早い傾向にあります」

暗記はテクニックだった


台本を一読しただけで暗記できる? 記憶力日本チャンピオンに聞いてみた

もし台本を普通に暗記するとなると、何度も読み返したり、文章を区切って空で言ってみたりするのが一般的だ。しかし、その暗記のスピードや得意・不得意は人それぞれ。そもそも、暗記は才能なのだろうか?

「記憶力は、多くの方が『生まれつきの才能』と思っていますが、実は大きな間違いです。もちろん超一流の記憶力を競う世界記憶力選手権に各国代表で出場するような選手は、ある程度才能に恵まれている場合もありますが、台本を暗記することや、試験勉強や受験勉強で必要とされる程度の暗記には、才能は一切関係ありません。暗記はテクニックです。
そしてそのテクニックをどこまで努力で磨き上げることができるかどうかが重要です」

記憶力日本チャンピオンが教える台本暗記法


「例えば台本を覚える場合、普通は一言一句、台本とにらめっこする人が多いですが、台本に書いてあるポイントとなる単語を選び出し、ポイントとなる単語を場面に合わせて暗記するだけで非常に楽に覚えることが可能です。

ポイントとなる単語だけで架空のお話を作る『ストーリー法』という基本となるテクニックがあり、そのテクニックを用いると50個や100個くらいであれば簡単に暗記することができます」

もし台本のようなストーリーのあるものを暗記しないといけないといったときは、このストーリー法を使ってみよう。
(石原亜香利)


取材協力
青木 健(あおき たける)さん
1987年10月27日生まれ。記憶力日本チャンピオン。日本代表として世界記憶力選手権に3度出場。2017年からは日本初のメモリーアスリートチームであるBrain Sports Academyを設立。日本のメモリーアスリートのパイオニアとしてアジアを中心に活躍中。
●Brain Sports Academyのホームページ
http://www.brainsportsacademy.net/
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