いつもの枕で目が覚めると、いつもの見慣れた真っ白い天井。あれっ、今日はどこに出張に来たんだっけ?
そう、ここはセブ島! 出張じゃなくてバカンス! 室内はいつもの東横INNだったが、窓を開けるとそこは異国の景色。
できたばかりの「東横INNプノンペン」を訪れ、「Excite Bit コネタ」でレポートしたのは2年前のこと。東横INNファンの私は、異国で感じるいつもの光景が最高に面白く、以来、海外東横INNのことが俄然気になるように。
さっそく韓国の東横INNをコンプリート。そして今年4月28日、韓国・カンボジア・ドイツに続いてフィリピンにも「東横INNセブ」がオープンしたと聞き、ここぞとばかりにセブ行きの航空チケットを購入したのだった。
それにしてもリゾート地として知られるセブ島に、ビジネスホテルとして知られる東横INNとは。そこには一体どんな化学変化が起こっているのか……。気になるではないか。
室内は期待以上にいつも通り! 朝食はフィリピン料理もあり美味!
韓国発のLCCだったため、到着は夜1時。初めて訪れる国の深夜タクシーということで緊張したが、15分ほどですんなり到着した。
ビルの入り口でガードマンによる荷物チェックを受けるという違いはあるが、いつものガンダムっぽい制服を着たフィリピン人の女性に、いつもどおり会員証を見せてチェックイン。部屋に入ると内装はもちろん机の配置、バスルーム、細かな備品、本棚の『内観』(英語版)まで、期待以上にいつもの東横INNそのままであった。
椅子に座って手を伸ばせば、いつもの位置にコンセントもドライヤーもある、自分の巣に戻って来た感覚に思わずうっとり。
そして翌朝。東横INNの楽しみと言えば、どこも同じようで微妙に違う、そのホテルならではの朝食サービスも見逃せない。果たしてセブはどのように攻めてくるのか?
広めのビュッフェを覗くと、いつものおにぎりや味噌汁、ころっとしたソーセージやセルフで焼く食パンがある他、鶏肉のスープや豚とインゲンの炒め物など、初めて見るフィリピン料理も並んでおり、なかなか豪華だ。
食べてみるとかなり美味! フィリピン料理は日本人が好きな味付けだし、味噌汁もびっくりするほど日本の味で、思わずおかわりしてしまった。
気になるのは、食事をしている日本人は意外と少なく、現地の方ばかりだということ。一体どういうこと?
現地の人には「イン」と呼ばれていた
東横INNセブ支配人の深瀬さんにお話をうかがった。
セブ島という立地について、「コンセプトは日本と全く同じです。駅前旅館の鉄筋版で、支配人はおかみ。リゾート地だから違うということはありません」と深瀬さん。
なおホテルは日本人が経営するお店が多い「ASフォーチュナ通り」にあるショッピングセンターとして有名な「Jモール」内に位置している。ここにはスーパーもレストランもコーヒーショップも映画館もあるから、外に出なくても過ごせるほどだ。
誕生のきっかけは、ドライマンゴーの有名企業「プロフード」の社長が、東横INNセブのオーナーとして名乗りを上げてくれたこと。2014年にプロジェクトが始まり、2016年には建物が完成。半年の準備期間を経てオープンとなった。
「看板だけは先にできていたのですが、現地の方にはただ『イン』と呼ばれていたんですよ。漢字は読めないですから」
インとは……ちょっとシュールだ。
「その次には『トーキョーイン』と呼ばれるようになり、いやいや東京と横浜の間に最初のホテルができたから東横なんですよと説明して。いまや雑誌にも紹介され『東横INN』で定着しました」。
意外とフィリピン人の宿泊客が多い
オープンして2カ月現在のお客さんの反応を聞いたところ、「予想に反して、現地のお客様が80パーセント」という。日本で有名なホテルブランドだから、てっきり日本人ばかりと思っていたのに、これはちょっとすごいことでは?
現地の人には、「日本のホテルに宿泊できる」ということが好評なようだ。
「日本人向け、現地の方向けと決めてはいませんが、日本のホテルのサービスとクオリティを体験してほしいと考えています」「セブの方は日本人大歓迎。日本びいきの方や、日本のものに触れたいという方がたくさんいらっしゃいます」。
フィリピンの人たちは、日曜祝日に教会に行き、そのまま家族でビーチに行ったりバーベキューをしたりする風習がある。
そして朝食サービスも人気のひとつだ。「無料なうえボリュームもあり、そして美味しいと、現地の方にも話題になっているようです」。
個人的にも美味しく感じたが、特に日本人向けの味付けにしているわけではないという。料理は現地のお母さんたちがやっているそうで、だから国を越えて美味しく感じるのかもしれない。
スタッフは全員フィリピン人
170人のスタッフは、深瀬さん以外全員、国籍はフィリピン人。東横INNセブは、地元の女性に雇用の機会を提供することで、地域貢献にもなっている。
「習慣の違う外国の人に教えることは本当に大変です。でも皆さんびっくりするほど意欲的で。日本のサービスを覚えたい、日本語を勉強したい、日本に行きたい、そんなモチベーションを持ってがんばってくれています」
これこそ民間レベルの国際交流だ。話を聞けば聞くほど、海外東横INNのことがますます好きになってしまった私。
そして既に完成しているフランクフルト(ドイツ)の東横INNを始め、これからオープン予定だというウランバートル(モンゴル)、マルセイユ(フランス)を早く訪れ、新たな「部屋ごとパラレルワールドに移動」気分を味わいたいと思ってしまった。
最後に、ここまで読んでくださった東横INNマニアの皆様に、宿泊の際に知っているとちょっとリッチな気分になれる、東横INNセブだけのニッチなトリビアを紹介しつつ筆をおきたい。
(1)東横INNセブ限定・オリジナルミネラルウォーターが設置されている
(2)備品は一見すると全て日本から取り寄せていそうだが、コーヒーカップを入れるトレイ、ティッシュボックスなどは、現地で手に入れた貝細工
(3)バーで提供している東横INNセブだけの「素うどん」が、現地の方に人気
(清水2000)