第15週「恋、しちゃったのよ」第90回 7月15日(土)放送より。
脚本:岡田惠和 演出:渡辺哲也

90話はこんな話
みね子(有村架純)と島谷(竹内涼真)の交際を、富(白石加代子)と鈴子(宮本信子)が心配する。
古い女と書いて、姑と読む
15週では、みね子の初恋が実り、同じアパート・あかね荘に住む大学生の島谷と交際をはじめることになり、初デートもして、全体的に幸せなトーンだった。
かなり、あっさり恋は実ってしまったが、さすがにそれだけでは済まず、週末、はじまったばかりの恋に、ちょっと不穏な空気が。
アパートの大家の富と、みね子の勤務先・すずふり亭の主人であり、みね子の東京の母親代わりのような鈴子が、それぞれ心配をしはじめたのだ。
ふたりが気にしているのは、みね子と島谷の“身分差”だった。
島谷は、佐賀のお金持ちの家の御曹司で、おそらく将来を嘱望されている身。一方、みね子の家は、父が行方不明で、家計が苦しく、みね子が働いているという状況だ。
みね子が、働いてアパートに帰ると、島谷がお茶を淹れてあげるという、従来の男女問は逆な雰囲気が確かにあった。みね子の着ている制服から、女中とお坊ちゃんの道ならぬ恋みたいにも見えた。
鈴子は、「みね子がしなくてもいい苦労だとか、感じなくてもいい悲しい思いとかをね するんじゃないかって だってもう十分背負ってるんだもの、みね子は」と、やたらと先回りして不安を煽る。
これまで、みね子のことをかなり前向きに応援してきた鈴子にしては、珍しい反応だ。
「だってもう十分背負ってるんだもの、みね子は」と、みね子の前で言っちゃうのも、どうなんだ・・・という気もしないでない。結局、鈴子は、みね子を、“可哀そうな子”と思って接している感じにも受けとれるが、いいのかな。
富は、島谷の母と、週に一度くらい電話で話していると言い、島谷をとても心配している母に、みね子の話をしないほうがいいわよねと確認する(噂好きなようで、わきまえはあるのが富の良いところ)。
「身分違いの悲しい恋をたくさん見てきたからねえ」という富。芸妓だったから、それはそれはいろいろな恋を見てきたであろう。
「身分なんていまどきそんな」と取り合わない島谷に、「100年経ったってなくならないわ、そんなもの」と返す富。紀元前から存在するギリシャ劇なども演じる、巫女のような女優・白石加代子だから、やたら説得力がある。
鈴子は「古いのかな、私も」と反省してはいたが・・・。
この時、ものごとをつい先回りして心配してしまうことを「老婆心」と呼ぶという話になる。心配は、お年寄り(古い人間)の専売特許ということか。
富と鈴子は、身分差の激しい旧時代の女の記憶をもった存在として描かれている。
時代は徐々に、身分の差がなくなっているとはいえ、まったくないわけではなく、昭和40年代は、まだまだ結婚は家と家との結びつきと思われていたのだろう。
こうして、島谷は、心配する親にために、故郷・佐賀に帰る。
さて、今後、朝ドラ名物“姑”(まさに古い女)が登場するだろうか。
早苗(シシド・カフカ)が、共同炊事場に行くと、みね子と島谷が仲良く語り合っていたため(みね子がぴしゃりと島谷の手をはたき、ふたりの仲に進歩が見られる)、中に入るのを遠慮し、でも外でずっとふたりのやりとりを聞きながら、反応(ちょっと呆れたり)しているところは、若干、小姑ふうでもあった。
このラブモード、16週もますます盛り上がるようだ。
(木俣冬)