遊川和彦脚本の新ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ・水曜22:00〜)第3話。

過保護に育てられてきたカホコ(高畑充希)が生まれてはじめて厳しいことを言われ、それでいてちょこちょこ優しい面を見せてくる画家志望の男・麦野初(竹内涼真)を好きになっちゃうという予想通りの展開だった。


世間知らずというレベルではない、ちょっと頭が足りないのでは……と心配になっちゃうほどの天然っぷりを発揮しているカホコがネットで情報を調べ、

・下の名前で呼びましょう
・会話に「好き」って言葉を入れましょう
・さりげなくタッチしましょう

などのアドバイスをそのまんま実行。

「つきあっちゃおうよ! いいじゃんハジメ〜(ペタペタさわりながら)」

などと距離感がまったく分からない感じで、突然すごいことを言い出す。

よく分からないなりに一生懸命、麦野に迫る姿はかわいらしくて、父親感覚で微笑ましく見ていたのだが、前回まで、ほぼ幼稚園児レベルの行動をとっていたカホコがいきなり恋愛に前のめり……というのは、やはりちょっと唐突な感じはした。

……カホコ、「みんなを幸せにするような仕事」はどこいった!?
「過保護のカホコ」3話。遊川和彦にしては過保護っぷりが中途半端、もっと座敷牢に入れたりとかして欲しい
イラスト/北村ヂン

母親よ、もっと過保護になれ!


過保護に育てられたカホコが何だかんだあって両親から自立していくドラマであることはだいたい予想がついているけど、その自立のきっかけが「男を好きになったから」というのは少々ベタ過ぎる展開だ。

強烈なキャラクター、トリッキーな展開こそが遊川作品のウリだと思うのだが(諸刃の剣だけど!)、今回の『過保護のカホコ』では、その辺がちょっと物足りなく感じてしまう。

面倒くさそうな親族たちをはじめとして、確かに濃いキャラクターは揃っているものの、ドラマの根幹となっているカホコの母・泉(黒木瞳)の過保護っぷりが生ぬるいのだ。

過去の遊川作品に登場した、『女王の教室』の鬼教師・阿久津真矢や、『家政婦のミタ』のどんな命令でも聞いてしまう家政婦・三田灯。『○○妻』の完璧すぎる契約妻・井納ひかりなどなど、「こんなやつおらんやろ!」という現実離れした強烈過ぎるキャラクターたちと比べると、泉の過保護っぷりは、うっとうしくはあるものの、まだ現実にいそうなレベル。

・洋服を毎日選んであげる
・娘が大学生なのに弁当を作ってあげる
・駅までクルマで送り迎え
・娘の仕事や結婚相手は自分が決める!

それでいながら、スマホやPCを持たせて自由に電話やメールをさせているようだし、夜、カホコが勝手に出かけても気づかない。

……うん、過保護は過保護だけど、このくらいの家庭だったら、いくらでもあるでしょ。

遊川作品だったらやはり、娘を座敷牢みたいな部屋に閉じ込めて、インターネットも絶対やらせない(もしくは履歴を全部チェック)くらいのことはやってもらいたいところ。

肝心な母の過保護っぷりが中途半端なので、カホコの天然バカっぷりだけが際だってしまうのだ。

世の中で一番関わっちゃダメな男とは


今回のクライマックスは、今まで母親の意見にすべて従ってきたカホコが、はじめて口答えをし、家を飛び出してしまう場面。

麦野をディスられ、二度と会わないように言われてしまうのだが、その理由というのが、

「世の中で一番関わっちゃダメなのは役者とミュージシャンと画家の卵なの」
「夢を追いかけるとか言って働きもしないで、女に貢ぐだけ貢がせて、もう利用する価値がないと分かったら他に女を作って出ていく」

ものすごい偏見だけど、まあ、娘を持つ親の意見としては、そこまで異常なものだとは思わない。
……関わんない方がいいよ、役者とかミュージシャンとか画家志望とか。あと売れないお笑い芸人とか!

しかし、恋愛に前のめりになっているカホコは聞く耳を持たない。

「そうやってカホコのしゃべっているのを最後まで聞いてくれないのもやめてくれないかな」
「黙れ黙れ黙れ、うるさいうるさいうるさい! もう、これ以上カホコの邪魔をしないで!」

怒り慣れていない上に頭も回らないので、なかなか言葉が出てこないカホコがブチギレるという演技は鬼気迫っていてすんごかったが、そのブチギレの原因がムリめな恋愛絡みというのが……。

カホコの側に感情移入したいのに、どうしても「気持ちは分かるけど、やめときなよカホコちゃん」という感情がムクムクわいてきてしまう。

家を飛び出したカホコは、大学まで走って行く。

……カホコ、今まで毎日の通学で駅まで歩いたことすらなかったのに、よく道に迷わなかったなぁ。

そして、例の「小さな王国」の境界線を示す赤い壁(?)を越えるのだ。

小さな王国……過保護な母親のもとから飛び出して自立するという表現なのだろうけど、カホコに関しては今までも平気であの境界線を出たり入ったりしていたので、イマイチ効果的な演出となっていなかったのが残念。

あの境界線、どっちかというと泉向けのものだからなぁ。

ブチギレて家庭を再構築していくドラマなのか?


色々気になる点はありつつも、とにかく高畑充希の演技が素晴らしく真に迫っていて、「この子大丈夫か!?」とハラハラドキドキしながら見守ってしまうこのドラマ。

まあ、演技が真に迫りすぎているが故に、リアルに頭の足りない子がいきなり性欲に目覚めて男に迫りまくっているようにも見えてしまい、複雑な気持ちにさせられるのだが。

次回予告によると、これまでほぼ空気状態だったカホコの父・正高(時任三郎)が遂にブチギレる模様。


第2回ではいとこのイト(久保田紗友)、第3回はカホコ、そして第4回が父と、順番にキレていっている。みんながブチギレて本音をぶちまけることで、関係性を再構築していく家族の話となっていくのだろうか?
(イラストと文/北村ヂン)
編集部おすすめ