「いくらママが反対しても麦野くんと付き合うから!」
と、男女交際とはどんなもんなのか分かっていない様子のまま麦野初(竹内涼真)に告白したものの、あっさりフラれてしまったカホコ(高畑充希)。
フラれたショックで部屋に引きこもったものの、「フラれたのが悲しいんじゃないの、二度と食欲なんてわかないと思っていたのに、お腹がペコペコで死にそうなのが悲しいの〜」と号泣。ピュアと言えばピュアだが、バカと言えばすんごくバカ!
一方、過保護なはずの母・泉(黒木瞳)は、カホコが自分の反対を押し切ってまで告白した挙げ句フラれたことをちょっと喜んでいる様子で、落ち込んでいるカホコを徹底的に無視する。
そして父・正高(時任三郎)はそんな冷戦状態のふたりの間を取り持とうとアタフタするのだった。
ボケの正高がツッコミ役をヤラされている問題
やはり思うのが、そもそも泉は本当に過保護な親なのかということ。
カホコに限らず、周囲の人間たちを自分の思い通りに支配したいという思いが強く、押しの強い面倒くさい人であるのは間違いないが、カホコが自分の手の内で踊っている間は過剰に優しく接していたものの、自分の意に反する行動を取るようになって以降は完全に突き放していた。
どっちかというと正高の方が一般的な過保護親なのだ。
泉から「カホコに甘いというか……過保護なんだから、パパは」と言われ「いやいや、お前に言われたくない」と突っ込んでいたけど、泉は過干渉なだけで、過保護なのはやっぱり正高の方だと思う。
恋愛に目覚めたカホコに、男に気に入られるような服を買ってあげ、フラれて落ち込んでいたら「カホコの良さを分かる良い人をみつけてあげるからさ」と提案。さらに、唐突に麦野に会いに行って、
「これからも娘と会ってやってもらえないか、もちろん友達としてでいいから」
なんて頼むという、コレを過保護と言わずして何を過保護と言うんだという過保護っぷりだ。
ここまでやっていながら、自分が過保護であることにイマイチ気づいていない件もそうなのだが、正高って基本「ボケ」なのだ。
それなのに「ちょっとどうかしている親族たちに対し、モノローグでツッコミを入れる役割」をやらされているのに違和感があり、観ていてモヤモヤっとさせられてしまう。
人を動物でたとえるそのツッコミ、全然上手くいってないから!
今回、正高のボケが発揮されたエピソードとして、麦野から、絵のモデルになってもらいたいという意味で「(これからも娘と会う)代わりにお願いがあるんですけど」と言われたのを、「もしかしてこいつ(ゲイなんじゃ)……」と勘違いする場面があったが、これにもモヤモヤさせられてしまった。
必要以上に近づいて身体をジロジロながめながら「お父さんって結構ステキなんですね」なんて言われるという、まあお約束な前振りがあったわけだが、そもそも「ゲイに襲われちゃうよ〜!」というギャグ自体、ちょっと時代遅れな感じがするし、ましてや『偽装の結婚』でLGBT問題を描いていた遊川和彦がそれをやるか? と思ってしまう。
麦野の性格がブレてない?
一方、カホコを振った麦野のキャラクターもいまだによくつかめない。
前回、両親がいないらしいこと、しかもヒドイ親だったらしいことが明かされており、彼の中で「親」というのが大きなキーワードとなっているのは感じられた。
それ故に、親から過保護に育てられているカホコや、自分のために色々してくれる親をウザがるイト(久保田紗友)に対し、辛辣な態度を取っているのだ。
だったらカホコに告白された後も、もっと冷たくあしらっても良さそうなものだが(父親が出てくるという過保護っぷりも見せつけられているのだから)、そこでは妙に優しい態度を取って、今後も友人関係を保とうとしている。
その理由のひとつは、「お前がオレの絵をいいって言ってくれたら、それは嘘やお世辞じゃなくて、心からそう思ってるって信じることができるし、自信もわくしさ」とのこと。
ただ、カホコの選ぶいい絵、悪い絵の基準って、ただ単に麦野の描く抽象画は全然ダメで、肖像画はすんばらしいというだけのように感じるんだけど……。
常々「ピカソを超える」と豪語している麦野としては、普通の肖像画(鉛筆デッサン)の才能しかないというのは受け入れがたい現実かも知れないが、空気を読まないピュアネスなカホコがそれを直球で指摘することによって、自分の才能の方向性を見つめ直す……的な展開となるのだろうか?
これまでの麦野のキャラクターだったら、(たぶん本人的に自信のある)抽象画を理解せず、分かりやすい肖像画ばっかり評価するカホコに「芸術が分からないバカ」と激怒しても良さそうなもんだけど。
いきなりブチ切れた父と、ポカーンと見つめる妻&娘
第4話の最後では、これまで心の中でツッコミを入れつつも、ずっと優柔不断な態度をとり続けていた正高がついにブチ切れていた。
冷戦状態のカホコと泉にさんざん振り回された挙げ句、自分の努力と関係なくアッサリと仲直りしていたのが不満だったようだが、泉から「明日は夕飯いるの?」と聞かれたことをきっかけに「ここはオレの家だ!」といきなり全開でブチ切れるのはさすがに唐突すぎて、正高のメンタルは大丈夫かと心配になってしまう。
「結局、お前たちが愛しているのはオレが稼いでくる金で、オレじゃないんだ!」
という気持ちはよく分かるし、これまで積もり積もった不満が臨界を突破したということなのだろうけど、それにしてもどうしてこのタイミングなのだ!?
そんな魂の叫びをあげる正高の姿に、反省するでもなく、反論するでもなく、ただただ「なに言ってんだコイツ」といった感じでポカーンと見つめている泉とカホコも印象的だった。
せっかくブチ切れたのに、妻&娘がこの反応じゃ心も折れるよ。
一般的なドラマであれば、ブチ切れて本音をぶちまけた結果、物事が好転していくというのが普通だが、このドラマではイト、カホコ、正高と、登場人物たちが次々にブチ切れてはいるものの、特に問題は解決していない。
その他にも、正高の妹・教子(濱田マリ)が詐欺に遭って借金を背負ってしまったり、叔母夫婦の関係が悪化していたりと、親族たちの問題が山積みとなったままなのだ。
放送開始前のドラマ紹介では、
家族の問題を次々と解決していく痛快ホームドラマを目指します。
と書かれていたのに、今のところ全然問題が解決していないし、痛快でもないよ!(酔っぱらったカホコが、麦野の抽象画をビリッビリにやぶきまくっていたのは痛快だったけど)
何だかんだ今夜でもう第5話。そろそろカホコが覚醒して問題をバンバン解決していってもらいたいところだが、どうなるのだろうか
(イラストと文/北村ヂン)