
以前、47都道府県のご当地ポン酢を片っ端から食べ比べた。あれ以来、家に使いきれなかったポン酢の在庫を大量に抱えてしまい、すっかり暑くなった今でも鍋物を作ってせっせと消費している。
が、正直なところ、夏の鍋物はやはり暑すぎる。夏といえばそうめんとか冷やむぎ。ああいったものをちゅるっと涼しくいただくのが一番であろう。そんな時に必要なものと言えば……そう「めんつゆ」だ。麺類を食べる時のつゆとしてだけでなく、様々な料理に使える万能調味料としても重宝される「めんつゆ」。もちろん我が家にも常時ストックされているが、無くなった時にスーパーに行ってその都度リーズナブルな価格のものを買っているだけで、特にこだわってこなかった。
しかし、スーパーのめんつゆ販売棚を見ると分かる通り、ポン酢並みかそれ以上に多種多様な商品が並んでいる。それを見ていていて、眠っていた私の“食べ比べ魂”が刺激され始めた。「そうだ! めんつゆ食べ比べよう!」。
スーパー、コンビニのPBめんつゆを食べ比べる
とはいえ、あまりに種類が多いので、今回はこんな縛りをもうけてみることにした。“プライベートブランドのめんつゆ限定で食べ比べる”。スーパーの大型チェーンの中には自社ブランドでめんつゆを作っているところが多い。また最近ではコンビニの調味料コーナーにオリジナルのめんつゆが販売されているのを見かけることもある。
その前にまず「めんつゆ」の定義を明確にしておこう。消費者庁が公表している「めん類等用つゆ品質表示基準」という文書にはこのような一節がある。
「めん類等用つゆ」とは、しょうゆに砂糖類及び風味原料(かつおぶし、こんぶ、乾しいたけ等をいう。)から抽出しただしを加えたもの又はこれにみりん、食塩その他の調味料を加えたものであって、直接又は希釈して、主としてそば、うどん等のめん類のつけ汁、かけ汁若しくは煮込汁又は天ぷらのつけ汁として用いる液体をいう。(第2条より抜粋)
えーと、まあ、要するに“醤油+だし+砂糖やみりん+その他の調味料”から成るものが「めんつゆ」ということでいいようだ。個人的には、「めんつゆ」というと砂糖やみりんによる甘みが思い浮かぶ。おそらく今回の食べ比べはしょっぱさ、甘さ、ダシの風味などに個性が出る結果になるだろう。
早速、私の住んでいる大阪市内を駆けずり回ってめんつゆ探しを開始。炎天下の中、リュックサックに数リットルのめんつゆを入れて運んでいる時、「今もし職質されたらどうしよう」と思った。
集まったのは以下のめんつゆ。

西友「みなさまのお墨付き そうめんつゆ(ストレート)」、業務スーパー「めんつゆ(2倍濃縮)」、トップバリュ「だしの旨み そうめんつゆ(ストレート)」、co-op「つゆの素(3倍濃縮)」、スマイルライフ「かつおと昆布のつゆ(3倍濃縮)」、ファミリーマート「そうめんつゆ(ストレート)」、セブンイレブン「つゆ(3倍濃縮)」、ローソンバリューライン「つゆ(3倍濃縮)」の計8本。
ファミリーマートの「そうめんつゆ」はヤマサ醤油が、セブンイレブンの「つゆ」はヤマキが製造元だったりと、あくまでプライベートブランドとして出しているだけというものもあるが、予想以上に多く集まって驚いた。
食べ比べの方法としては、そうめんを茹でて、各めんつゆにつけて食べながら、旨みや甘みや後味、香りなどの項目について評価しながら総合点をつけ、順位を決定する。

参加メンバーは食のプロではまったくないので、採点結果や味の評価はあくまで独断です! ご了承ください。
食べ比べを行うメンバーは、私がお世話になっている大阪のミニコミショップ「シカク」のスタッフやその仲間たち。「シカク」はつい先日、此花区に移転したのでその2階を会場として使用させてもらった。
参加者は6名。写真左上から右下に向かって、シカク店長・巴さん、副店長・たけしげさん、常連客のヤマコさん、ハヤトさん、たまたまこの日シカクに宿泊していたムトウさん、そして私。

実際に食べ比べてみると、どれも王道のめんつゆ、という感じで、差を見出すのが非常に難しかった。大手チェーンのプライベートブランドだけあって、バランスの良い、万人に受け入れられる味になっているように感じた。

一同が悩み抜いた末に各項目の審査結果によってつけられた総合点をもとに、上位ベスト3を紹介したい。
1位はダシがしっかり効いた希釈タイプのめんつゆ
第1位
スマイルライフ「かつおと昆布のつゆ(3倍濃縮)」(1リットル入り、198円)

総合点4.16点
みんなのコメント:
たけしげ「ダシがしっかり効いていて美味しい! 1リットルで3倍濃縮だからコスパもすごく高い」
ヤマコ「甘みや後味などの各要素がまんべんなくハイクオリティでバランスが良かった。そうめんや薬味と一緒に口にした時にもしっかりと満足感のある味わいが残る」
はやと「家庭にあったら重宝しそうなバランスの良い味。香りも良い」
ムトウ「試しにかなり薄めて味わってみてもしっかりとダシの風味が残っていた」
と、いうわけで、大手スーパー「ライフ」のプライベートブランド「スマイルライフ」の商品が1位に選ばれた。
今回食べ比べためんつゆの中には水で薄めて使う“希釈タイプ”とそのまま使う“ストレートタイプ”の両方があったのだが、どちらかというと“ストレートタイプ”の方がダシの風味が感じられ、“希釈タイプ”はシンプルな味だとする意見が多かったのだが、このスマイルライフ「かつおと昆布のつゆ(3倍濃縮)」はダシの風味が豊かだと好評を得ていた。
2位はこちら。
第2位
トップバリュ「だしの旨み そうめんつゆ(ストレート)」(500ml入り、170円)
総合点4.08点

みんなのコメント:
たけしげ「何の文句もない美味しさ。塩味と甘みのバランスが考え抜かれている気がする」
ヤマコ「旨みが上品だと感じた。塩加減もちょうどいい」
はやと「カツオの風味ががっつり感じられる」
第2位は「イオン」のプライベートブランドである「トップバリュ」の商品に決定。「うるめいわしぶし」、「かつおぶし」、「こんぶ」などのダシの風味をきっちり感じさせてくれる安心の味わい。ストレートタイプなので、そのまま注げばそれがすなわち絶妙なバランス、というのも便利でいい。さっとその日に使い切るつもりな非常に使い勝手のいい一品である。
第3位となったのがこちら。
第3位
西友「みなさまのお墨付き そうめんつゆ(ストレート)」(500ml入り、148円)

総合点4.0点
みんなのコメント:
ヤマコ「口にふくむと甘みの後に、ほのかにスモーキーな風味が広がる。差がつけにくい今回のエントリー商品の中でもこれには個性を感じた」
たけしげ「かつおぶし、そうだぶし、昆布の3種類のダシが味に奥行きを生んでいる。甘みが結構強いところで好みが分かれるかもしれない」
枕崎産の「かつおぶし」、日高産「こんぶ」など、使用している素材へのこだわりがダシ感の強さに反映されていた。あえて粗く挽いた節を使うことで、ヤマコさんが“スモーキー”と表現しているちょっと燻製っぽい香りが出ており、平均的な味わいの商品が多い中、印象に残る一品だった。
めんつゆの味の情報量が多すぎて味覚が飽和状態に
しかし、今回は本当に難しかった……。当然のことだが、どのメーカーも非常に上手なバランスのめんつゆを作っている。どんな料理にも使える、まさに万能な感じのものばかりで、その分、個性が見えづらく、判定が困難であった。
一応自分で「これは何点」などと採点してみたものの、ラベルを隠して飲み比べたら絶対にどれがどれやら分からなくなる自信がある。そう思い、絶対無理だろうなと思いつつ「利きめんつゆ」を試してみた。私が任意のめんつゆ選び、商品名が分からない状態で参加メンバーに味見してもらい、どのブランドのめんつゆかを当てるというルール。

難関校の入試並みの難しさだと思ったのだが、シカク店長の巴さん、常連客のハヤトさんは2回連続で難なく正解。正確な舌を持つ面々が頼もしい。
食べ比べ後はワイワイと打ち上げに移行したのだが、誰かが買って来たスナック菓子を食べてみると不思議と味がしない。めんつゆには味の情報量が多く含まれすぎていて、味覚が飽和状態になるようである。“めんつゆを摂取し過ぎると味がなくなる”。また一つ賢くなった。
(スズキナオ)