今年で61歳。還暦を超えた今もなお、精力的に活動し続けている桑田佳祐。
オリジナルアルバムを制作したり、情報番組と朝ドラ用に曲を書き下ろしたりと、今なお、一線級のミュージシャンとして活躍しています。

しかし、新しいことに挑戦するアグレッシブさでいえば、当然ながら、若いときには及びません。
思えば、1990年初頭。青臭さと円熟味を同居させたかのような30代前半の桑田には、今以上のエネルギーがあり、覆面ユニットを組んで中国でゲリラライブを行ったりしていたものです。

天安門事件に感化されて結成されたSUPER CHIMPANZEE


「やりたいことが一杯あり過ぎて、そのすべてを実現しようとしていたのがこの時期だった」

桑田が自著の中で語った「この時期」というのは、80年代後半~90年代前半くらい。
当時はちょうど、隣国・中国で天安門事件が発生したタイミングでもあり、この民主化に向けた人々のうねりに感化された桑田は「音楽で何かアクションを起こせないか?」と考えたそうです。そして、誕生したのがロックバンド『SUPER CHIMPANZEE』。
桑田の呼びかけで集まったバンドメンバーは、以下のようにとても豪華でした。

各セクションの一流どころが名を連ねた


・小林武史(キーボード・編曲)…言わずと知れたMr.Childrenの元プロデューサーであり、My Little Loverの元メンバー。両グループともメジャーデビューする前だった当時は、サザン及び桑田関連楽曲の編曲に携わっていた。

・小倉博和(ギター)…桑田も舌を巻く凄腕ギタリスト。現在は桑田をはじめ、槇原敬之、福山雅治などのレコーディング及びライブアーティストとして活動。加えて櫻井和寿と小林武史による環境保護目的のバンド『Bank Band』のメンバーとしても活躍。

・佐橋佳幸(ギター)…坂本龍一、佐野元春、氷室京介など、名だたるミュージシャンから絶大な信頼を寄せられるギタリストであり、松たか子の旦那。
小倉博和とは親友の間柄であり、ギターユニット「山弦」を組んでいる。

・角谷仁宣(コンピューター・オペレーション)…シンセサイザーのプロフェッショナル。アルバム『稲村ジェーン』(1990年)以降、現在に至るまで、サザン及び桑田関連楽曲の制作に携わり続けている。

万里の長城や天安門広場でライブをした


桑田がサザン以外で結成したバンドというと、1986年~87年の『KUWATA BAND』が有名ですが、これは当時、嫁の原由子が産休したことに伴うサザン休業のため、誕生したもの。
対してSUPER CHIMPANZEEは、サザンと並行して活動を行っており、サザン本体へ刺激を与える意味合いも込められていました。

活動内容は実に多彩でした。1991年3月に新宿日清パワーステーションで60~70年代の洋楽カバーだけのライブ『Acoustic Revolution』を開催したり、1991年6月には北京へ渡航し、万里の長城や天安門広場、北京のライブハウスで演奏したり……。なお、北京での演奏風景は、『筑紫哲也 NEWS23』で放送されました。

発表したオリジナル曲はたった2つ


ちなみに、SUPER CHIMPANZEEのオリジナル楽曲は、加山雄三の『君といつまでも』をパロったコミックソング『クリといつまでも』と、ロックナンバー『北京のお嬢さん』の2曲だけ。
これらを1991年9月に発表し、バンドは自然消滅しています。これだけで終わらせるには実に惜しいところですが、なにせ、「やりたいことが一杯あり過ぎた」時期の桑田だったゆえ、次のことへ取り組まねばならなかったのでしょう。

あれから26年。もうメンバー全員が年齢を重ねたこともあり、こんなにも攻めた桑田佳祐らの音楽活動は、もう二度とお目にかかることはできないでしょう。

(こじへい)

※文中の画像はamazonよりクリといつまでも
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