自身が設立したプロレス団体をめぐって、4番目の妻となった女性を交えて義理の息子と骨肉の争い中だ。
これまでも数多くのスキャンダルに見舞われて来た猪木だが、「猪木の常識、非常識」なんて自身が断言するように、そもそも一般常識では測れない器を持つんだから、今回の騒動も起こるべくして起こったのだろう。
そんな猪木の破天荒ぶりが存分に発揮されたイベントがある。1998年に起こった真夏の惨劇。当時ほとんど報道されなかったので、知っている方はかなりの猪木マニアだ!
パワーを持て余していたプロレス引退後の猪木
98年7月、千葉県木更津市の金田海岸で1万人規模のビッグイベントが開催された。その名も「狂人乱舞・神威」。
なんだか物騒なタイトルだが、文字通り猪木が狂人と化したのだからたまらない。
当時の猪木は4月にプロレスを引退したばかり。しかし、その闘魂は燃え尽きることなく、新団体「U.F.O(ユニバーサル・ファイティングアーツ・オーガニゼーション)」を発足。手駒にバルセロナ五輪銀メダリストの小川直也を抱え、格闘技界に新たな潮流を起こそうとしていた。
異種格闘技戦で対戦したモハメド・アリを名誉会長に就任させ、自身もロサンゼルスに拠点を移すなど、活動はワールドワイド。
消滅したスポーツ平和党を再結成し、政界に再挑戦することをブチ上げるなど、とにかくエネルギッシュで引退によりパワーを持て余している感じだった。
もっとも、翌日にいきなり党首を辞任して離党するなど、相変わらずであったが。
「いつ何どき誰の挑戦でも受ける!」猪木vs素人のスパーリングが実現!
話を戻そう。狂人乱舞・神威では横浜銀蝿やBro.Kornのライブ、車椅子バスケの大会、また猪木が音頭を取っての世界を股に掛けて活動するレスキュー隊「アントンレスキュー」の発足式が行われるなど、イベント盛りだくさん。
中でも目玉は、猪木と素人のスパーリング(練習試合)。まさに、「いつ何どき誰の挑戦でも受ける!」を地で行くイベントである。
希望者が次々とリングに上がるが、ド素人がかなう相手ではない。あっという間に極められギブアップ。恒例の闘魂ビンタを食らって終了と、和やかにイベントは進行して行ったのだが……。
耳から流血……静まり返る会場
続いて、体格も良く腕に覚えありと思われる男性がリングに上がったのがマズかった。鋭いローキックで猪木を牽制したことで、猪木の闘魂にスイッチが入ってしまう。
素早くテイクダウンした猪木は相手の耳の後ろに拳を連打、そのまま肩で顔面を圧迫し、速攻のギブアップを奪ったのだ。鮮やかすぎるケンカ殺法に会場は静まり返り、相手の男は耳から血を流したまま呆然と立ち尽くすのみ……。
「闘魂は連鎖する!」火が点いた素人を鉄拳制裁で泣かす猪木
凄みを存分に見せつけた猪木。ここで終われば良かったのだが、次の挑戦者の闘魂にも火が点いてしまったことが本当の悲劇の始まりだった。
戦慄のスパーリングで締めに入りかけた空気の中、よりによって前述のアントンレスキューの隊員が名乗りを挙げたのだ。しかも、この男、格闘技経験者なのか素早い動きで猪木のバックを取ってしまう。
猪木の引退試合では古舘伊知郎が「闘魂は連鎖する!」なんて名フレーズを残したが、思わぬところで連鎖してしまったようである。
すると、一瞬で猪木が本気モードに。すぐにその男をひっくり返すと、マウントポジションから顔面に鉄拳制裁。しかも、耳やアゴを的確に狙う容赦なさ。それどころか、相手がギブアップして泣き始めたが連打は止まらないのだから恐ろしい。
1万人の前で公開処刑を受けたこの男性、その後どんな人生を歩んでいるのか気になるところである。
ちなみに、アントンレスキューは発足式当日に解散となった模様。このスパーリングとの因果関係は不明である。
※文中の画像はamazonよりアントニオ猪木 21世紀ヴァージョン 炎のファイター~INOKI BOM-BA-YE~