地獄のテラスハウスである。

姫様のようにふるまう人間がいると、まわりの人はついついそれに従ってしまうのか、という社会実験かと思ったよ。
「私は自分の人生を生きてるだけなのに、みんなからジャッジされるのでめんどう」
「満理子はもう私のなかでは落ちちゃったけど」
「(わたしを)もっとケアしたほうがいいと思うよ」
「満理子は私の一生の親友になれると思うわよ。その見込みはあるわ」
「(君の言動で満理子は傷ついてるんだよと言われて)傷ついて成長するんだから 人間って」
「この私に向かってあんな口の利き方するのは絶対に許さない」
人は、おかしくなっちゃうと名言を連発する。
お姫様が臣下に言ったセリフではない。
これ、シェアハウスのメンバーに向かって、吐いた言葉である。
すごいなー。
もし、ぼくがこの場にいたら、ゲラゲラ笑い出すと思う。
あまりのいたたまれなさと、お姫様になってる人を見て、笑うしかなくなってる。
前回、満理子が声をあげて泣いた。
シェリーが満理子に「ウェズが嫌ってるよ」っていうことを話した。
hateというキツイ言葉を使った、と言って泣く満理子。
ウェズは「嫌い」とは言ってないと返す。
大志は、「シェリーは他人に対してリスペクトがない」と怒る。
これは満理子だけの問題ではないから、いちどみんなで話すべきだ、と。
ウェズも「そうすね」と答える。
満理子も泣きながら「はい、ありがとうね、みんな」。
で、全員がそろってのミーティングである。
シェリーとウェズは、ふたり、浅く腰掛けて、体が後ろに引けている。
関川良と智可子は、椅子に体育座りだ。ほとんどしゃべらない。
大志は、シェリー側に体を向けてまっすぐ座っている。
満理子はただまっすぐ座っている。
大志が、やんわりと話しだす。
「距離を取られているように感じる」
シェリーが返す。
「わたしは、この家の外のことに集中してる……だけだけど」
もう嫌な感じなのだ。
しかも、こう続ける。
「この家 疲れることがいっぱいあるから」
おおお、言うなー。
大志は、怒るでもなく「疲れることって?」と聞く。
「こういう話とか」
ケンカ売ってる。
「私は自分の人生を生きてるだけなのに、みんなからジャッジされるのでめんどうくさい」
とまで言う。
大志、怒らず、満理子との一件を話す。
ところがシェリーが、
「話すことがない行きたくないとか言うんだったらウェズだって行きたくないよみたいな感じで言っただけだけど」
と反論する。
あれ? ぜんぜんニュアンスが違う。
「何でも大っきな問題になるから私は距離をつくってインボルブしたくない(関わりたくない)」
さらに、仲良しだけで仲良くしたいだけだと小学三年生理論をかざし、ウェズとは仲良しだ、ウェズはどう思うと聞く。
このときのウェズの返事が、まあ、見事に、日和った。
「俺は仲いいと思うよ」
大志は、がんばる。
仲良い人とだけ仲良くして他の人はどうでもいいと言われて一緒に生活するのはツラい。
と、まっとうなことを言う。
2人で解決できるならいいけどできないから、みんなを集めたんだ、と。
ここで、満理子が、みんなに話してごめん、と語る。
すると、シェリーが「満理子はもう私のなかでは落ちちゃったけど」
おおおおお。こんなことを言う人がいるんだ。
わたしがちょっと話しただけで、大げさに満理子が受け取って、こんなことになってる。
と主張。
「2歳の子みたいだったから」とまで言う。
これはさすがに満理子は反論すべきだろう。
シェリーがキツイ言葉で言っていたのか、ちょっと言ったことを満里子が大げさに受け取ったのか。
おそらくキーはhateと言ったのかどうかだろう。
だが、満理子はそこに触れずに、謝るのだ。
このあと、満理子が「関係を直したい」と下手にでるとシェリーは答える。
「満理子は私の一生の親友になれると思うわよ。その見込みはあるわ」
姫様の位置から、見下げる言い方。
満理子が、これに屈服して、謝るのだ。
「満理子ももっとシェリーのこと分かろうとしてくれるんだったら全然もっと仲良くなっていけると思うけど今までよりも」
とシェリーが念を押す。
満理子は「分かった」と言ってしまう。
納得のいかない大志が、なんで傷ついた満理子が謝って、シェリーは謝らないのか、と問う。
するとシェリーは「私 何悪いことした?」。
さらに、「傷ついて成長するんだから 人間って」である。
これは、すごいことになってきた。
「わたしはあなたたちを成長させるために傷つける。
つまり、「あなたたちはわたしに仕えなさい」だ。
これに、満理子は「分かった」と言ってしまった形だ。
しかも、満理子が「もういい、これは私たちの関係だから」とか言い出すのだ。
えええええー。
大志、かわいそう。
おもいっきりハシゴにのぼらされて、掛け外された格好だ。
暴君に泣かされた少女がみんなに訴えて、男がもう黙ってられないと立ち上がり、みんなを集めて、暴君に意見した。
そうしたら、少女が、「やっぱり私が悪いの、もう黙って」と言い出した。
そんなこと言われても!
男は、あげてしまった拳を引っ込めることはもうできないだろう。
暴君に処刑されてしまう。
大志は、最後の望みとばかりに、ウェズに意見を求める。
ウェズは、喉で響かせる低い声で言う。
「相手の気持ちを分かろうとするのは大事だよ」
そして、もう何も言わない。
どーーーでもいいことしか言わなーーーい。
大志、完全に話をふる相手を間違えました。
大志「ちょっと俺、時間が必要だわ」と言って、退場。
この後、シェリーがニヤリと笑うんである。
たしかに、ここ最近のシェリーの様子はおかしい。
来たときと顔がぜんぜん違う。
と思って、シェリーマリア澄川ラボエ初登場の回シーズン3の6を見直してみた。
あら、そんなに変わらない。
人の顔はそんなに短期間では変わらない。
スタジオでは「ゴージャス」「セクシー」という声。
馬場園さんが、このときすでに「お姫様みたいの来た」と言っているのだ。
違うのは、態度だ。
態度が違うだけで、与える印象がこんなにも変わるのか。
座る姿も、前に乗り出して、みんなと笑いながら話していた。
だが、いまは、けだるそうに、いつも後ろに引いた姿勢だ。
地獄の家テラスハウス、あと2週である。いったいどうなるのか?(テキスト&イラスト:米光一成)