婚活支援サービスのパートナーエージェントが2017年3月に行った調査では、残業が原因で恋愛がうまくいかなくなった人が7割にも及んだという。
「一緒に過ごす時間が減った」「相手に迷惑をかけた・我慢をさせた」「けんかになった」などが多い原因だ。
果たして、長時間労働は本当に恋愛にブレーキをかけているのだろうか。
長時間労働は恋愛が進まない原因とは限らない
現在、長時間労働は育児の時間が減ることから少子化の原因となっていると議論されている。しかし、結婚に至る以前の恋愛がなかなか進んでいない点については、必ずしも長時間労働が原因とは限らないようだ。
それを根拠付けるレポートがある。それは東京大学社会科学研究所附属日本社会研究情報センターの研究報告レポート2007年「家族形成に関する実証研究」の中にある「第1章 なぜ『パートナーに出会えない』のか?―出会いを可能とする要因・阻害する要因―(佐藤博樹氏・中村真由美氏)」である。
このレポートは、経済産業省の「少子化時代の結婚産業の在り方に 関する研究会」(座長:佐藤博樹)が2005 に行った「未婚者アンケート調査」を分析したものだ。
同レポートの結論の一部には「特に男性の場合,長時間残業や休日勤務は恋人がいるかどうかには影響していなかった」とある。そして、残業削減など、実労働時間の短縮が必ずしも恋愛の増加にはつながらない可能性を示しているという。
ただし、休日出勤が月3~4回以上の女性に限っては、現在恋人がいない傾向があったそうだ。
なぜ恋愛が進まないのか
同レポートでは、「残業が忙しくても,出会いを作ることができる人は恋愛をするものであり,時間的アクセシビリティは他の要因に比べて実は未婚化の大きな要因ではないという可能性がある」とまとめられている。つまり、残業時間が長くても「恋愛する人は恋愛する」のであり、未婚化の要因は他の要因のほうが勝っているということだ。
では、恋愛にブレーキをかけている他の要因にはどんなものがあるのか。
同レポートでは、次の分析結果が報告されている。
・非正規就業していることは(パート勤務であることは)、男女共に恋人がいないことにつながっている
・収入の高さは、男性の恋愛関係においてプラスの効果をもつ。
・男女共に、職場関連で接触する独身異性の数が多ければ「恋愛に近く」なっている。
・恋愛相談ができる相手の数が多いほど、現在恋人がいる傾向がある。
同レポートによると、なかなか恋愛が進まないのは、長時間労働よりも、むしろパートなどの雇用形態や収入、職場の異性や恋愛相談できる人間関係の状況によるところが大きいということだ。
恋愛・結婚相談を受けている専門家の意見を聞いてみた
実際のところどうなのか。個人事業主の事業立ち上げコンサルティングの傍ら、恋愛・結婚相談も受け付けているというビジネスプロデューサー櫻井美沙子さんに率直な意見を聞いてみた。
まず、残業が多いことは、実際、恋愛に悪影響を及ぼしているのだろうか。
「残業は多少、影響していると思います。ただ、残業に限らず、長時間労働と不規則な勤務形態の仕事の場合、2人の生活スタイル時間が合わないことで、喧嘩になったり、一緒に過ごす時間が減ったりして、うまくいかなくなることは大いにあると思います。
また、そういった環境を乗り越えるほどの気持ちが2人になかったということもあるかもしれません。ただ、仕事をほったらかしにして自分のところに会いに来る男性は、女性からすると長い目で見てどうなのか、ということもありますが」
分析レポートでは、恋愛が進まないのは残業が多いことが原因ではなく、非正規職員などの勤務形態や収入、周りの対人環境によるところが大きいという結果が出ている。これらの原因はどれほど影響しているものだろうか。
●非正規就業(パート勤務)・高収入が恋愛に及ぼす影響について
「必ずしも残業が影響していないとは思っていません。ただ勤務形態や収入については、当然影響はあると思います。普通、パート勤務で年収が低い男性のほうがいいという女性はいませんし。そういう男性は、恋愛ができる可能性、機会が少ないというのは事実です。また、雇用形態によっても差が出ると思います。個人事業主や自営業の人は自分で時間をコントロールしやすいですが、雇用されている人同士だと自分の意志ではコントロールすることに限界があり、すれちがう可能性が高くなるからです」
●職場関連で接触する独身異性の数が多いほど恋愛に近くなることについて
「確かに周りに異性が多いほど恋愛は進みやすいですが、結婚となると必ずしも異性の数が多ければいいというものではありません。例えば、男性しかいない職場の男性でも、早く結婚する人もいます。それは見つけたら即、結婚に踏み切る決断力があることが大きいと思います。
一方、周囲に候補となる女性が多い男性の場合、『この女性に決めていいのかな』と迷い、なかなか決断できないということもあるのではないでしょうか。ですから周囲の異性の数=結婚の数とは言いきれないところがあります」
●恋愛相談ができる相手の数が多いほど、現在恋人がいる傾向があることについて
「確かにそうですよね。恋愛していない人は、恋愛の話はしませんしね。また、男性はそもそもあまり相談しないのではないでしょうか。
実際のところは、残業も恋愛・結婚に少なからず関係しているようだ。
(石原亜香利)
取材協力
ビジネスプロデューサー 櫻井美沙子さん
+335代表/実践体験型コンサル「美起業Lab(ラボ)」主宰/ビジネスデザイナー
大学卒業後 みずほ銀行、インターネットプロバイダ勤務を経て、株式会社バンダイに入社。マーケティング・企画・事業の立ち上げ等の幅広い実績・経験を活かし、フリーランスに転向。事業・商品等のプロデュースをする +335(プラスサンサンゴ)を立ち上げ活動するほか、実践体験型コンサルティング・プロデュースサービス「美起業Lab(ラボ)」で「好きなことで起業して自由で豊かに生きたい」女性に向けてビジネスプロデュースも行っている。