パワーナップ制度で生産性は本当に高まる? 「意外と眠れた」「集中力が続く」3社に聞いた

NASAやGoogleでも推奨されている、パワーナップ。ただの昼寝ではなく、仕事の生産性や効率を高めるための仮眠だ。
取り入れている企業は複数あるが、生産性に良い影響は出ているのだろうか。パワーナップを実践している3社に、実際、どんな結果が出ているのか聞いてみた。

1.ネスレ日本~オフィスにテントを張るコーヒーナップを期間限定で実施


パワーナップ制度で生産性は本当に高まる? 「意外と眠れた」「集中力が続く」3社に聞いた

ネスレ日本は、品川の東京コマーシャルオフィスに、コールマンのテントを期間限定で設置。普段は社員や社外の取引先が商談・打ち合わせを行うスペースにテントを設営し、「コーヒーナップ」が体験できる仮眠スペースを展開した。コールマンのテントやチェア、コットなどを設置し、カフェインの入ったネスカフェ ゴールドブレンドのコーヒーを無料提供して、社員や取引先がコーヒーナップをできる場所を作ったという。

パワーナップ制度で生産性は本当に高まる? 「意外と眠れた」「集中力が続く」3社に聞いた

コーヒーナップとは、仮眠とコーヒーを組み合わせたもの。15分ほどの仮眠の前にコーヒーを飲むことでカフェインにより寝起きがシャキッとし、パフォーマンスを発揮しやすくなるといわれている。

●コーヒーナップを体験した社員の声
「午後から集中したい時や気合いを入れたい時に利用したいと思います」
「いつも午前中に考える作業をし、午後は単純作業をするようにしていたのですが、コーヒーナップを行えば午後でも考える作業ができそうです」
「いつも昼休み中についウトウトして音楽を聴いて気分転換や、机で仮眠を取っていたが、椅子に座っているとどうしてもゆっくりとリフレッシュできなかった。ぐっすり眠るというより、テントの中では何も考えずにいられるので心がリラックスできます」

●コーヒーナップで生産性は上がった?
「生産性が上がったかどうかの判断はむずかしいですが、今回の取り組みに対して社員からは好意的な声が出ており、コーヒーナップに対する理解も深まったのではないかと考えています」(ネスレ日本担当者)

●ネスレ日本の仮眠制度
以前からネスレ日本社内では、コーヒーナップが実施されていたそうだ。

「今年6月より神戸本社内に仮眠室を設け、社員が仮眠前にコーヒーを飲むコーヒーナップを行う活動を開始しています。社員からは『コーヒーナップを取り入れたことで、より効率的に業務が進められるようになった』『コーヒーナップという考え方を初めて知った』といった好意的な声が出ています。現時点では、社員の利用者が多いわけではありませんが、仮眠室の利用促進やコーヒーナップに対する理解を深めていくための施策を考えていきたいと思っています」(ネスレ日本担当者)


2. OKUTA~1日15~20分程度の仮眠OK!会議では必ず一定の仮眠時間を設定!


パワーナップ制度で生産性は本当に高まる? 「意外と眠れた」「集中力が続く」3社に聞いた

埼玉県に本社を置く自然派デザインリフォーム会社のOKUTA には、2012年3月からパワーナップ制度が導入されている。

昼食休憩とは別に1日15~20分程度の仮眠を認め、眠くなったタイミングで仮眠が取れるという。

「昼食休憩以外の午後の時間帯で、自分が眠いと感じたタイミングで仮眠を取ることが全社員に認められています。
時間は15~20分程度。深い眠りに入りすぎない最適な長さを採用しています。場所は車の中や各自のデスクで、マイ枕を用意するなど眠り方は自由。ストールをかぶって寝顔を隠す社員や、アロマスプレーを使って安眠を誘起する社員などさまざまです。内勤の社員は業務効率のUP、車移動の多い社員は居眠り運転防止、プランナーは脳をリラックスさせることでアイディアが生まれやすくなるなど、さまざまな職種の社員が活用しています」(OKUTA担当者)

導入当初は、少し抵抗があった社員もいたようだ。

「導入当初は『本当に寝ていいの?』と半信半疑の社員が多く、寝づらい雰囲気もありましたが、上席者が率先して仮眠を取ることで、気兼ねなく制度を利用できるようになりました。現在では、社員・派遣問わず、主に内勤社員は1/3程度が常用的に実施しています。営業社員は、営業車の中で仮眠を取ることで安全運転につなげる人も。また、社内研修や社内会議などでは必ずパワーナップの時間を設けており、全社員が活用する機会があります。この制度は「眠くなったら寝てもいい」という権利であり、義務ではありません。業務に差し支えのないよう各自が責任を持って利用することで、個々の判断力・責任力の向上にもつながっています」(OKUTA担当者)

●パワーナップにより、生産性は向上した?
「眠気が原因のミスや、集中力が下がってしまう時間が大幅に減りました。特に経理などの数字を扱う社員は、ケアレスミスが大幅に減ったと言います。
例えば眠気から電卓の数字を二度打ちしてしまったところを打ち直したり、本当にミスがないか確認したりと、余分な時間を取られることがありましたが、仮眠を取ることでスッキリとした状態で業務を行うことができ、作業効率の向上につながっています。
必ず聞かれるのが、売上は上がったか、残業時間は減ったというデータはあるか、ということですが、一概にパワーナップの効果だと結び付けることはできません。社員の働きやすい環境整備こそが、パワーナップの大きな効果と言えます」(OKUTA担当者)

●パワーナップ制度に対する社員の声
「社員へのアンケートでは、『業務効率が上がった』『集中して仕事できるようになった』『眠ってはいけないというストレスがなくなった』という精神的な安堵感など、好意的な意見が多数挙がっています。常用的には使用しない社員からも、『体調がすぐれない日には助かる』といった声があります」(OKUTA担当者)

●全社員会議や営業会議、社内研修でも必ずパワーナップ時間を設けるOKUTA
パワーナップ制度で生産性は本当に高まる? 「意外と眠れた」「集中力が続く」3社に聞いた
全社員会議でのパワーナップの様子

OKUTAでは、全社員会議などの際には、必ず仮眠を取る時間が設けられるという。

「制度の利用は基本的には個人の裁量に任せていますが、年に数回行われる営業会議や全社員会議、社内研修などの場合には必ず一定の仮眠時間を設定し、全社員が活用する機会を設けています。眠気を解消でき、会議や講義に集中できる効果はもちろん、『会議中は絶対に居眠りをしてはいけない』という意識が高まる効果もあります」(OKUTA担当者)


3.Eyes, JAPAN シエスタ制度


福島県会津市のシステム開発・ネットワーク構築などを行う株式会社Eyes, JAPANには、シエスタ制度が導入されている。

シエスタ制度とは、15~30分程度の昼寝を認める制度のこと。短時間の昼寝により、頭をすっきりとさせ、午後の仕事を効率的に進めることを目的としている制度だそうだ。

●眠いのを我慢しないよう、スタッフへの配慮から
「シエスタ制度は、弊社代表が作ったものです。自分も仕事中に眠くなった際、眠いのを我慢して仕事をするよりも、少しでも昼寝をしてから行ったほうが断然、効率が良いと感じていたため、と聞いています。また、一般的に、昼寝を堂々とできないことが多いですが、その場合、眠くなったらお手洗いに行き、便座に座りながら昼寝を少しするという話もあるようです。そのような思いをスタッフにさせたくないという、代表の思いも込められています」(Eyes, JAPAN担当者)

●社員の利用率
「ほぼ全員が利用しています。
みんな、思い思いに、アイマスクをつけてソファで寝ながら仮眠を取ったり、デスクにクッションを置いて寝たりしています」(Eyes, JAPAN担当者)

●シエスタで、生産性は上がった?
「社員からは、眠いのを我慢してウトウトする者がいなくなったため、常に仕事に集中できているという声や、集中力が高まるので残業がなくなった、ケアレスミス等が少なくなった、という声も挙がっています」(Eyes, JAPAN担当者)

コーヒーナップ、パワーナップ、シエスタ、名は違うものの、いずれも眠気を覚まし、業務に集中するための手段である。生産性向上については、計るのはむずかしいものの、各社員が集中力アップを実感していることや、制度が継続し、多くの社員が利用していることから考えても、効果は期待できるのかもしれない。

【取材協力】
ネスレ日本
OKUTA
Eyes, JAPAN

(石原亜香利)
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