せっかくの気持ちの良い自然の中で、平然とルール違反をする人物が現れたら……あなたならどう対応しますか?

 今回は、そんな迷惑な人物に遭遇してしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。

趣味のハイキングを楽しんでいるところに……

 綾瀬未歩さん(仮名・29歳)は、久しぶりに趣味であるハイキングを楽しもうと、都内から気軽に行ける人気の山へ1人で向かいました。

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「登山というより、景色を楽しみながらのんびり歩いてリラックスするのが目的の、ゆるいソロ山歩きにハマっているんです」

 その日はよく晴れ、空気も澄み渡り、まさに絶好のハイキング日和。
山道には穏やかな空気が流れていて、すれ違う人同士が軽く会釈を交わす、心地よい時間が広がっていたそう。

 そんな未歩さんは、山頂でお弁当を食べ終えると、無理をせずケーブルカーで下山することに。乗り場にはすでに長い列ができていましたが、それもまた休日の風景のひとつでした。

「翌日に疲れを残さないように楽しむのが私のモットーなので(笑)、前に並んでいた20代くらいのショートカットの小柄な女性と『今日はちょうどいい気候で気持ち良かったですね』と会話を交わしながら、ゆっくりと長い列が進むのを待っていたんです」

 穏やかな会話とともに、ゆったりと流れる時間。いきなり後ろから、何者かにぐいっと体を押されて未歩さんはつんのめってしまったそう。

平和な空気をぶち壊す、割り込みおじさん

「振り向くと、50代くらいの男性が『ほら、どいて!』と当然のような顔で列の前へと割り込んできて……その強引さに怖さを感じ、本能的に『関わりたくない』と思いましたね」

爽やかな登山が台無し! 誰も止められない“割り込みおじさん”が…女性客の「鋭いひと言」で最後尾へ
ケーブルカーで横入り
 男性は人と人の隙間に体をねじ込むようにして進み、前にいた人の肩やリュックにぶつかっても一切気にする様子はありません。まるで列など最初から存在しないかのような振る舞いでした。

「『みんなちゃんと並んでいるのに……』とところどころから小さく抗議の声が上がりますが、おじさんは聞こえないふりをしていて」

 むしろ聞こえているはずなのに、意図的に無視しているような態度でした。舌打ちをし、肩を揺らしながら落ち着きなく足を鳴らすその姿は、周囲にじわじわと不快感と緊張を広げていったそう。

「『早く乗らないと、次になっちゃうだろ! こっちは時間がないんだよ』と苛立ったように言い放ち、平然と乗り込み口に立つおじさんを見て、周囲の空気が一気にピリつきました」

ある女性が空気を変えてくれる

 誰もが不満を抱きながらも、正面から注意することはできない……そんな重苦しい空気が流れ始めたその時。張り詰めた空気の中に、「ちょっと、おじさん!」と、はっきりとした声が響きます。

爽やかな登山が台無し! 誰も止められない“割り込みおじさん”が…女性客の「鋭いひと言」で最後尾へ
女性
「ついさっき私と会話を交わした女性が一歩前に出て、よく通る声でおじさんに呼びかけたんですよ。『そんなに余裕のない人は山に来ない方がいいですよ。見ての通りここは山手線みたいに数分おきにケーブルカーが来るわけではないですし、その待つ時間すら楽しめる人たちが来るところなので』と」

 女性は穏やかな表情のまま、しかし一切ぶれることなく言葉を続けました。


「女性はやわらかい笑顔なのに、言葉は核心を突いて……すごくかっこよかったんですが、一触即発のピリピリ感がすごかったんですよね」

 それを聞いた男性は、「はぁ? 何なんだよお前は」と鋭く睨み返したそう。

耐えきれなくなった男性は……

 女性は一歩も引かずに「みんな、同じように時間を作って来ているの。あなたの時間だけが特別なのはおかしいでしょう?」と続けました。

 おじさんは一瞬ムッとした表情を浮かべましたが、ここでやっと、一斉に男性へと向けられた周囲の視線に気づいたようでした。その無言の圧力に耐えきれなくなったのか、男性の態度に変化が現れました。

「おじさんは、小さく舌打ちしながらですがしぶしぶ列の後方へ戻っていき、結局はきちんと最後尾に並び直したんですよ」

 先ほどまでの強引さが嘘のように、肩を落として列の最後尾へと歩いていくその背中は、どこか小さく見えたそうです。

 その瞬間、張り詰めていた雰囲気がふっと緩み、周囲からは安堵のため息が漏れ、どこかほっとしたような空気が広がっていきました。

「その女性の発言が、自分の心の声を代弁してくれたような感じがして……周りのみんなも笑顔になることができましたし、とてもスッキリできたんですよね」と微笑む未歩さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。
Twitter:@skippop
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