「医者の重要な仕事の一つ、痛みを取り除くこと。そのために医者は勉強し、あらゆる手段を講じる。
しかし、患者の痛みを正確に理解できる医者は一人もいない。痛みとはその人でなければ決してわからないものだから」
重みのある藍沢(山下智久)のナレーションではじまった「コード・ブルー」5話。
山下智久「コード・ブルー」5話。ガッキーキレる「患者に次はない!」
イラスト/Morimori no moRi

コード・ブルー5話「寄り添う人」


「助けて!緋山先生」泣き叫ぶ冴島(比嘉愛未)。
妊娠を機にヘリを降りる決断をした冴島だが、仕事中に突然倒れてしまう。同じ処置室にいた夫の藤川(浅利陽介)が付きそい、緋山(戸田恵梨香)が処置にあたった。

「赤ちゃん……助けてあげられなくてごめん」
子宮頸管無力症による流産だった。涙をこらえながら伝える緋山に、同じく涙をこらえて「まだチャンスはあるから…」と気丈に返す冴島。
つわりでトマトしか食べられなかったはずが、術後はご飯を美味しく食べられると泣き出す。もっと早くヘリを降りれば……気持ちの整理がつかないのに、体は容赦なく現実を突きつける。冴島がご飯を食べる姿には涙が出た。

そんな事情もお構いなしに出動要請が入る翔北救命センター。白石(新垣結衣)と駆けつけた現場で、負傷したレスキュー隊員の倉田(大谷亮介)の処置にあたった名取(有岡大貴)。軽症と判断して別の病院へ搬送するも容体が急変、翔北へ再搬送された。
余裕の表情で戻ってきた名取の目が泳ぐ。俺は悪くないと言わんばかりに、患者を前に立ち去ってしまう。「寄り添う」どころか逃げる名取……。

白石が最も手を焼くフェロー、名取


救命に来た理由も「父親が行けと言ったから」と答えちゃう、やる気のないひねくれ者の名取。
見落としが原因なのに非を認めず、言い訳を並べる。スマホばかり見てる日頃の勤務態度の悪さに加えて、人命に関わることでも「次は頑張るよ」という態度。放置する藍沢に対して、白石は「患者に次はない!」とキレた。
どうして医者になったんだ……。

意識が戻らない患者を気遣うレスキューの倉田。自分も重症なのに、救出できなかったことを悔やんで食事も摂らない。見かねた名取は「自分を責めないでください」と声をかけた。そこでも言い訳を並べるあたりは、自分を正当化する意味も含んでいたのだろう。

「レスキューに条件のいい時なんて、ない。
だから何か起きたとき、言い訳をしようと思えばいくらでもできる」

倉田から耳の痛い言葉が返ってくる。
「起きたことは自分の責任と思える者に命を預けたいと思うものだ。ドクターヘリだってそうでしょ?」
どんどん立場が悪くなる名取。
爆音で音楽を聞きながら一晩葛藤した末、倉田に謝罪した。頭を下げるまでに約15秒、反抗期の中学生のようでむしろ可愛く思えてくる。

ちなみに、名取を演じる有岡(Hey! Say! JUMP)は、深夜ドラマ「孤食ロボット」(日テレ系/毎週月曜24時59分〜)にも出演中で、人間の食事と健康をサポートする小さくてかわいいアンドロイド役。名取の斜に構えた態度、「俺は悪くない」と引きつった顔……一癖ある若手医師を演じた数時間後には、被り物をかぶった無邪気なキャラで登場と、同一人物とは思えない豹変ぶりだ。

見守って寄り添う男、藍沢耕作


5話のテーマは「寄り添う人」。振り返るってみると藍沢の寄り添い方は独特。

普段は、エレベーターピッチとは大げさだけど、エレベーターの中で手短に会話を重ねることが多い。食堂では同期と同じテーブルを囲むことは少ないが、会話ができる距離をキープ。つかず離れずの距離を保つ。


冴島の一件後、エレベーターで一緒になった藤川と藍沢。無言のまま。降りたところで藤川が「俺、あいつ幸せにしてやれるかな」と漏らした。が、藍沢は藤川を見ただけで何も言わずに行ってしまった。気の利いた言葉の一つもかければいいのに。

その晩、つわりを思い出してしまうからと、残ったトマトをやけ食いする藤川に、「俺にもくれ」と藍沢から近づいた。過酷な現場に明るさをもたらす藤川のムードメーカー的な立場を褒めた上で、
「結婚は幸せになるためじゃない、辛い毎日を二人で乗り越えていくために結婚するんだ。俺はそう思う」
口数は少ないし、積極的に人の話を聞くタイプではないので、一見冷酷そうに見える。でも、実は静かに見守っていて、いざとなればぐっと距離を縮めて向き合う。その場しのぎでやり過ごさないし、自分の意見は伝えても押しつけない。白石からは口の悪さを指摘されたけど、根は誠実な藍沢。

幼い頃に両親と離れ、祖母に育てられた藍沢。
誰よりも強く生きてきたけれど、藍沢は辛さを分かち合う人を必要としないのだろうか。
前回、「コード・ブルー」に恋愛は不要ではないかと書いてしまったけれど、キャリアのこと、過酷な現場に患者と同僚、後輩…見守る人が増え続ける今後を思えば、藍沢に寄り添う人が現れてくれたら…と思う。

さて、4話で脳腫瘍の手術を受けた天才ピアニストの奏に、手の痺れが発覚。藍沢は動揺を隠しきれない表情のまま5話を終えた。予告ではフェローたちが現場に閉じ込められてしまうようで、「コード・ブルー」ならではの緊迫した時間になりそう。

(柚月裕実 イラスト/Morimori no moRi
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