本日、決勝戦を迎える第99回全国高校野球選手権大会。NHKでは例年通り、初戦を迎える各校は、生徒によるチーム紹介を放送していた(公式ホームページでも配信中)。

チームの特徴、甲子園での豊富、スローガンなどが部員によって20秒前後で紹介される。飛行機を背景にした日本航空石川や、現オリックス・佐藤世那の弟・令央が奇妙な表情でカメラをにらみ続けていた仙台育英など、学校ごとの文化、部員のキャラがわかる。
だが、「この言葉、この前もどこかの高校が使ってたな…」と思うこともある。
そこで今期の番組から「甲子園チーム紹介 頻出ワードTOP10」を数えてみた。

ルールは以下の通り


・全49校のチーム紹介を文字に起こして査定。
・一度の紹介で何度も同じ言葉を言っても、その都度集計。
・順位の優劣はポイント制で査定。単語は1ポイント。重複するのが難しい長いフレーズは、文節の数を掛け算したポイントとする(例:「りんご」は単語なので1ポイント。「ゴリラとケンカした」と2つの学校が言った場合、2校×2文節【ゴリラとネ、ケンカしたネ】で合計4ポイントとなる)。
・「高校」という言葉は除外

ランキングは以下の通りになった


本日決勝「甲子園チーム紹介頻出ワードTOP10」を数えてみた

10位 切れ目のない打線・バッティング(切れ目のネ ないネ 打線ヨ)12ポイント



今年のチームは1番から9番まで切れ目のない打線と、エースを中心とした粘り勝つ野球が特徴です。(智弁和歌山)

このほか、木更津総合高校、聖光学院、聖心ウルスラ学園、計4校が発言。文節3つ。4×3で合計12ポイント。
木更津総合高校は惜しくも初戦で敗れてしまったものの、4校それぞれが1回戦で5点以上取る試合展開に。このフレーズが出てきたら、本当に切れ目のない打線を見せつけてくるため、試合もすぐには終わらない。

7位 練習 13ポイント


今年のチームは練習前に座禅を組み、気持ちを落ち着かせてから練習に取り組んでいます。(神村学園)

最後の夏に向けてどれだけ練習を重ねてきたかというのも、チーム紹介では頻出の話題。鹿児島代表の神村学園は、紹介者の後ろで野球部員たちが座禅を組んでいた。
そんな神村学園は3回戦で明豊高校と激突。9回に3点差に追いつき、12回表にさらに3点追加。試合に敗れてしまったものの、粘り強い戦いをみせた。
このほかにも、青森山田、津田学園、明徳義塾などが「練習」という言葉を使った。13ポイントで第9位。

7位 3年 13ポイント


甲子園では、サポートにまわってくれている3年生を日本一の控えにします!(広陵高校)

冒頭で紹介者が名乗りを上げる段階で「高校名・学年・役職・名前」を宣言することが多かったため、3年という言葉が上位に。それ以外では、背番号をもらえなかった3年生への思いを紹介するチームも。
ほとんどの3年生は、甲子園の舞台に来られるのはこれで最後。そんな思いがあるからか、チーム紹介でも「3年」という言葉が多くなった。
発言された数13回で第8位。

7位 優勝 13ポイント


甲子園では一戦必勝で優勝目指して頑張ります。鬼軍団てっぺんとるぞ!(大垣日大)

全国の高校球児の夢、甲子園優勝。優勝という言葉を使わずとも、「全国制覇」「日本一」などの類義語がほとんどの学校で使われている。
優勝という言葉を「てっぺん」と表現したのは岐阜県代表・大垣日大。昨年秋から「鬼になる」と宣言した名将・阪口監督のもと、徹底的に鍛えてきた野球部員たちは、自らを「鬼軍団」と称していた。
このほかにも大阪桐蔭、仙台育英、青森山田高校が「優勝」宣言。13ポイントで第7位。

6位 一戦必勝 14ポイント


今年のチームのテーマはイッセンヒッショウです。練習や試合でも笑顔を絶やさずプレーしてきました。(高岡商業)

私たちのチームはどんなときも笑顔で粘り強いプレーが特徴です。甲子園ではチームのスローガンである「イッセンヒッショウ」「全力疾走」を忘れず、つなぐ野球で勝利を目指します。(滝川西)

目の前の一戦一戦を確実に勝っていこうという四字熟語。この熟語の前後に、全国制覇や優勝などの目標が付随するというパターンが多かった。

派生形である「一戦必笑」という言葉も時々耳にすることがあり、「一戦必勝」か「一戦必笑」か、判断に悩むことも。
高岡商業は、一戦必笑という文字の形をした千羽鶴が映像の中に入っていたため、必笑であることが分かる。
滝川西の場合、笑顔を特徴に挙げていたものの、「一戦必勝」という言葉が多くの学校で使われているため、解釈が分かれるところ。

5位 守備からリズム/守りからリズムを作り 21ポイント(守備からヨ リズムをヨ つくり)


今年のチームは守備でリズムを作り、1から9までみんなでつないで点をとる粘り強いチームです。(仙台育英)

その他、明豊、前橋育英、興南高校、北海、二松学舎、坂井高校、7校が発言。文節は3つ。7×3で合計21ポイント。「守備からリズムをつくり〜」のあとには、だいたい攻撃力も抜群であることが語られる。
堅実な守備で相手の攻撃時間を最小限に抑えれば、チームにとってリズムが生まれる。人気バスケマンガ『スラムダンク』で、高頭監督が「桜木のリバウンドが湘北にいいリズムを生み出している」と分析していたのを思い出す。野球の守備然り、バスケットボールのリバウンド然り、完璧にこなすことができれば、試合に勝ちやすくなる。

4位 絶対勝つぞ 22ポイント(絶対ヨ 勝つぞ)


藤枝明誠、日大土浦、山梨学院、その他合計11校が使用したフレーズ。2文節のため、11×2で22ポイント。
NHKが放送するチーム紹介は、最大3つの場面で構成されているパターンが多い。



1,冒頭で簡単なアクションを入れる(トスバッティングをする、ノックの練習をするなど)
2,学校名、役職を名乗った人間がチームの特徴を簡単に紹介
3,画面両脇から大勢の野球部員がなだれ込んでくる
(2だけで終わるチームもある。そういうときは、マネージャーが淡々とチーム紹介して、部員たちが登場しないまま終わる)


「絶対勝つぞ」の文末にある「ぞ」は他者に対しての念押しの意味を持った終助詞。このフレーズが使われると、両サイドから大量の野球部員が笑顔でなだれ込んできて、もみくちゃになって終わるパターンが王道。2から3に場面が切り替わるためのキーワードとして重宝された。

3位 マネージャー 35ポイント


チームの特徴はよく練習し、よく食べることです。私たちの作ったおにぎりを食べて力をつけています。(波佐見)

今大会も多くのマネージャーがチーム紹介の役割を担った。大会初日第一試合に登場した長崎県代表・波佐見高校は、チームの特徴によく食べることを挙げ、手作りのおにぎりを披露した。
片手でお手軽にエネルギー補給できるおにぎりは、練習に多くの時間を割きつつ、体を大きくしたい野球部員には必須のアイテム。3年前の甲子園でも、2年間で2万個のおにぎりを作ったという春日部共栄のマネージャーが話題になっていた。
塩むすびなのか、あるいはなんらかの具材が入っているのか。女子と無縁の帰宅部には知りえることができない情報のため、野球部が羨ましい。

2位 甲子園 56ポイント


私たち三高野球部は「ULTIMATE CLASH 〜相手を徹底的にたたきのめす〜」をスローガンに、つなぎまくる打線と隙のなさすぎる守備で甲子園でも絶対に勝ちます。甲子園でもULTIMATE CLASHするぞ!(三本松)

甲子園での豊富もチーム紹介で使える話題の一つ。
甲子園という言葉の前後には、優勝を目指す旨の言葉や、ベンチに入れずサポートにまわる野球部員に感謝を示す学校も。
そんななか、香川県代表の三本松高校のマネージャーが語った甲子園での豊富は、これまでにないものだった。
「ULTIMATE CLASH」は直訳すると「究極のぶつかり合い」。甲子園では毎試合10安打以上叩きだし、スローガン通りの野球で公立校唯一のベスト8まで進出した。
56回の発言が確認された「甲子園」、56ポイントで第2位。

1位 チーム 65ポイント


チームのモットーは「nothing is impossible」「motivation is everything」この言葉の意味は、不可能はない、やる気があれば何でもできる。甲子園では、この言葉を胸に菅生らしい粘り強い野球で1勝でも多く勝ちたいです。Let’s do it !!(東海大菅生)

チームを紹介するコーナーなので、どうしても増えてくるこのワードが一位になってしまった。
昨日、花咲徳栄と延長戦の末、惜しくも敗れた東海大菅生は、チーム紹介で徹底的に英語を盛り込んでいくスタイルだった。準々決勝ではULTIMET CLASHをチームスローガンに掲げた三本松高校と「チーム紹介に英語を盛り込んだ高校対決」となり、1対9で快勝。
逆に一言も「チーム」という言葉を発することなくチーム紹介をした学校は、おかやま山陽高校、日本文理高校、鳴門渦潮高校、坂井高校、明豊高校、京都成章高校、三本松高校の7校だった。

ランキングすべてのワードを強引に押し込んだチーム紹介をするとこうなる


○○高校野球部3年・マネージャーの△△です。今年のチームは、守備からリズムを作り、攻撃では1番から9番まで切れ目のない打線を意識して練習を重ねてきました。甲子園では、一戦必勝で優勝を目指します。
絶対勝つぞっ!!(両サイドから部員がなだれ込み、歓声を上げて終了終了)


チーム紹介の締めくくりは、大きく分けて3つ


本日決勝「甲子園チーム紹介頻出ワードTOP10」を数えてみた

・カメラ前に部員たちが走り込んできて、ザワザワしたまま終了。
・部員全員で足を止めてポーズと掛け声をしっかり合わせ、静止して終了。
・紹介者の話のみ。

全体のうち、63%の出場校が、ザワザワEND。淡々とチーム紹介を行うことで作りあげてきたリズムが、大勢の野球部員の乱入によって瞬く間に破壊され、混沌とした状態のまま終わる。
カメラアングル、背景の広さ、周囲の静けさ、気配などを注意深く観察しながら、それぞれの学校の紹介がどんなオチになるのか、予想しながら見るのも甲子園を楽しむ一つの手段だ。
(山川悠)
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