連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第21週「ミニスカートの風が吹く」第126回 8月26日(土)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:川上 剛
「ひよっこ」126話「ラ・ラ・ランド」の風も吹いている
イラスト/小西りえこ

126話はこんな話


時子(佐久間由衣)が、日本橋の米屋で働く三男(泉澤祐希)を訊ねると、モーレツに迫るさおり(伊藤沙莉)に、時子の話をしているところで・・・。


なぜか、先週のサブタイトル「さて、問題です」を引きずっている21週。ナレーション(増田明美)が、クイズ口調を続けている。
「ここでクエスチョン」(123回)とか「それは誰でしょう」(126回)とか。
とりわけ126回は、ちょっとクイズバラエティーっぽくしてみたかと思えば、時間を巻き戻してみたり、サスペンス風味にしてみたり、ミュージカル調にしてみたり、土曜日にしては、にぎやかな(いつも土曜日はまったり系だったので)だった。

今日の ヤスハル


「由香だぞ」2連発
「いちいちヤスハルって言うな」
「流しじゃねえよ俺は」
「なんでこのへんの女はみんなこわいんだよ」

新しい強い女たちに振り回される男・ヤスハル。
男は強くあれ、という考えに逆行する、ある意味新しい優しい男というジャンルを開拓していると
いえよう。
ぶつぶつ言いながら、軽んじられながらも、いつの間にか、いろんな曲をマスターしていてりっぱである。

片思い


「ここしかない時」に来た時子。三男の究極の想いを聞いてしまう。
「おれに惚れられてるってことはあいつにとって力になるんです。
必要なんです。だからね、おれは時子が夢を叶えるまで片思いしてなきゃいけないんです。そういう恋なんです。自分のこと考えるのはその後でいいんです」
切なすぎる! 自分のことは後まわしなところは、みね子と似ている。

それを聞いたからか、時子は、ツイッギーそっくりコンテストに応募する決意をする。
そうそう、「ひよっこ」4人目のミニスカは時子であった。
すらっとしていて、かなりお似合いです。

一関の人間のカラダは餅でできてる


共同炊事場で、↑などと言いながら、あんころ餅や、大根おろし餅らしきものをつくる早苗(シシド・カフカ)。
富(白石加代子)が、最後は食べることしか楽しみがなくなると人生を語る。差し入れ、お土産をせしめまくる富は晩年ということなんだろうけれど、白石加代子はエネルギーがありあまって見えて、食べること以外楽しみがない孤独な老人にはあまり見えないが(褒めています)、次週予告のラストカットで「桜は散ったわ」の台詞に圧倒的な叙情を見せて、すべてをかっさらった感じだった。島谷(竹内涼真)も出てくるみたいなのに。

ミュージカル調


感極まったさおりが、店の前に飛び出て歌い踊るミュージカル風味の演出。この手の演出は、かつて「てるてる家族」(03年)で全編に渡って繰り広げられたので、朝ドラファンにとっては珍しくはないのだけれど、7月期の連続ドラマで、2作もミュージカル風味を取り入れた作品があることは注目に値する。
「ウチの夫は仕事ができない」(日本テレビ土曜よる10時)と「あいの結婚相談所」(テレビ朝日金曜よる11時)が、劇中で突然ミュージカルのようにシーンが出てくる。おそらく、大ヒットした映画「ラ・ラ・ランド」に背中を押されてのことであろう。
かつては、歌舞伎などと並び、富裕層の楽しみのようなミュージカル(チケットが高い)は、タモリが、突然歌い出す不自然さを批判し、支持を得ていたが、反転して、そこが面白いものとして一般受けするようになってきた。時代は変わる。「ひよっこ」でミニスカートの風が吹いているのと同じく、ドラマ界にミュージカルの風が吹いている。

「てるてる家族」のミュージカルドラマについてのあれこれは、拙著「みんなの朝ドラ」で脚本家の大森寿美男インタビューで語られています。

(木俣冬)