筆者もまたビジネスの場においては短所と言える“変な話し方”に悩む社会人の1人で、アニメ声かつ小声、口調がふにゃふにゃという三重苦を背負っています……。第一印象を良くするためにボイトレを受けるという話自体は聞きますが、実際どんなことを学ぶの? 音楽教室「シアーミュージック」には話し方コースもあるということで、体験してきました!

“変な話し方”の原因を即看破
話し方コースの講師陣には、ボーカル&ボイストレーニングコースと兼任している現役ミュージシャンといった、声の専門家たちがそろっています。今回指導していただく望月優さんもライブ活動をおこなっているそう。45分間のレッスン中、最初は「話し方にどんな悩みを抱えているのか?」についてのヒアリングです。
とりあえず筆者の話し方を聞いてみてください。話し方がハキハキというより、なんだかねちゃねちゃしている……? 学生時代は、クラス替えのたびに私の話し方のモノマネがうっすら流行りました。何かがおかしいけれど、具体的にどうおかしいのかわからない。先生、この原因わかりますか!
……望月先生はあっさりと「口角が横に来ちゃっていますね」と診断したのでした。なんでも口角が横位置からあまり動かないために母音の区別が不明瞭になっているそうです。
「女性には結構多いんです。笑顔でいようとして、唇が横に広がった状態のまま喋っちゃうんですよ」
私の26年間の悩みの原因があっさり解明されました。また、適切な息の吐き方を身に付ければ、声がこもったような感じも改善されるそうです。ここまで5分ほど。一瞬で分析するなんて、声のプロ、すごすぎる!
「なぜこれをするか?」から教えてもらえるレッスン

問題点がわかった後は、実際にトレーニングを進めていきます。まず「腹式呼吸とは何か?」を習った後、ロウソクを吹き消すのをイメージして息を吐いてみて、お腹で呼吸したときの横隔膜(胃より上、胸の中心のちょっと下。腹式呼吸をしたときに動く場所ですよ!)の動き方を確認します。それから先生のピアノに合わせて「あえいうえおあお~」と声を出していくアレをやり……。
ここまで聞いて、「意外と特別なことはしないんだな」と拍子抜けした人もいるかもしれません。確かに、これらのことは音楽の授業で昔やった経験があるという人は多いでしょう。ですが、当時「なぜこれをするか」までは理解できていたでしょうか? 話し方教室では、「このとき息がどのように口から出ているかを把握して」のように、その練習をする意味から教えてもらえます。さらに「もう少し横隔膜を意識してみてください」などそのつどアドバイスもしてもらえる! そして、ちゃんとできたら褒められる! 嬉しい!
壁一面が鏡になっているので、そちらで口の動きも確認できるのですが、確かに私は「あ」「え」「い」のときの唇に違いがほとんどないな……。あと息も口の中だけでロスしていて、きちんと外に出せていなかった……。正解を教えられると、初めて問題を自覚できるようになります。“話す”って本当は難しいことなんですね。
中身が詰まっているので、45分の授業はあっという間。今回はピアノを使ったレッスン中心でしたが、コースの中で、こういった正しい息の吐き方や唇の動かし方を日常会話の中でスムーズにできるようになる練習も進めていくそうです。あ、今回のレッスンはピアノを使いましたが、あくまで“話し方”の授業なので、歌が苦手でも安心して大丈夫ですよ!
シアーミュージックは全国42カ所にスクールがあり、体験レッスンを無料で受講できます。
ボイトレ受けて「ふにゃふにゃ感」激減
実際にボイトレを受けてみて何が変わったのか? とりあえずレッスン後の音声も聞いてみてください。一度レッスンを受けただけなので、少々ぎこちないところはありますが、それでも当初のふにゃふにゃ感が激減したのは感じてもらえるかと思います。そのため初対面の相手との挨拶が、前より怖くなくなりました。
ところで筆者は実はずっとボイストレーニングというものに興味を抱いていました。それは、著述家・湯山玲子氏によるエッセイ『四十路越え!』の中の、“モテ”をめぐるこんなエピソードを読んだから。湯山氏が知るある女性は、一流企業の社長からもプロポーズされるほどべらぼうにモテるのですが、服装は山ガール的でいわゆるモテコーディネートからは外れるものだそう。しかし、彼女は声がとにかく魅力的だった――。その女性を例に湯山氏が「声の出し方も含めた会話術」を学ぶことを勧めるのを読んで、私は「“声”は人に好印象を与える上で非常に大事な要素らしい」としみじみ考えたのでした。
「シアーミュージック」の話し方コースの受講生には、営業やプレゼンの機会が多い会社員、就活生なども多いそうで、彼らはまさに“コミュニケーションにおいて声で好印象を与える”ことを目指しています。確かに声フェチとまでは行かなくとも、誰しも好きなタイプの声・話し方というのは、ひとつやふたつ心当たりがあるでしょう。そして、その逆も……。
「わざわざボイトレに通うなんて大げさ」と感じるかもしれませんが、考えてみれば服や髪にはお金を使うのに、同じくらい第一印象に大きく関係する“声”にはまったく注意を払わないというのも不思議な話かも。もう少し選択肢としてメジャーになってもいいのになー。
(文/原田イチボ@HEW)