“鉄の爪”フリッツ・フォン・エリック。巨大な手のひらが生み出す握力は120kgを超える(一説には200kgとも)といわれ、その驚異の握力からなる必殺技「アイアンクロー」を武器にトップに君臨したプロレス界のレジェンドだ。
オールドファンには、ジャイアント馬場との名勝負が思い起こされるのではないか。そして同時に、その栄光の陰にある悲劇も思い起こさずにはいられないのである……。
フリッツは、地元テキサス州ダラスにプロレス団体を設立。同団体のオーナー兼エースとして活躍し、引退後もプロモーターとして一時代を築いている。
ダラスではホテル、スーパー、そして銀行まで経営していたというから、まさにアメリカン・ドリームを体現した成功者だ。
子宝にも恵まれ6人の息子が誕生したフリッツ。自分と同じようにプロレスの世界チャンピオンに育て上げる夢を抱いていたが、長男が6歳で事故死(誤って高圧線に触れての感電死)という不幸に見舞われてしまう。
残った5人の息子達は皆プロレスラーになったのだが、本当の悲劇はこれからだった……。
84年2月、三男のデビッドが全日本プロレス来日時に内臓疾患により、25歳の若さで急死してしまう。素質も体格も兄弟の中でもっとも恵まれており、当時の世界最高峰のベルト「NWA世界ヘビー級王座」目前とされた逸材の突然死は、新聞やテレビでも報道されるほどに、ショッキングでセンセーショナルなニュースだった。
同年5月に行われたデビッドの追悼興行では、四男のケリーがその無念を晴らすがごとくに奮闘。見事にNWA世界ヘビー級王座を奪取し、エリック一家の悲願を達成している。
しかし、スター街道まっしぐらかと思われた矢先の86年6月、オートバイ事故を起こし、右足首切断の重症を負って再起不能に追い込まれてしまうのだから、あまりにも運がない……。
翌87年4月には、五男マイクが23歳の若さで服薬自殺。
さらに91年9月、六男のクリスがピストル自殺を図ってしまう。兄弟でもっとも華奢な体格であり、持病の喘息にも苦しめられていたクリスはステロイド(筋肉増強剤)を常用していた。その副作用により不安定な精神状態に、そして……だったのだろうか。まだ21歳。あまりにも早すぎる最期である。
右足首を失ったケリーは、事故の翌年には義足による奇跡のカムバック(当時は義足であることを隠していた)を果たし、亡くなった兄弟の分までカバーするほどの大活躍を見せた。
円盤投げでオリンピック候補にまでなったアスリートであり、スターとしての風格を兼ね備えていたケリーは、プロレスラーになった5人の兄弟の中でもっとも成功を収めたのだが……。
93年2月に33歳でピストル自殺をしてしまった。右足首を失った事故以降、鎮痛剤としてのコカインが手放せなかったという。
華やかなリング上とは違い、プライベートでは税金未納、コカイン等の違法薬物使用、離婚問題など、数多くのトラブルを抱える中での幕引きだった。
こうして、次男のケビンを除きプロレスラーとなった4人の兄弟が10年の内に死亡。エリック一族は「呪われたファミリー」として語り継がれて行くことになる。
果たして、本当に「呪い」なのだろうか？
実はデビッドの内臓疾患もドラッグが引き金といわれている。となると、この4人の死はすべてドラッグが原因となる。しかも、それには父フリッツが関わっていたという説が根強いのだ。
フリッツは息子たちをプロレスラーとして大成させるために、小さい頃からアマレス、アメフト、ボクシング、陸上競技などのスポーツを強制していた。そして早急に結果を求めるあまり、自らステロイドを進めていたとされる。特に体格的に恵まれなかった末っ子のクリスにいたっては、10代になる前の段階からステロイドを打っていたというから驚きだ。
ステロイドの常用がドラッグ中毒の入り口となったことは想像に難くない。フリッツは、息子たちのドラッグ絡みの不祥事の数々を地元の名士ゆえにもみ消して来たともいわれている。
フリッツは、自身の夢を叶えるために悪魔の薬に手を出したのだろうか……。そして息子たちもまた偉大な父を超えねばならないプレッシャーから、それを受け入れたのだろうか……。
5人の息子を失ったフリッツは、プロレス事業から撤退。妻とも別れ、97年に68歳でその生涯を閉じた。
プロレスに人生を捧げたファミリーよ、安らかに……。
※文中の画像はamazonよりプロレス 最強列伝 プロレスの名門エリック一家 壮絶な大死闘! RAX-112 [DVD]
オールドファンには、ジャイアント馬場との名勝負が思い起こされるのではないか。そして同時に、その栄光の陰にある悲劇も思い起こさずにはいられないのである……。
街を牛耳る存在にまでなったフリッツ・フォン・エリックだったが……
フリッツは、地元テキサス州ダラスにプロレス団体を設立。同団体のオーナー兼エースとして活躍し、引退後もプロモーターとして一時代を築いている。
ダラスではホテル、スーパー、そして銀行まで経営していたというから、まさにアメリカン・ドリームを体現した成功者だ。
子宝にも恵まれ6人の息子が誕生したフリッツ。自分と同じようにプロレスの世界チャンピオンに育て上げる夢を抱いていたが、長男が6歳で事故死(誤って高圧線に触れての感電死)という不幸に見舞われてしまう。
残った5人の息子達は皆プロレスラーになったのだが、本当の悲劇はこれからだった……。
急死、再起不能、自殺……不幸に見舞われ続けるフリッツの息子たち
84年2月、三男のデビッドが全日本プロレス来日時に内臓疾患により、25歳の若さで急死してしまう。素質も体格も兄弟の中でもっとも恵まれており、当時の世界最高峰のベルト「NWA世界ヘビー級王座」目前とされた逸材の突然死は、新聞やテレビでも報道されるほどに、ショッキングでセンセーショナルなニュースだった。
同年5月に行われたデビッドの追悼興行では、四男のケリーがその無念を晴らすがごとくに奮闘。見事にNWA世界ヘビー級王座を奪取し、エリック一家の悲願を達成している。
しかし、スター街道まっしぐらかと思われた矢先の86年6月、オートバイ事故を起こし、右足首切断の重症を負って再起不能に追い込まれてしまうのだから、あまりにも運がない……。
翌87年4月には、五男マイクが23歳の若さで服薬自殺。
リング上で負った傷が元で、毒素性ショック症候群に悩まされており、その苦しみから逃れるための精神安定剤としてドラッグを過剰摂取したことが原因だった。
さらに91年9月、六男のクリスがピストル自殺を図ってしまう。兄弟でもっとも華奢な体格であり、持病の喘息にも苦しめられていたクリスはステロイド(筋肉増強剤)を常用していた。その副作用により不安定な精神状態に、そして……だったのだろうか。まだ21歳。あまりにも早すぎる最期である。
義足で復活したケリーが迎えた悲劇的な結末
右足首を失ったケリーは、事故の翌年には義足による奇跡のカムバック(当時は義足であることを隠していた)を果たし、亡くなった兄弟の分までカバーするほどの大活躍を見せた。
円盤投げでオリンピック候補にまでなったアスリートであり、スターとしての風格を兼ね備えていたケリーは、プロレスラーになった5人の兄弟の中でもっとも成功を収めたのだが……。
93年2月に33歳でピストル自殺をしてしまった。右足首を失った事故以降、鎮痛剤としてのコカインが手放せなかったという。
華やかなリング上とは違い、プライベートでは税金未納、コカイン等の違法薬物使用、離婚問題など、数多くのトラブルを抱える中での幕引きだった。
度重なる不幸は「呪い」？それとも…？
こうして、次男のケビンを除きプロレスラーとなった4人の兄弟が10年の内に死亡。エリック一族は「呪われたファミリー」として語り継がれて行くことになる。
果たして、本当に「呪い」なのだろうか？
実はデビッドの内臓疾患もドラッグが引き金といわれている。となると、この4人の死はすべてドラッグが原因となる。しかも、それには父フリッツが関わっていたという説が根強いのだ。
フリッツは息子たちをプロレスラーとして大成させるために、小さい頃からアマレス、アメフト、ボクシング、陸上競技などのスポーツを強制していた。そして早急に結果を求めるあまり、自らステロイドを進めていたとされる。特に体格的に恵まれなかった末っ子のクリスにいたっては、10代になる前の段階からステロイドを打っていたというから驚きだ。
ステロイドの常用がドラッグ中毒の入り口となったことは想像に難くない。フリッツは、息子たちのドラッグ絡みの不祥事の数々を地元の名士ゆえにもみ消して来たともいわれている。
フリッツは、自身の夢を叶えるために悪魔の薬に手を出したのだろうか……。そして息子たちもまた偉大な父を超えねばならないプレッシャーから、それを受け入れたのだろうか……。
5人の息子を失ったフリッツは、プロレス事業から撤退。妻とも別れ、97年に68歳でその生涯を閉じた。
プロレスに人生を捧げたファミリーよ、安らかに……。
※文中の画像はamazonよりプロレス 最強列伝 プロレスの名門エリック一家 壮絶な大死闘! RAX-112 [DVD]
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