
7話あらすじ
男たちを踏み台に、銀座で一番大きなクラブ「ルダン」を手に入れかけた原口元子(武井咲)。しかし、長谷川庄治(伊東四朗)との約束の期日までに契約金の残金を支払えなくなってしまう。そのせいで、元子はルダンだけでなく自分の店「カルネ」までも奪い取られそうになる。
カルネには新しい支配人とママとして村井亨(滝藤賢一)と山田波子(仲里依紗)が訪れ、元子に屈辱を与えた。黒革の手帖とお金、お店のすべてを奪われた元子は、安島富夫(江口洋介)しか頼る人がいなくなっていた。
筋を通させたい大人、尊厳を守りたいゆとり世代
叡子「たまには振り込んでくださいよ」
長谷川「そうはいかん、真剣勝負なんだから。お、来たな。これ、どうしてくれますかね」
元子が働いていたクラブ「燭台」のママ・岩村叡子(真矢ミキ)と麻雀を打つ長谷川。
勝負をかけるため捨てた牌は、鳥の絵が描かれたイーソウ牌。鳥を捨て、勝負をかける。元子に「所詮、おれたちは飼い主に運命を握られた籠の中の鳥」と話した安島の姿が思い出される。
今作では伊東四朗が演じている長谷川会長役。2004年の米倉涼子版では、津川雅彦が演じていた。
津川雅彦が演じる長谷川会長は、元子に対して男女の関係を求め続けた。クラブ「ロダン」(武井版では「ルダン」)を取り戻そうとする元子に、店も自由に使わせるし、街を思うままに動かせる銀座の女王にしてやるから、おれの女になれと持ち掛ける。同衾のための布団まで用意して。
米倉版元子は、男に依存した母を嫌い、男たちの「おれの女になれ」という欲望を突っぱね続ける。「女として支配される自分」との戦いでもあった。
対して、伊東四朗が演じる長谷川会長は、元子に「女」を求めない。伊東版の長谷川が元子から早々に黒革の手帖とお金、そして店を取り上げたのは、おれの女にならなかったからではない。ビジネスとして、筋の通らないことをしたからだ。
元子にとっては元上司である村井と叡子も、元子が悪いことをしたから叱ったのではない。それ以上に、敬うべき先輩に対して筋を通していないという点に怒っている。
だが、それ以前に村井は元子を「使い捨てのロボット」として扱い、叡子は「お子ちゃま」と呼んでからかった。
武井版元子が戦っているのは、女としての自分ではない。元子を若輩者だと馬鹿にし、尊厳を傷つけた大人たちだ。
脚本・羽原大介による「黒革のプリキュア」

元子「夢だったんです。この銀座に、自分の居場所を作りたいんです」
安島「信じて諦めなければ、夢は必ず叶う」
武井版『黒革の手帖』は、クライマックスに向け「銀座の男と女の愛憎模様」がシンプルに削ぎ落されてゆくのが面白い。
安島のこどもを妊娠していた元子。米倉版の元子は、流産をして初めて妊娠に気が付く。武井版の元子は、検査薬を使い自分の目で妊娠を確認する。結果を話すチャンスがあったのに、安島には伝えずビジネスの話をすることを自らの意思で選ぶ。
今作の脚本は、映画『フラガール』や映画『ふたりはプリキュア Max Heart』をはじめとしたプリキュアシリーズで「女性の共闘」を描いて来た羽原大介によるもの。女性が多く登場するので、放送前は「もしかして元子と女性の誰かが“黒革のプリキュア”として男たちと対峙していくのでは」という予想もしていた。
しかし『黒革の手帖』で共闘していくのは女性たちではなく、原作通り元子と安島だ。男女として愛し合ってはいるけれど、ベースに人間同士の共鳴と信頼がある。
夢と信頼で手を取り合い、長谷川という巨悪に立ち向かっていく元子と安島。こう書くと、やっぱりちょっとプリキュアっぽい。最終話で明かされるであろう“必殺技”が楽しみだ。
最終話は今夜9時から
ところで、石鹸の広告での「諦めないで!」というセリフのイメージが世間に強く定着していた真矢ミキ。銀座の先輩ママとして、厳しい口調で元子を叱る。
叡子「ルールを破った女に居場所はない。潔く諦めて、田舎にかえって結婚してこどもでも産んで、地味で退屈な幸せでも探したら?」
ここで武井咲に諦めを強く促す側に立たされたのは、意図的なのでしょうか。気づいたとき、ちょっと笑ってしまった。
『黒革の手帖』第7話は、テレ朝動画やTVerで9月14日(木)のよる8時まで無料視聴できる。また、Amazonビデオなどで有料配信中だ。
9月14日放送予定の最終話。
*『黒革の手帖』最終回レビューは、明日9/16アップ予定。
(むらたえりか)
木曜ドラマ『黒革の手帖』(テレビ朝日系)
毎週木曜 よる9時
出演:武井咲、江口洋介、仲里依紗、高畑淳子、奥田瑛二、高嶋政伸、真矢ミキ、伊東四朗ほか
原作:松本清張『黒革の手帖』(新潮文庫刊)
脚本:羽原大介
監督:本橋圭太、片山修
ゼネラルプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:中川慎子(テレビ朝日)、菊池誠(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)