
炒り豆女子と毛布女子
先週放送された第7話は、主人公の売れない作詞家・碌さん(ユースケ・サンタマリア)と、碌さんの家にお手伝いさんとして来ていた元デパートガールの鏡子(門脇麦)が、ようやくお互いの気持ちに気づくというエピソード。
悦ちゃん(平尾菜々花)になつかれながら、通いのお手伝いさんをしているうちに、碌さんと徐々に気持ちを通わせる鏡子。部屋で思わず居眠りしてしまうのは、それだけ心を許している証拠だろう。毛布をかけてあげる碌さんが優しい。
碌さんもすっかり鏡子に惹かれていた。春奴(安藤玉恵)に語る「毛布のような人だ」というセリフがおかしい。
「布団のように押し付けがましくもなく、でも、ないと物足りねぇ。どうにも気になって、つい目で追っちまう」
このセリフを聞いて、土曜時代ドラマの前枠『みをつくし料理帖』で小松原(森山未來)が澪(黒木華)のことを「炒り豆のよう」と例えていたことを思い出した人も多いじゃないだろうか。あっちは炒り豆でこっちは毛布。どちらも庶民派だ。
碌さんが鏡子に惹かれるポイントになったのが、漬物をおいしそうに食べる、ぬかみそをかき回す、洗濯物畳みと、どれも非常に庶民的だったのだが、これは碌さんが大衆を相手にしている作詞家であることも関係しているだろう。
無表情にバリエーションがある門脇麦
しかし、鏡子は父親(西村まさ彦)が勝手に進める縁談をどうしても断りきれなかった。父親が自分の幸せをよく考えてくれているのはわかっていたし、戦前というのはそうやって父親が勝手に縁談を決めるような時代でもあった。
ついに縁談を了承してしまう鏡子。大喜びをする父親を見つめる無表情ぶりがせつない。そもそも鏡子は普段から感情を抑えているので、無表情にも、楽しそうな無表情、悲しそうな無表情などのバリエーションがある。それを見事に演じ分ける門脇麦の表現力がすごい。でも、感情を抑えていたからこそ、なかなか碌さんとの距離が縮まらなかったんだよね……。
鏡子から結婚すると告げられた碌さんは衝撃を受けるが、男の意地で「おめでとうございます!」と祝福する。碌さんはいかに鏡子さんが良いお嫁さんになるかを語るのだが、ここでの鏡子さんの無表情からも、さまざまな感情が読み取れる。無表情なのに雄弁なのだ。「本当にかまいませんか? 私がいなくなっても」と震える声で絞り出す鏡子に、碌さんは「俺も寂しい」とようやく本音を漏らす。だけどやっぱり碌さんには引き止められない。
「お幸せに!」「……ありがとうございます」
別れ際のすれ違い(どちらかが振り向くと、どちらかは別のほうを向いている)も、よくあるパターンだけど、やっぱりせつない。
しかし、みすみす鏡子を手放してしまった碌さんに、悦ちゃんは激怒。鏡子に「私のママになって」というめちゃくちゃストレートな文面のハガキを送る。父親に決められた縁談の相手に嫌悪感があり、碌さんと悦ちゃんが恋しい鏡子は、悦ちゃんからのハガキを見て感情が大きく揺さぶられる。いつも感情を抑えて「誰かが決めた物語」を生きようとしていた鏡子の表情が、見る見るうちに崩れていくのだ。そして結納前日、ついに鏡子は家出! そして碌さんの家へ!
今夜いよいよ最終回。パーティー会場に集結する碌さん! 悦ちゃん! 鏡子! カオル! その他の人々! 悦ちゃんにオリジナル「パパママソング」を歌わせようとする夢月(岡本健一)も黙ってないぞ。大団円(たぶん)はもう目の前! 今夜6時5分から。
(大山くまお)