
プラネタリウムといえば、投影機から発した光をドーム状の天井の内側に設置された球面のスクリーンに映し出すことで星の像やその動きを再現することができる施設です。
そんなプラネタリウム、東京・立石にちょっと変わったプラネタリウムがあるのをご存知でしょうか。

というわけで、ちょっと変わったプラネタリウムに行くために京成線・立石駅へやってまいりました。今回訪問する「プラネターリアム銀河座」は駅からは徒歩5分ほどの場所にあります。
真宗大谷派・證願寺

こちらが境内にプラネタリウムを併設するお寺、證願寺(しょうがんじ)です。壁のクジラに猫の絵……一見して「ただ者じゃない」オーラを放つお寺です。

まず目を引くのがこちらの壁の猫の絵。真ん中に描かれているのは遣唐使船。先頭にはお坊さんが巻物を持って立っています。仏典を中国から持ってくるときにネズミが食べてしまうのを避けるために船に猫を何十匹も入れていたという歴史から、猫への感謝の意を表している絵なんだそうです。

境内に入ると目に飛び込んでくるのが、ライオン……それに恐竜!?

このライオンと恐竜はお寺を守る、狛犬の役割をしています。ライオンはまだわかる……狛犬はもともとオリエントの都市の壁にあしらわれたライオンの装飾が起源だといわれていますし……でも恐竜……恐竜?

この恐竜、めちゃくちゃ迫力あります。それもそのはず。こちらの恐竜は、プラネタリウム館長(兼住職)が閉館した恐竜展示館から譲り受けたもので、スティラコサウルスという草食の恐竜なんだそうです。

こちらのお寺自体の歴史は古く、1600年に上杉民部之輔の三男・證願が湯島に創建したものです(その後、大火や関東大震災の区画整理などで現在の地に移転しました)。お寺自体も本堂に読経中用として電光掲示板による「お経の同時通訳機」を設置していたりなどユニークです。

そちらも実際に見せてもらいましたが伝統的なものと技術の組み合わせが最高にかっこいいこと……。お経って、「なんだかわからないけどありがたいもの」という印象があるので、それが「なんだかわかるありがたいもの」に変わるってちょっとすごいことだと思います。なお、本堂は普段は開いていないので、拝観したい場合は住職にご相談ください。
お寺のプラネタリウム

そして本日のお目当てであるプラネタリウムです! プラネタリウムは毎月第1・第3土曜日に上映を行っており、予約制です(予約は「プラネターリアム銀河座」のブログから可能)。上映時間は15:00~16:00となっていますが、人数が集まったら早めに始めることが多いそうなので、早めに来た方がよさそうです。

上映を待ってる間にはプラネタリウム館長(兼住職)によるマジックを見せてもらいました。プレミアム・シートの待合室のみですがマジックが見られることがあります。マジシャンでもある館長のマジックも300個ぐらいはレパートリーがあり、9歳から始めたものだそう。ちなみにそれ以外に声楽家としての顔もお持ちです。

伺った9月のテーマは「菊池寛の『形』とプラネタリウム」というものでした。小説家の菊池寛と宇宙、一見関係なさそうですが、興味を引く内容で小説の話から宇宙へ話を導入していくのでのめり込むことができました。プラネタリウムの解説は、男女ふたりによる掛け合い漫才のような調子で進みます。これにも館長の飽きないように楽しく聞いてほしいという思いがあり、例えるなら深夜ラジオを聞いているようです。

使用している投影機は日本で唯一のペンタックス製、コスモスター0号機(試作品をペンタックスから譲り受けたもの)を使っています。星空は10万年ぐらい先まで映せるとのこと。画像の女性は銀河座大使の橘ひろなさんです。

プラネタリウムは60席置ける広さに25席という席数なので、ひとつひとつの椅子のスペースが広くゆったり快適に見ることができます。最高ですね!
今回もテーマが小説家の菊池寛で、過去には「老化」や「お風呂」などを取り上げた例もあるそう。こんなプラネタリウム他では聞いたことがありません……! しかもテーマは毎月変わるという。どうしてそんなにユニークな発想ができるんでしょうか。
もともとは檀家の人に話を聞いてもらうために始めたプラネタリウム

春日さんは證願寺第17代住職であり、声楽家・アマチュア天文家・奇術師としても活躍されています。
――そもそも、お寺にプラネタリウムを作ろうと思ったきっかけって何だったんでしょうか。
春日さん「もともとは仏教の話を檀家の人に聞いてもらうためでした。本堂でお坊さんの格好して僕が話すと、儀式的になってしまう。それで、意識を変えるために環境を変えるしかないと思い始めました。それで自分の知っている得意な分野で話を聞いてもらう手段としてプラネタリウムをはじめました」
――なるほど。春日さんはプラネタリウム館長、声楽家、住職、奇術家……といろいろな肩書をお持ちですけど、どれが本業とかはあるのでしょうか。
春日さん「それぞれ独立してやっていまして、それをやっている時がそれぞれ本業みたいな感じですね。自分の肩書を全部言うと逆に怪しくなってしまうので、名刺もそれぞれプラネタリウムの館長用、声楽家用など分けています。声楽家としては2017年10月にはテノールとしてユネスコ世界遺産無形文化財の演奏会に招待出演が決まりました」
――すごい! すべての分野で成果が出ているんですね! 趣味でやっていたこと、得意なことがそれぞれ形になっている感じですね。ちなみにこの中で一番経歴が長いのはどちらなのでしょうか。
春日さん「4歳で読経をはじめ、漢字は読めなかったけど形で音を覚えていました。天文への興味は5歳、マジックは9歳からです。そして中学で音楽に出会い、それらは全て仕事に繋がっています。僕自身がずっと同じことをしていると飽きちゃうんですよね。それで、いろんなことをやってリフレッシュする。今は自分がどんどん老化してできないことがでてくるのにも興味がある。できなくなったら仕事辞めたらいいだけですから。なので今はやり残したことが無いように活動しています」

――老化すらも遊んでしまうんですね。発想がユニークですし、毎月のテーマもその豊かな発想力で考えているんですね。
春日さん「僕自身の感性が10歳の子供のようなんですよね。なので、「その話は本当かな?」という本質がすぐに気になってしまうんですよ。その感性をフルに使ってテーマなども考えていますね」
――ありがとうございました。
全国でも珍しいお寺に併設されているプラネタリウムを取材したら、子どもの感性を持ち続ける館長さんの生きざまに触れることができました。何度行っても楽しむことができそうな、ユニークな発想に豊富な知識で毎月さまざまなテーマで展開する天体の解説は必見です!
取材協力
プラネターリアム銀河座
住所:〒124-0012東京都葛飾区立石7-11-30 證願寺(しょうがんじ)内
電話:03-3696-1170(留守番)
投影日時:第1・第3土曜日 15:00~16:00
料金:大人1000円 プレミアム席1500円 すべて中学生以上の入館
※プレミアム席…見やすい最後部の6席限定特別席。イタリアン・コーヒーが付く特別待合室に早めに集合して、運が良ければマジックが見られるかもしれません。
交通:京成線・立石駅より徒歩5分
京成線・青砥(アオト)駅より徒歩8分(かつしかシンフォニーヒルズ近く)
URL:http://www.gingaza.jp/index.html(公式サイト)
http://gingaza.blog112.fc2.com/(更新頻度高め。予約などはこちらから)