一言でいうと、『ちびまる子ちゃん』の主人公・まる子とクラスメート・花輪クンのカップリングのこと。
平民と超ボンボン、お転婆娘と気障男子という水と油のような2人。そのキャラ設定を活かした恋愛系のショートストーリーやイラストがtwitter上に多数出回っており、これが驚くほどの人気を博しているというのです。
この調子で行ったら、『魔女の宅急便』『アルプスの少女ハイジ』と同様、カップヌードルのテレビCMに使われる日も近いかもしれません。
マルチな才能を発揮するさくらももこ
さて、そんなちびまる子ちゃんの原作者といえば、ご存じさくらももこですが、彼女の幼少期の夢は「青島幸男みたいに偉くなりたい。歌を作りたい」だったとのこと。
青島幸男といえば、放送作家に作詞家、役者、直木賞作家、はては東京都知事にまで成りおおせた傑物中の傑物。
さすがにそんな"超マルチタレント"と比べては分が悪いものの、さくらももこも漫画にエッセイ、ゲームのキャラデザ、作詞もつとめるハイパーメディアクリエイターですし、過去には『さくらももこランド・谷口六三商店』というドラマの脚本も担当しています。
アニメは高視聴率、作詞した曲はミリオンセラー
『さくらももこランド・谷口六三商店』……。タイトルに脚本家の名前が付くなんて、どれほど当時の彼女に勢いがあったのか、如実に示しているといえるでしょう。
実際、1990年代前半におけるさくらももこの活躍ぶりは、すさまじいものでした。
1990年1月7日よりスタートしたアニメ『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ系)は、最高視聴率驚異の39.9%。その主題歌で自ら作詞をつとめた『おどるポンポコリン』は、オリコン年間1位で累計売上枚数164.4万枚(オリコン調べ)。1991年に出版した初エッセイ『もものかんづめ』は209万部の大ベストセラー……。
しかも当時のさくらはまだ24~25歳でした。
加勢大周と鷲尾いさ子が共演した『谷口六三商店』
そんな時代の寵児だったさくらももこが脚本を任せられた『谷口六三商店』は、TBS系で1993年4月13日~6月29日に放送された連続テレビドラマです。
舞台は、昭和中期~後期ごろの東京都文京区根津の下町。この地で100年以上にわたり煎餅屋を営む「谷口家」は、谷口六三(泉谷しげる)とその妻・ヨシ(もたいまさこ)、息子の康夫(西岡徳馬)と妻の初枝(市毛良枝)、さらにその子供たちが暮らす3世帯住宅。
ある時、康夫の長男・真一(加勢大周)がフィアンセを連れてくることに。それがインド人だというから、さぁ大変。真一を跡取りにと考えていた六三や極度のブラコンの妹・晴子(相楽晴子)などが難色を示すも、インド人妻・サビィ・プラカーシュは、日本の生活に馴染もうと必死に努力するのでした……。
注目は、れっきとした日本人なのにインド人妻役を演じた鷲尾いさ子とその父親役の荒井注。どちらも本物のインド人に見えていい味出していました。
雰囲気は『寺内貫太郎一家』に似ていた
『時間ですよ』もしくは『寺内貫太郎一家』をベースに、『ちびまる子ちゃん』のエッセンスを存分にまぶしたようなこのドラマは、ナレーションでツッコミを入れるなど漫画風のノリを随所に織り込んだ、演出的にはなかなか斬新な作品でした。
しかし、内容としてはやや新鮮味に欠けていたためか、目覚ましい評価を得るまでには至らず、再放送・DVDソフト化もされていません。「脚本家・さくらももこ」もこれ以降、活動を停止しています。
とはいえ、もう1本くらい彼女の書く新作ドラマを観てみたいものです。
(こじへい)
※文中の画像はamazonよりひとりずもう (下) (集英社文庫 さ 34-13)