「山好き」にはなぜインテリが多いのか
秋の行楽シーズン真っただ中。山はいかがですか?(画像はイメージ)

奥多摩・御岳方面に向かう電車の中で、ちょっと気になることがあった。

車内ではスマホを見るなどでなく、本を読んでいる人がいやに多いこと。
なかには「そんな厚い本、普通持ち歩く?」と思うような哲学書を読んでいる人もいた。

そういえば、知り合いの山好きの人には、なぜかいやに高学歴や研究職・専門職、オタク的素養のあるタイプなど、“インテリ”系が多い。
もちろん山好きと言っても、カジュアルな「山ガール」や「スピリチュアルスポット好き」などもいる。しかし、ここで指すのは、地域の登山会などに入って定期的に山登りしていたり、海外まで登山に行ったり、高校や大学で登山部に入っていたりする、“ガチな”タイプのこと。
そんな話をすると、進学校在籍者・出身者から「確かに登山部ってなぜかすごく頭の良い子ばかりだった」という声が多数あがった。
あくまで経験的な印象に過ぎないが、海好きにはウェイ系が多数いるのに、山好きにはいない気もする。



なぜインテリは山を好むのか


知り合いの山好きインテリさんたち、あるいはその家族に聞いてみた。

●「そういえば、登山会の人には医師や専門職の人がたくさんいますね」と言うのは、京大卒、研究職男性の妻A子さん。
なぜ山好きか聞いてもらったところ、「ダンナはいつも、客観的事実などはすぐ答えるけど、主観的なことはうやむやにするので、あまり聞き出せなかったけど」と前置きして、こんな答えをくれた。

「地元は八ヶ岳のふもとだし、小学生の遠足でも近所の山に登っていたり、中学でも登山に行ったりしていたみたいで、高校では山岳部に入っていました。どうして山が好きかと聞いたら、さあね~とか言ってましたが、たぶん理由など考えていないんだと思います。ただ、いつも地図を見たり、本をみたり、山に行くことを考えてる感じですよ」
また、山岳会の人たちについては、「みんなキャラが濃くて、私から見ると、山に行かなきゃ生きていけない人たちに見える」と言う。
「健康的なことだから、のめり込んでいても不健全な感じは全くないけど、でも一種の病というか、そういうただならないものはあるような気がします」

山好きさんたちの共通点は、「熱心で、ある意味突き抜けている、研究に没頭するタイプ」だそうだ。


●「そういえば、確かに山ではヤンキーを見かけないかも」と言うのは、有名企業勤務の男性の妻で、音大出身、短大でピアノ講師を務めるB子さん。
「ダンナは、お母さんの山好きが影響しているんです。小さい頃からよく山登りしていたから、山で育った人なんですよ。ダンナはインテリではないけど、“ズンチャカ系”の音楽は聴かないし、クラシックピアノが好きだし、バレエやオペラも一緒に観に行くし、服はいつも山用品ブランドの『mont-bell』ばかり着ています」

●「山を好きになったきっかけはやっぱりお父さんかな」と話すのは、都立難関高の山岳部で活動するC子さん。
「幼稚園の頃から家族で登山とかしてたし、キャンプとかも行っていたんだけど、小四で行った1カ月キャンプが一番影響しているかな。それでアウトドアが好きになって、山に登るキャンプなどにも行って、その流れで山岳部に入りました」

ちなみに、「ダンナはスキーが好きで、山も好きだけど、私が山好きじゃないから登山はしない」と言う東大卒、研究職男性の妻もいる。
「私は子どもの頃から家族で登山していて、娘も中学までは一緒に行ってくれたのに、陸上の長距離にハマってから付き合ってくれない」と嘆く専門職の女性もいる。


山好きインテリさんの共通点


山好きインテリさんたちは、「山好きの親」の影響で、子どもの頃から山に親しんできた人が多数のよう。
凡人が考えるような「違った景色が見たいから」とか、そんなわかりやすい上昇志向を語る人は皆無だったし、ストイック自慢をする人も皆無。それどころか、「好きな理由とか、特に考えたこともない」と淡々と言う。
さらに、傍から見て学歴・知識・教養面で明らかにインテリであっても、基本的に自分と他を比較して考えることがなく、自分のことを「頭が良い」とも別に思っていないらしいことも、一つの共通点に見えた。

山好きインテリさんたちは、山が好きであるのと同じように、日頃から本をたくさん読んでいたり、「早寝早起き」が習慣だったりする人が多い。

いずれにしてもルーツはあくまで家庭環境にあることが多いだけに、子どもを賢く育てたいと思う親が、にわかに登山を勧めたところで、たぶん意味はないんだろうなあ……。
(田幸和歌子)