四宮「なに言ってるんだ。
2017年10月13日よる10時から放送された金曜ドラマ『コウノドリ』(TBS系列)1話。
産婦人科医・四宮(星野源)が父になった康孝(ナオト・インティライミ)を静かに叱ったシーンに、SNSでは母や妻たちから賞賛の声が上がった。

1話 あらすじ
前シリーズから時が経ち、産婦人科医としてベテランの域に入りつつある鴻鳥サクラ(綾野剛)。研修医だった下屋(松岡茉優)と白川(坂口健太郎)は、それぞれ産婦人科専門医、新生児科専門医としてサクラとともに働いている。
医者として離島で働く恩師・荻島勝秀(佐々木蔵之介)のもとから帰ってきたサクラは、まったく耳が聞こえない妊婦・早見マナ(志田未来)を診察。不安を抱えるマナのために、できることをしたいと考える。
一方、サクラと同期入局の四宮は、早く仕事に復帰したいと願うキャリアウーマンの妊婦・佐野彩加(高橋メアリージュン)を診察していた。
インティライミと泉澤、ゲストキャスティングの妙
2015年に放送されたシーズン1の1話では、小栗旬、川村ゆきえ、要潤ら豪華なゲスト俳優陣が大きな話題を呼んだ。
シーズン2・第1話のゲスト俳優は、志田未来、泉澤祐希、高橋メアリージュン、ナオト・インティライミだ。突然のナオト・インティライミの登場には驚いてしまったが、このキャスティングがかなり良かった。
仕事を重視する佐野彩加・康孝夫婦を演じたのが、高橋メアリージュンとナオト・インティライミ。康孝は、育児を「手伝う」と発言し四宮に叱られるが、結局、育児休暇をとらず彩加を1人ぼっちにしてしまう。
康孝「彩加、ごめん。いままでずっとごめん。
神妙な面持ちで妻に謝罪し、赤ちゃんを抱きあげて微笑む康孝。でも、育休を取らなかった。本当に謝意があって改心したのかどうか、行動で示されない。
この「本心がわからない夫」の感じがナオト・インティライミにとても合っている。インティライミは黒目がちなので、謝るときや笑ったときに目が細くなると目の奥が見えない。そのため、表情から真意が読み取りにくくなるのだ。大きな瞳ではっきりと意思表示する高橋メアリージュンと並ぶと、余計にそう感じさせられた。
また、まったく耳が聞こえないろうあ者同士の夫婦、早見マナ・健治夫婦を演じた志田未来と泉澤祐希も良かった。
朝ドラ『ひよっこ』(NHK)で、有村架純の幼馴染である農家の三男坊を演じていたのが記憶に新しい泉澤。志田と同じく子役としてデビューしており、実はキャリアが長い。
泉澤の「ほっとした顔」は、本当に魅力的だ。
お腹の中の赤ちゃんが元気で、ほっとする。
サクラが信頼できそうな医者で、ほっとする。
倒れた妻が無事で、ほっとする。
赤ちゃんの産声を感じ、ほっとする。
赤ちゃんがなぜ泣いているかわかり、ほっとする。
ほっとする演技そのものが上手いのではなく、その前の「何もできない自分へのもどかしさ」を演じることが巧みなのだと思う。
何かしたいのに何もできない、という歯がゆさで、口をもぐもぐさせたり何か掴むように手を動かしたり、息を何度も細かく吸ったりする。
サクラ「出産のあとには、現実が続いていく」

出産の前後、彩加もマナも、こどもを育てることへの不安を吐露する。
彩加「大変だってわかってたんですけど。仕事もみんなに迷惑かけちゃうし、わがままだって。でも、どうしても……」
マナ「母は反対 育てられるの? 2人とも聞こえない
どうしても
赤ちゃん 欲しかった」
筆談で「迷惑かけたくない けど」と話すマナに、サクラは「迷惑かけても いいじゃない!」と笑ってくれた。
でも、彩加にそう言ってくれる人はいない。
サクラ「出産のあとには、現実が続いていく。赤ちゃんと一緒に現実を生きるのは、ぼくたちではない。家族だ」
前シーズン同様に、命が誕生する奇跡に感動して涙してしまうシーズン2。彩加、マナのように、こどもが欲しくて産むことができる女性は幸せだ。
だけど、その幸せな気持ちが永遠に続くわけではない。精力的に仕事をしていた彩加が、ただぼうっとどこかを眺めることしかできなくなっている様子がつらい。彼女はどうなってしまうのだろう。2話以降、彼女のその後を知ることはできるのか。
サクラが大事そうに見つめる手紙を含め、続きが気になりすぎる『コウノドリ』。第2話は、10月20日よる10時から放送予定だ。
第1話は、TBSオンデマンドやAmazonビデオ、TVerで配信中。
11月24日には、公式ガイドブックが発売予定だ。
(むらたえりか)
金曜ドラマ『コウノドリ』(TBS系列)
出演:綾野剛、松岡茉優、吉田羊、坂口健太郎、宮沢氷魚、松本若菜、星野源、大森南朋、ほか
原作:鈴ノ木ユウ『コウノドリ』(講談社「モーニング」連載)
脚本:坪田文、矢島弘一、吉田康弘
企画:鈴木早苗
プロデューサー:那須田淳、峠田浩
演出:土井裕泰、山本剛義、加藤尚樹
ピアノテーマ・監修・音楽:清塚信也
音楽:木村秀彬
主題歌:Uru「奇蹟」(ソニー・ミュージックレーベルズ)