マレーシアには飲み物の「マイケル・ジャクソン」がある

日中は気温30度を超える日が多いマレーシア。近所のコーヒーショップではお茶を片手に昼間から語り合うおじさんたちを見かける。
マレーシア人は朝ごはんの後には、お茶タイム、ランチの後にもお茶タイムだ。コーヒーでも紅茶でも基本的には甘いコンデンスミルクたっぷりの飲み物を日常的に飲む。ふくよかな人が多いのも納得だ。

そんなマレーシアには、日本人にはあまりなじみのない飲み物が数多く存在する。中でもひと際ユニークなネーミングを持つのが「MICHAEL JACKSON(マイケル・ジャクソン)」だ。

じつはヘルシーな「マイケル・ジャクソン」


早速「タウケ! マイケル・ジャクソン サトゥ(マレー語で、店長マイケル・ジャクソン1杯くださいの意)」と注文すると、クリーミーな白い豆乳の中に黒いゼリーが入った飲み物が出てきた。

マイケル・ジャクソンというドリンク名の由来は、肌の色が黒から白に変化していった米国人歌手マイケル・ジャクソンを揶揄してつけられたことにある。
もしアメリカなら、人権侵害で訴えられそうなほどパンチの効いた名前である。しかし南国マレーシアでは軽いジョークのつもりで、はばかることなく注文されている。

ドリンク内にある黒いゼリーは「Cincau(チンチャウ:仙草ゼリー)」。ほんのり漢方のような味がして、体のほてりを鎮めてくれる。仙草ミルクティーやハーブドリンクにもよく使われるこのゼリーは、ノンカロリーでダイエットにも適している。美肌効果もあるとして若い人に人気で、マレーシアではなじみ深いゼリーだ。
地元のスーパーでも普通に売られている。

マレーシアではコーヒーと紅茶を混ぜて飲む?


マレーシアの面白ドリンクはマイケル・ジャクソンだけではない。コーヒーショップやローカル色の濃いレストランへ足を運ぶと、目にするのがコーヒーと紅茶を合体させた「Cham(チャム)」である。チャムとはエスプレッソのようにビターで力強いマレーシア風のコーヒーを、コンデンスミルクたっぷりのマレーシア風ミルクティーで割ったもの。とにかくなんでも混ぜてしまうのがマレーシア人で、チャムは通常のコーヒーや紅茶のように、ホットまたはアイスで注文ができる。
マレーシアには飲み物の「マイケル・ジャクソン」がある

これだけ聞くと、「おいしいの? 」と疑ってしまいそうだが、飲んでみるとコーヒーよりも紅茶の風味が強いのか、思ったよりもあっさりとした後味となっている。

「チャム」というのは、福建語で「混ぜ合わせる」という意味だ。
中国南部から渡ってきた中華系マレーシア人の人たちの間から広まったとする説が、現地では濃厚である。マレーシアに駐在していた日本人もマレーシアに遊びに来るたびに懐かしくオーダーするほどの人気のドリンクだ。

市民権を得ている「ミロ」と「ミロ恐竜」


誰もが子どもの時に見たことがある元気にスポーツをするCMでおなじみの「ネスレ・ミロ」は、マレーシアでは「マイロ」と呼ばれている。家庭内だけのドリンクではなく、マレーシアではだいたいどこのコーヒーショップでもメニューにあり、コーヒーや紅茶のように注文できる。

マレーシア人はもともと甘いミロにコンデンスミルクを入れるのだからさらに甘い。甘いものが苦手な人は「クラン・マニス(マレー語で甘味を減らしてくださいの意)」と言って、甘さ控えめで注文することをお勧めする。さらに甘党のマレーシア人は「マイロ・ダイナソー(ミロの恐竜)」というミロの粉が山盛りになった巨大なミロを注文する人もいる。

マレーシアには飲み物の「マイケル・ジャクソン」がある


珍しい飲み物が生まれるわけ?


マレーシアでいろいろなものが混じり合った珍しい飲み物が生まれるのは、マレー系、中華系、インド系の民族が混在する多民族国家だからだ。これら珍しい飲み物に限らず、中華系の男性とマレー系の女性が結婚して生まれた2つの国の料理が混ざったババニョニャ料理、インド系のカレーと魚の頭を煮る中華系文化が融合した魚の頭カレー=カリーイカンなど、異文化が混在したさまざまな食べ物がこの国には存在している。マレーシアに行ったら有名店に限らず、道端にあるコーヒーショップへふらりと立ち寄って、ぜひその不思議な味をご堪能あれ。
(さっきー)