
1年前の2016年11月8日は多くのアメリカ国民にとって驚きの1日だった。民主党の大統領候補ヒラリー・クリントンと共和党の大統領候補ドナルド・トランプの最終決戦にトランプが勝利したからだ。
ヒラリー・クリントンは、夫ビル・クリントンが大統領を務めていた時にファーストレディーとして国政に参加。その後に米上院議員として活動するなど政治家としての経験が豊富で、当時現職のバラク・オバマ大統領のサポートも受けながら米国史上初の女性大統領を目指していた。一方で、当時のトランプ大統領は、実業家として名をはせながらも政治家としての経験や可能性は未知数で、奇抜な発言でメディアを席巻していた。
筆者の住む都市部(ニューヨーク)は民主党(クリントン)支持者が圧倒的に多い。トランプの勝利が決まった直後は、周りの友人・同僚にも「今日は会社休んでもいい?」「アメリカ人として何も言えない」と自信喪失に陥る民主党支持者(およびトランプ不支持者)がちらほらいて、大統領選翌朝のニューヨークの地下鉄車内は葬式状態だった。あの衝撃から1年、ニューヨークの街中はどうなったのだろうか?
トランプタワーが観光地になっている!
不動産王トランプは、自身の名を冠したビルやホテルを多く所有している。そのシンボル的存在がニューヨーク・ミッドタウン5番街にあるトランプタワーだ。ティファニーやグッチ、ハリー・ウィンストンといった高級ブランド店に囲まれた超一等地である。そんなトランプタワーの今はというと、ニューヨークの隠れた観光地と化しているのである。連日トランプタワーの前には観光客が大挙して押し寄せ、ビル前での記念撮影や警備中の警官を写真に収める。皆が思い思いのポーズをとり、楽しそうである。

観光地らしく、トランプグッズを販売する人も周囲にいる。売れ筋商品を聞くと、排せつ物とトランプ大統領のコラボバッジとのこと。

観光地化したはいいけど警備はタダじゃなかったんだよね……
ニューヨークの中心に、いろいろな目的の人たちが集まっていたら、ニューヨーク市当局も安全の観点からそのままにしておく訳にはいかない。大統領当選後から、トランプタワーの南側の通り(東55丁目)は車両が全日通行禁止となったまま、今に至っている。近隣は常に警察の車両と警備の警察官に囲まれていて、ショッピング街らしからぬ物々しい雰囲気だ。

現地メディアによればトランプタワーの警備コストは、トランプ大統領(またはその家族)がニューヨークに滞在している間は1日あたり31万米ドル(約3500万円!)に上るという。つまり、単純計算で1カ月連続滞在した場合、警備費は10億円を超えることになる。これは今までのニューヨーク市の財政ではまかなえないため、先日米議会にてトランプ大統領とその家族の警備費用について、新たに予算計上されることになったほどだ。

強固な警備に囲まれたトランプタワーのあおりを受けたかもしれないのが近隣の商業施設である。トランプタワー北側に位置する高級宝飾店ティファニーの旗艦店は、同店舗の売上高が大統領選後前に年度比14%減となり最高経営責任者(CEO)は辞任。南側に位置するアメリカンカジュアルの雄であるラルフローレン旗艦店も、今年4月に閉店した。
トランプ大統領、今月は日本を訪問!
トランプ大統領は大統領選からちょうど1年たつ今年11月に、日本を含むアジア5カ国を訪問予定。今回の訪日は、日米両国にとって非常に重要な機会。
あ、でも日本での警備費用のことは考えてはいけないよ!
(迷探偵ハナン)