日本でも広がりつつあるシェアサイクル。各所に設けた無人の駐輪場に自転車を配置し、24時間共同利用できるようにしたサービスだ。
この自転車シェアサービスを世界の大都市の中でいち早く取り入れ、2007年から「ヴェリブ」という名前でサービスを行なっていたのがパリだ。現在パリ市とその周辺で、約2万台の自転車と1700カ所の駐輪場(ステーション)が展開されている。ヴェリブではシステムの維持・管理を民間企業に担わせ(現在はフランスの広告会社ジェーシードゥコーが担当)、その対価として地域内各所に広告を張れるスペースを委託企業に提供する形を取っている。
ヴェリブの成功後、パリでは同サービスの自動車版「オートリブ」など、自転車以外のシェアリングサービスも加わっていった。日本でもシェアリングエコノミーに注目が高まるなか、これら先鞭をつけたパリの現在のシェア自転車事情はどうなのか。
ステーションに返却から道端に乗り捨て可へ
今年10月から新たにパリに参入したのが、香港に拠点を持つ「ゴービー・バイク」だ。すでに香港でサービスを展開している同社の特徴は、ヴェリブのようなステーションを設けず、借りた自転車を街中のどこにでも乗り捨てられる点にある。ヴェリブの場合は、返却はどこかのステーションにせねばならず、もし目的地近くのステーションが満車だと空きがあるステーションを探すまで返却できなかった。ゴービー・バイクはその手間をなくした形だ。
ゴービー・バイクの使い方は、まずアプリ内の地図を開くと、GPSと連動しどこに最寄りの自転車があるかを調べられる。近くにある自転車を見つけたら、ハンドルもしくはサドルの下にあるQRコードを読み取り、自転車のロックを外す。目的地に着いた後は、自転車を道端に乗り捨て施錠すれば返却は完了。
なお同様のサービスとしては、北京に本社があるオッフォも今年末にパリでサービスを開始する予定である。
来年から10年ぶりに一新されるヴェリブ
一方で、今までパリの自転車シェアリングを引っ張ってきたヴェリブも、変革期に入っている。10年間に渡り同サービスを請け負ってきたジェーシードゥコーとの契約が2017年で終わり、2018年から15年間はスムーヴとの契約に変わるからだ。これに伴い、パリにある自転車およびステーションは2018年から一新される。
先月末、イダルゴ・パリ市長らが出席し発表された新しいモデルの自転車は、従来22.25キロあった車体から約2キロ軽くなった。作りも頑丈にし、新規導入される自転車の3割を電動アシスト機能付きとした。スマートフォン用のUSB端子やスマホホルダーも搭載。時速25キロまで出すことができ、搭載バッテリーの走行距離は50キロメートルとなっている。
ヴェリブ利用者の悩みの種だった、ステーションに返却スペースがなかった際の対処法も考えられた。ハンドルの横から伸ばすことができるワイヤーを、駐輪された他の自転車に差し込み、すでにある自転車に数珠つなぎにするような形で、満車でも返却できるようにしたのだ。
パリでヴェリブが始まって10年。シェアサイクルは完全に市民に根付いた。そのパリのシェアリングエコノミーは、これら海外からの新規参入やヴェリブの契約変更を機会に、今年末から来年にかけて過渡期を迎えようとしている。
(加藤亨延)