
ロンドナーが並んでも買いたいもの、それが「アーデム x H&M」のコラボだ。
スウェーデンのファストファッション・ブランド「H&M」は、2004年から毎年、一線で活躍するファッションデザイナーとのコラボを行なっている。
「アーデム x H&M」は現地ロンドンでどのように受け取られたのだろうか?
初のメンズラインのデザインで注目
アーデム・モラリオグルは、英ブランド「ヴィヴィアン・ウエストウッド」で働いた後、ロンドンの名門国立美術大学ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで女性ファッションを学んだファッション界の超エリートだ。英王室のキャサリン妃もアーデムのガウンを愛用している。アーデムの象徴は、可憐な花柄プリントの生地。繊細な縫製を駆使した和らぎに、浮遊感のある普遍的でロマンチックなデザインが独創的な世界をつくり上げている。

普段はウエディングドレスなど、レディースラインに専念するアーデムだが、H&Mとのコラボでは初めてメンズラインも手がけた。これが最初で最後のメンズラインになるのではとも言われ、それがコラボの注目度を上げた最大の理由だ。
行列先頭の男性は前夜の終電に乗り並ぶ
11月2日の朝9時、開店直前のリージェント通り店の前には、待ちわびた買い物客の長い行列ができていた。

筆者が着いたのは、開店2時間前の朝7時頃。その時点ですでに行列が伸びていた。英イブニング・スタンダード紙によると、行列先頭の男性は前夜の終電でロンドン中心地に出向き並び始めたそうだ。7時半頃、整理券代わりのリストバンドがH&Mの係員によって配られた。先着順に入店時間が割り当てられるのだ。

9時35分、ようやく入店。 ストリートファッション好きの筆者のお目当ては、Tシャツ、パーカー、アノラックの3点だ。ストリート系でありながら花柄をあしらったところにデザインの斬新さを感じる。花柄も生け花のごとく日本人の和心をくすぐるデザインである。同じ商品でも花柄の配置は一つ一つ異なるという点も魅力のひとつだ。

まずはアノラックとTシャツのMサイズをゲット。身長170センチ超である著者にとって、サイズ感は日本とさほど変わらない。パーカーは大きめに作られているためSサイズを選んだが、試着後にXSが自分のサイズと気付き、サイズ交換してもらった。小さいサイズは在庫が少ない上、メンズラインを買い求める女性もいるため、入手は困難なことが多い。

なんとかすべてを購入し 、やっと一息つく。
ちなみに、花柄はちょっとという男性もいるだろうが、今回は花柄以外のものでも多彩なアイテムが取りそろえられている。スタイルも、より機能的なものからデザイン性の高いものまで多種多様だ。
「アーデム x H&M」メンズラインの見どころ
H&Mと各ブランドとのコラボは、最先端のファッションを低価格帯で世に届けるというコンセプトを持つ。なかなか手の届かない高級・有名デザイナーの服を手頃な価格で買い求められるのだ 。過去にも「コム・デ・ギャルソン」や「ベルサーチ」などとのコラボもあり、去年の「Kenzo x H&M」は記憶に新しい。ただし 数量が限られているため、毎年、熾烈な争奪戦が繰り広げられる。オークションサイトのeBayでは1.5~2倍のプレミアが付くこともある。
そんな「アーデム x H&M」の見どころはどこか? その真意をアーデム・モラリオグルは、男性ファッション誌GQイギリス版でこう語っている。
「このメンズコレクションは綿密なディテールでつくられました。とはいえ、私がレディースでやっていることをメンズで行なったのは確かです。実用性とロマンチックさとの間にコントラストを付けるのが、私の一番の楽しみだと思っています」
つまり、今までアーデムがレディースを通して形にしてきたファッション理念が、今回のコラボをきっかけに期せずとしてメンズで体現されたのだ。

毎年、新しい価値観やものづくりを世に送り出してくれるH&Mが、次はどのようなコラボを実現させるのか。 来年も楽しみだ。
(ケンディアナ・ジョーンズ)