
さる10月、衝撃的なニュースが飛び込んできた。
麺を食べる時、とりわけ外国の方が不快に感じると言われる「すすり音」。
そこに、別の音をかぶせて快適な音にするという画期的なフォークが、日清食品から産声をあげるという。
その名も、麺すすり音カモフラージュ機能搭載フォーク「音彦」(おとひこ)。
筆者は「ヌードル・ハラスメント」という言葉を聞いて以来、ラーメン店で食べるときも自分のすすり音が気になってしまっていた。だが、これを使えばいくらでも気兼ねせず“すすれる”という。ただしこれ、予約申し込みが12月15日正午までに5,000個に達成しないと製作・発売されないというのだ。いわゆるクラウド・ファンディングである。
現在どのくらい申し込みがあるのか、そもそもその「カモフラージュ音」はどんな音なのか聞いてみたいということで、東京・新宿の日清食品本社へ直撃!

入り口奥のロビーには、「日清食品」創業者の安藤百福(ももふく)さん!

おなじみの「チキンラーメン」や「カップヌードル」を発明した、インスタントラーメンの生みの親です。
音彦、いきなりピンチ!?
今回はそんな百福DNAを受け継ぐ、マーケティング部の渡邉真さんに話を聞いてきました。

日清食品のオンラインストア担当チームの最年少マーケッター(裏の顔は、日清食品野球部の主将)
――その手に持ってるのは、音彦ですね!
渡邉さん そうです!ただ、今、まだ200個しか申し込みがなくて……。(11月9日現在、209個)
――そ、そうなんですか!?大丈夫なんですか!?
渡邉さん 発表後は大きな反響がありましたが、その後はポツポツという感じで……このペースでいくと世に出ない可能性も……(肩を落とす)
――そ、そうなんですか……ま、まずは開発の経緯からお聞かせください。
渡邉さん 9月末、弊社のオンラインストアがリニューアルオープンして1周年を迎えました。それを盛り上げようと半年前から立ち上がったのが「PRODUCT X(プロダクト ペケ)。食にまつわるさまざまな問題を日清食品独自の視点で解決するというプロジェクトです。その第一弾として「ヌードル・ハラスメント」を取り上げようということになりました。
ジェットエンジン音をイメージ
――それがこの「音彦」の商品開発につながったわけですね。
渡邉さん そうですね。ただ、麺と長年関わり合ってきた弊社としては、「すすり音」自体を否定しているというわけではなく、むしろその文化を大切にしていきたいと考えています。そこで、すすり音を、聞こえなくするのではなく、別の音を重ねてカモフラージュすることを主眼に置きました。ですから、すすっている人も楽しくなり、また、その音を聞いている方も、思わずすすってみたくなるような音をめざしたのです。
――開発の裏側、ちょっとだけ教えてください。
渡邉さん 最初に行ったのが、「麺すすり音」を集音、つまり録音するという作業でした。カップヌードルを食べてはすすり、食べてはすすることを繰り返し、それを逐一サウンドディレクターの清川進也(きよかわ・しんや)さんが「集音」したんです。
――集音してどうするんですか?
渡邉さん すすった音にかぶせても違和感のないカモフラージュ音の開発に役立てました。その結果、清川さんから何パターンか音の候補を出していただき、最終的に行きついた音の方向性が、「ジェットエンジンに近い音をかぶせていこう」というものでした。
――ジェットエンジン!
渡邉さん はい。シンプルでわかりやすく、また驚きもあり、爽快感もあるような音ということでその音に近いものに落ち着きました。
その音を聞いてみる
――では、その音、聞かせていただけますか?
渡邉さん よろしいでしょうか。
※それでは、実際に麺をすすったときに流れる音を、まだ聞いたことのない方のためにお聞きいただこう。電車で聞くときはイヤホンを忘れずに。
――(実際聞いてみて)なんかかっこいいですね! 宇宙刑事が変身するときの音のようです。
渡邉さん ありがとうございます。では予約します?
――ちょっと待ってください(笑)。
渡邉さん さてこのフォークですが、中に搭載されている高性能集音マイクが麺のすすり音を瞬時に感知。近距離無線通信を通じて信号をスマホに送信することで、専用アプリから心地よい音が流れ出し、麺のすすり音をカモフラージュする仕組みになっています。近くにいる人にはもちろん、食べる本人にも、快適な音が聞こえます。
――なんか、スゴそうですね。
渡邉さん ありがとうございます。ただ、隣にいる人も一緒に食べていた場合、もしかするとその方のすすり音にも反応してしまう可能性もあるので、そこは実際の発売までに精度を高めなければなりません。

こちらはモック(模造品)だが、手になじみやすく持ちやすかった。この中に
マイクや基板などが入っても110グラムと、持っても負担にならない軽さ。白でシンプルなデザイン。
マイクや基板などが入っても110グラムと、持っても負担にならない軽さ。白でシンプルなデザイン。

左にある穴から、すすり音を集音する仕組みになっている。右には起動ボタンと、充電残量を表示するLEDインジケーターのみが配置されたシンプルかつ機能的なデザイン。充電は底の部分から。
――中のデバイスも開発されたんですか?
渡邉さん 機器製造メーカーと相談しながら詳細を詰めていきました。
――なるほど。日清さんの「麺すすり」を楽しくしたいという本気を感じますね。
渡邉さん 「そば」や「うどん」を食べるときも対応できます。スマホに、すする回数や経過時間をカウントし、それをデータとして記録できるアプリケーションをインストールして使用する仕組みです。食べている本人のすすりに合わせたカモフラージュ音を再生します。
――なるほど。いろいろとありがとうございました。予約は考えてみます(笑)。
渡邉さん 待ってますよ!
今後、さまざまな不快な音へのアプローチも!?
もしこれが発売されて、グルメ番組で例えば石ちゃん(石塚英彦さん)などが使ったら面白いだろう。大人数で使って音楽を奏でても楽しいはず。また、この世には、鼻すすりや、くしゃみするときの音など不快に思える音はたくさん存在する。今後の展開次第ではそうした市場へのアプローチもありそうだ。もちろん、この「PRODUCT X」からは、食にまつわる新たなアイディア商品を企画しているという。そのためにはまず、この「音彦」が無事発売されることが大事だ。
ぜひ「日清オンラインストア」にアクセスしてみてほしい。現在の予約数が確認できますよ。
https://store.nissin.com/jp/
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