フジテレビ系『とんねるずのみなさんのおかげでした』が来年の春で終了すると、スポーツ新聞で報じられた。
同じく報道された『めちゃ×2イケてるッ!』以上に長年に渡ってフジテレビを支えた人気バラエティ番組だけに、どう有終の美を飾るのか、もしくは噂を吹き飛ばして継続なのか、はたまたリニューアルなのか、今後の展開が楽しみなところである。


アラフォー筆者としては、やはり『おかげでした』よりも『おかげです』時代の方が思い入れが強い。
中でも1番夢中だったのが看板コーナーだった『仮面ノリダー』だ。

悪ノリ!都会的! 新しかったとんねるずのお笑いとは?


『火曜ワイドスペシャル』枠での4度の特番を経て、『みなさんのおかげです』がレギュラー化したのは88年10月。それから90年4月までが第1期となる。
深夜の『オールナイトフジ』、夕方の『夕やけニャンニャン』、23時の『ねるとん紅鯨団』と人気が加速する中、『おかげです』で待望のフジテレビ系ゴールデンタイム進出。冠番組としても初のゴールデンタイムのレギュラーだ。

とんねるずのお笑いには、それまでの漫才ブームや、ビートたけしや明石家さんまらの『オレたちひょうきん族』世代とは違って、何をするかわからない危なさとノリの良さがあった。

ボケとツッコミの概念を始めとするお笑いの方程式には当てはまらない独自のノリ。しかも、徹底的な悪ノリだ。
どこか都会的で、今風のイケてる感が全身からあふれる感じ。まさに怖いもの知らずの勢いがあった。

そのイジり倒す芸風は、パロディで存分に真価を発揮した印象。その代表が「仮面ノリダー」だったのだ。


本家『仮面ライダー』を大胆にパロった『仮面ノリダー』


『仮面ノリダー』は言うまでもないが『仮面ライダー』のパロディである。
主題歌『仮面ノリダーぶっとばすぞのテーマ』の曲調は、本家の主題歌(『レッツゴー!!ライダーキック』)を彷彿とさせる絶妙アレンジ。木梨の歌声も子門真人風で、ヒーローもののツボを押さえつつも笑いがこみ上げてしまうバランスが憎い。

ちなみに元々は1番しかなかったが、悪ノリで歌詞が増えて行き、最終的には7番まで完成。後半になるに連れ、懐かしアニメの名ゼリフ(「ラミパス ラミパス ルルルルルー」など)や若手時代のとんねるずのネタ(「時代を先取るニューパワー」など)が盛り込まるなど、やりたい放題。いかにも“らしい”楽曲となっている。

ナレーションには本家と同じ中江真司を起用し、オープニングの改造シーンも含め、徹底してオマージュ。ノリダーのデザイン、バイク、悪の組織が「ジョッカー」なのを始め、随所に本家に寄せすぎな設定が盛り込まれていた。
小林昭二演じる「おやっさん」こと立花藤兵衛、さらに経営する喫茶店名「アミーゴ」に至っては、本家そのままの流用だ。

しかし、これだけやってて権利元に正式な許諾を取っていなかったのがマズかった。
原作者の石ノ森章太郎先生は容認の姿勢だったが、当時の東映プロデューサーは嫌悪感丸出し。後のライダーシリーズの誕生が遅れたなんてウワサが立つほどに、パロディに否定的だった。
それもあってか、ソフト化は現時点にいたるまで絶望的な状況だ。


特撮としてのクオリティが高く、笑えるのはもちろん、ちょっと感動的なエピソードもはさまれるなど、随所に『仮面ライダー』への強い愛情やこだわりが感じられただけに残念である……。

毎週の楽しみだったありえない怪人の姿


木梨のノリダーに対して、石橋は怪人役として毎週様々なモチーフの「○○男(おとこ)」(ごく稀に○○女)になるのがお約束だ。

ラッコやコアラ、プードルなどの可愛らしい動物系、レンタルビデオやカメラ(写ルンです的な使い捨てカメラモチーフ)などのトレンド系、おひな様や七夕などの行事ネタ系、トーア・カマタ(石橋お気に入りの悪役レスラーがモチーフ)やマラドーナなどのスポーツ選手系など、怪人とは程遠いイメージが毎週に渡って着ぐるみ化。

後半のネタ切れ感や無理矢理感も含め、凝った造型の怪人は見どころの一つだった。
石橋本人が顔出し着用するスタイルだったが、ノリダーに比べはるかに動きにくい姿だから、その運動量は相当なもの。「日本一のぬいぐるみ師」の称号(毎週、自称していた)は伊達じゃないのである。

筆者的には、とんねるずがキャラクターを務めていた森永製菓『チョコボール』のCMそのまま(後にはんにゃでリメイク)の「チョコ玉男」、このコーナーで初めて言葉を知った「デューティーフリー男」が、特に印象深い。
あなたのお気に入りは何男?(何男だ!←主題歌調で)

大掛かりで派手なアクションや特撮もふんだんに盛り込まれており、とんねるず&スタッフからほとばしる熱量がとにかく尋常じゃなかった『仮面ノリダー』。
アドリブがバンバン飛び交う2人のかけあいが本気で楽しそうで、和気あいあいとした現場のムードも画面越しに伝わってきたことが思い出される。

今では叩かれることの多い内輪ウケネタも乱発されていたが、これも抜群に面白かった。視聴者も巻き込む空気の一体感が出来上がっていたからだろうか?

前述のようにソフト化は難しい『仮面ノリダー』だが、現時点では東映が商標登録をしているという。
ノリダー初登場は、特番時代の88年3月。
来年の2018年、30周年での奇跡が起こることを願いたい。まさにノリダーカーニバル&フェスティバル系? みたいな……。

※文中の画像はamazonより悪い噂
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