
10年越しのヒーロー大集合映画、ついに公開!
改めておさらいしておくと、『ジャスティス・リーグ』は「DCエクステンデッド・ユニバース」(以下DCEU)の5本目だ。DCEUというのはアメリカの2大コミック出版社の片方であるDCコミックス(スーパーマンとかバットマンとかのコミックを出版している)のキャラクターたちが登場するユニバースものシリーズだ。
前作『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(以下『BvS』)での戦いにおいて、唯一の弱点を突かれたスーパーマンは命を落とす。しかし、地球には新たな危機が迫っていた。強力なパワーを秘めた3つのマザーボックス(見た目はただの立方体)を奪うため、異次元の暗黒惑星アポコリプスからステッペンウルフが襲来。このステッペンウルフは攻撃した相手をパラデーモンという虫っぽい悪役に変化させる斧を持っており、このパラデーモンが各地で増加しつつあった。
『BvS』でのドゥームズデイとの戦いを生き残ったバットマンとワンダーウーマンは次なる危機に立ち向かうため、各地に散らばった超人(劇中ではメタヒューマンと呼ばれる)たちを集結させ、同盟を組むことを試みる。候補として挙がるのは、海を支配するアトランティスの王にしてイケイケの武闘派アクアマン、時空を歪めるほどの高速で動くことができるオタク男子フラッシュ、全身を機械化されあらゆるデバイスに接続できるサイボーグの3人。早速勧誘に赴くバットマンとワンダーウーマン。フラッシュは「似たような友達がほしかったから」という理由で即決OKだったものの、他の2名は協力を拒否。アクの強すぎるヒーローたちの集合計画はどうなっちゃうのか。
ワーナー・ブラザーズによって2007年に作るはずだったのが、ノーラン版バットマンがうまくいっちゃったことによって一回頓挫。『マッドマックス』シリーズのジョージ・ミラーが監督をやるつもりだったのにストップしたり、2部作にするって言ったりやっぱり1本の映画だよって言ったりと、10年あまりにわたって揉めながら制作された『ジャスティス・リーグ』。ザック・スナイダーが監督してたけど途中からマーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)で『アベンジャーズ』を撮ってたジョス・ウェドンに交代したりと、本当に完成するのか随分ヒヤヒヤさせられた。どうもDCEUはこんな話ばっかりである。
蓋を開けてみれば、『ジャスティス・リーグ』はザック・スナイダーによるDCEU作品に比べるとグッと軽く短くなり、「とりあえずこれから見る人のこともちょっと考えてみました」という内容になっていた。DCEUは先行するMCUの逆を張って、「このキャラクターがどういう人かとか、いちいち細かく説明しませんで! 義務教育やないねんから!」というスパルタ的姿勢の映画ばっかり作っていたのだが、それがちょっと改まった形である。上映時間もほぼ2時間ちょうどと常識的。ユーモアを感じさせるシーンも盛り込まれ、「オタクじゃない人が見ても大丈夫!」という作りになっている。実際割と大丈夫だと思うので、今まで興味はあったけど見に行くタイミングがわからなかった人も「とりあえず前回スーパーマンが死んだ」という情報だけ頭に入れて見にいけばOKである。
しかしこれが評価が真っ二つに割れる原因になってしまうとは、あの頃のおれたちは考えてもみなかったのだ……。
それでもやっぱり、この映画が好きだ……!
もともとのDCEUの始まりとなった作品が『マン・オブ・スティール』(以下MoS)である。この作品と前述の『BvS』はザック・スナイダーという監督によって制作された。
このザック・スナイダーというのが曲者である。モタモタ歩くだけだったゾンビを全力疾走させ(『ドーン・オブ・ザ・デッド』)、古代史もの映画を半裸男性の筋肉祭りにし(『300〈スリーハンドレッド〉』)、セーラー服に日本刀と拳銃で武装した美少女が妄想の世界で鎧武者やゾンビドイツ兵と戦う姿を大真面目に映像化した(『エンジェルウォーズ』)。ストーリーの出来不出来は置いといて、CG山盛りでケレン味溢れるキメキメの絵面を作ることに関しては天才的な人である。
そんな男がスーパーマンというほとんど神話的なヒーローの映画を撮ったから大変だ。ちょっとスーパーマンが戦っただけでビルがボコボコ倒壊し、味の濃い絵面をたっぷり尺を取って盛りたいだけ盛ったから上映時間は140分超え。あまりの重厚長大ぶりに全世界のオタクたちは言葉を失ったのである。続く『BvS』でもケレン味と上映時間の長さは健在。特にワンダーウーマン登場シーンの「えっ!今!?」という唐突さと有無を言わせないかっこよさには度肝を抜かれた人も多いと思う。
ところが『ジャスティス・リーグ』ではこのザックが途中で降板した。結果として映画全体の味付けが軽くなり、上映時間も常識の範疇に収まった。しかし、それによってDCEU独特の神々しさや盛り上がりがなくなった……という意見も多数出ている(ザックの降板だけが原因ではないけれど)。確かにそういう部分はある。
『ジャスティス・リーグ』は歩み寄りの物語だ。そもそもチームを組む連中の中には現在の人類の範疇に収まらない奴がけっこういる。彼らは人類社会からつまはじきにされ、自らの出自を隠して生きてきた。辺境の海辺でひっそり暮らしていたアクアマンや、機械の体を持て余し悩むサイボーグ。フラッシュだって愛想はいいけど、チームに参加した理由が「友達がいなかったから」である。彼らは神話的なスーパーパワーの持ち主だが、同時に社会に居場所のない人たち(人ではないのも混じっているが)である。
そんな彼らがまず互いに歩み寄り、そして協力して人類の側へと歩み寄る過程を不器用に描いたのが『ジャスティス・リーグ』である。本当に不器用なので、正直ツッコミどころになってしまっている箇所がこの映画にはいくつもある。だがしかし、不器用な超人たちがとりあえず互いに歩み寄ろうとする姿と、『ジャスティス・リーグ』の不器用さがシンクロしているように感じられるのだ。それがね……もうたまらなく愛おしいんですよ……!
映画を応援する動機としては不純だと思う。オタク特有のよくわからない肩入れじゃないかと言われたら反論できない。
そういうわけなので、筆者としてはどうしても『ジャスティス・リーグ』が好き……という結論になってしまう。異論反論は認めるので、ぜひあなたも劇場で確かめてみてほしい。
【作品データ】
「ジャスティス・リーグ」公式サイト
監督 ザック・スナイダー
出演 ベン・アフレック ガル・ガドット ジェイソン・モモア エズラ・ミラー レイ・フィッシャー ほか
11月23日より全国ロードショー
STORY
スーパーマンの死後、世界各地に散らばるメタヒューマンたちを集めたチーム設立を急ぐバットマンとワンダーウーマン。その一方、地球外からの強敵であるステッペンウルフが、強力なエネルギーが秘められたマザーボックスを強奪すべく迫りつつあった。
(しげる)