今から15年前。さまざまなテレビ番組で、耳にタコが出来るほどこの歌を聞いたものです。
1991年に制作された『おさかな天国』
2002年のヒット曲『おさかな天国』ですが、誕生したのは1991年のこと。曲作りに携わった主要メンバーは、作詞家の井上輝彦、ロックバンド『ジューシィ・フルーツ』の元ギタリストで作曲家の柴矢俊彦、その妻で歌手の柴矢裕美。
水産庁の魚食普及事業の一環として、JF全漁連中央シーフードセンターのキャンペーンソングとして制作されたのでした。
「サカナを食べると アタマが良くなる♪」
「サカナを食べると カラダにいいのさ♪」
今、改めて見返してみると、これ以上ないほどシンプルなメッセージです。この単純明快な歌詞を、軽妙なメロディに乗せて歌った『おさかな天国』は、1万本のカセットテープに焼かれて、全国各地のスーパー・百貨店における鮮魚コーナーへ配布されることに。
買い物に来たお母さんとその連れの子どもたちへ、海産物のすばらしさを啓蒙する販促ツールとして、長らく活躍するのでした。
2002年、市販用CDがリリースされる
その後、通信販売専用CDになった『おさかな天国』は、小売業者からの買い付けが相次ぎ、より多くの人から「スーパーで流れてるあの歌」として認知されるようになりました。いつしかその評判はマスメディアの知るところとなり、『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)などのテレビ番組がこぞって放送。たちまち人気を集め、「市販用として売って欲しい!」との声が殺到します。
そして、2002年3月20日。『およげ!たいやきくん』『だんご3兄弟』といった児童向け歌謡曲をヒットされた実績のあるポニーキャニオンが、市販用CDの発売権を獲得。こうして楽曲完成から12年余りの時を経て、『おさかな天国』は全国のCDショップに並ぶこととなったのでした。
リリースされたCDは、オリコン週間チャートで最高3位にランクイン。同年の『ミュージックステーションSPECIAL』、さらには『NHK紅白歌合戦』におけるハーフタイムショーで披露されるなど、「時の歌」としてテレビから流れ続けたものです。
CD盤上のイラストを酒井法子が描いていた
なお、この『おさかな天国』には、あまり知られていない事実が隠されています。それはCDのイラストを、女優の酒井法子が担当していたということ。
ジャケットやプロモーションビデオに出てくる着ぐるみのほうではありません。あれは、「おさかなボーイ」「おさかなガール」「おさかな博士」という、JF全漁連が1988年に発表したマスコットキャラ。のりピーの絵はCDの盤面に描かれているのです。
漫画家としての実績が買われた?
販促用CDが制作されるちょっと前の1980年代後半、当時アイドルだったのりピーは、漫画家「さかいのりこ」先生として活動していたのです。
ファンクラブの会報誌などでちょこっと自作の漫画を披露する程度の“なんちゃって漫画家”ではありません。有名少女漫画雑誌『週刊少女コミック』(小学館)で、ガッツリ週刊連載をもっていた本格派なのです。
執筆作品名は、ズバリ『のりピーちゃん』。同作は、のりピーが中学2年生のときに残した落書き「のりピーちゃん」が活躍する四コマ漫画。落書きだけあって、そのキャラデザは、丸い顔に点状の目が2つ、髪の毛が3本とひじょうにシンプル。およそ30年後にやってくる「ゆるキャラ」ブームを予見したかのような、なんともいえない、アクのなさです。
このゆるキャラ感をそっくりそのまま、『おさかな天国』のCD盤面上でも表現しているので、気になる方はぜひ、チェックしてみてはいかがでしょうか。
(こじへい)
※文中の画像はamazonよりピアノ&ギターピース おさかな天国 (ピアノ&ギター・ピース)