近年、こんな意見をネットでよく目にします。 子供の時、そんなこと思いもしませんでした。
叔母さんをフューチャーした2005年版『火垂るの墓』
このように大人になると、清太の落ち度が理解できる『火垂るの墓』ですが、子供時代の印象だと本作における悪役といえば、親戚の叔母さん一択でした。
実母を亡くしたばかりの2人を冷遇して意地悪く罵るその姿は、絵に描いたような嫌な奴。しかし、改めて見返してみると、叔母さん役の声優・山口朱美さんの演技が非常にうまく、そのために感情移入できたのだと気付かされます。
この叔母さんをフューチャーしたのが、2005年の実写ドラマ『火垂るの墓』(日本テレビ系)です。
当時は、終戦60年の節目ということもあり、各局でさまざまな記念特番が企画されていました。そんな中、日テレで放送されたのが、このスペシャルドラマだったというわけです。
「澤野久子」なる役名が付いた
涙なくしては語れない、歴史の重みが持つ≪本物の感動≫が、この秋、日本中を包み込みます……
こんな触れ込みで、当時散々番宣されていた終戦60年スペシャルドラマ『火垂るの墓―ほたるのはか―』。注目はやはり、原作のように清太の視点ではなく、叔母さんの視点で物語が描かれているところ。
原作では「未亡人」「小母さん」、ジブリ版では「西宮のおばさん」とだけ表記されていた叔母さんにはじめて「澤野久子」なる役名が授けられ、主人公に据えられたのです。
叔母さん(澤野久子)役を演じたのは、松嶋菜々子。当時31歳。
放送前から「綺麗すぎるし、若すぎる」という不安を抱いた人は、少なくありませんでした。アニメ版の叔母さんは、どう控えめに見ても40代中頃。割烹着が似合う典型的庶民階級のおばさんであり、それを身長172cmの松嶋が演じるなど、どう考えても無理がありました。
このドラマ版『火垂るの墓』は、原作同様「清太と節子の悲劇」を描いています。しかし同時に「おばさんも生きるのに必死だった」みたいなメッセージも発していたため、気持ちが二方向に分散され、感情移入しづらくなっていました。
とはいえこのドラマ「火垂るの墓」は、このように本来悪役であるはずの叔母さんを主人公に据え、美しすぎる松嶋菜々子にその役をやらせるという難題に挑んだなかなかの意欲作。気になる方はジブリ版と見比べてみるといいでしょう。
※文中の画像はamazonより終戦六十年スペシャルドラマ 火垂るの墓 [DVD]