そのルーツともいえるのが、1996年から2002年まで放送されたバラエティ番組『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(日テレ系)内の好評企画・芸能人社交ダンス部で、数々の芸能人が社交ダンスに挑戦。
ウッチャンナンチャンをはじめ、杉本彩、ビビアンスー、小池栄子、小倉優子、ベッキー、勝俣州和、キャイ~ン、ゴルゴ松本、アンガールズ、ロバートら、今も活躍している芸能人たちが挑んだ。
その後も2007年まで特番で不定期に放送され、高い視聴率を誇った。『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!芸能人社交ダンス部』のDVD-BOXが複数発売されているほどだ。
1996年の映画賞を総なめにした映画『Shall we ダンス?』
さて、芸能人の社交ダンスブームはまだまだ終わる気配はないが、ブームに火をつけたきっかけは、1996年公開のコメディ映画『Shall we ダンス?』だろう。
役所広司と草刈民代のダブル主演でおくる大ヒット作。役所広司といえば日本を代表する俳優で数々の映画賞に輝いているが、特に1996年は『Shall we ダンス?』をはじめ『眠る男』『シャブ極道』で数々の主演男優賞を総なめにしている。
草刈民代は、35年間バレエ界に携わり国際的に活躍するプリマドンナだったが、『Shall we ダンス?』で映画に初出演。脚の怪我の影響もあって2009年には引退し女優に転身、現在は『クリアクリーン プレミアム美白』のCMに出演するなど、活躍の場を広げている。
不器用で真面目な中年サラリーマンがダンスに覚醒
『Shall we ダンス?』は、真面目で平凡なサラリーマン、杉山正平(役所広司)が、電車の中からダンス教室の窓に物思いにふけるようにたたずむ、美しいダンス講師・岸川舞(草刈民代)を見かけたことをきっかけに物語が始まる。
杉山は優しい妻と可愛い子どもにも恵まれ、会社にも不満があるわけではなかったが、心の奥に何か満たされないものを抱えていた。吸い寄せられるように、ためらいながらも、社交ダンス教室の戸をたたき、家族に内緒でダンスを習い始める。
正平を教えるのは岸川先生ではなく、ベテラン先生だったが、徐々にダンスの世界にのめりこんでいく。そして、ダンスを通じて正平の人生が輝きだし、妻との関係、周りとの人間関係などが変わり、人生に希望の光が射す。
憧れのダンス講師がお別れに残したメッセージ
映画には恋愛も不倫もないが、ダンス講師への淡い憧れは映画の肝となっている。
また、正平の会社の同僚役には竹中直人、正平のダンスのパートナー役には渡辺えり子といった濃いキャラのキャスティングにも注目で、クセのある役者陣の大げさな演技が正平のこっけいなほどの真面目さとともに笑いを誘う。笑って泣いて胸がキュンとする名作映画なのだ。
ちなみに、この映画をきっかけに草刈民代は本作の監督・周防正行と結婚。そんなハッピーが実った映画でもある。
日本の社交ダンス人口は世界一と言われる。もちろん、芸能人の社交ダンス企画や、青春ダンスアニメ『ボールルームへようこそ』の影響もあるが、最初のきっかけは『Shall we ダンス?』のヒットであるのは間違いないだろう。
(佐藤ジェニー)