
国の秩序を守るためにある法律。時に理不尽さを感じることもあるが、基本的には私たちの生活を守ってくれる欠かせないものといえるだろう。
金魚鉢で金魚を飼ってはいけない
手軽に飼うことができるペットとして多くの人に愛される金魚。特に金魚鉢に入れた姿は涼やかで可愛らしく、夏の風物詩ともいえる。だが、ミラノの隣にあるモンツァという町では、この金魚鉢で金魚を飼う行為は法律違反になってしまう。
この法律を定めた町議会の関係者によると「金魚鉢は丸い形をしているから、外の景色が歪んで見える。その歪んだ景色に金魚が苦しめられてしまう」というのがその理由なのだとか。え……それほんと?
気になって少し調べてみたが、金魚の視力は基本的にあまりよくなく、しかも近視がキツイらしい。正直なところ金魚鉢でもそんなに影響ないんじゃないかと思うが、この法律は今も取り下げられることなく有効に機能している。
ただ、先ほどの町議会の関係者は「金魚鉢にはフィルターもなく、金魚にとって悪環境。この法律はペットを正しく飼いましょうと市民に伝えるための法律なのです」とも語っており、どうやら動物愛護の観点から定められたものであるらしい。確かにそれなら理解できそうだが、だったら「フィルター付きの水槽で飼うこと」とかでよかったのでは……なんて思うのは私だけだろうか。
犬は1日3回散歩させること
犬を飼っている人は毎日の散歩が日課になっていることと思うが、北イタリアの都市トリノでは、なんと散歩の回数が法律で決められている。1日3回以上で、違反者は500ユーロ(およそ65,000円/1ユーロ=130円で計算)の罰金が課される。
確かにストレス解消や運動のため犬を散歩させるのは大切なことだが、それにしても1日3回はちょっとキツそう。そもそも誰がカウントするのだろうか。
イタリアでは動物愛護に関する法律が多く、例えばペットを虐待したり捨てたりする行為には1年以下の懲役と1万ユーロ(およそ130万円)の罰金が課されるなど罰則も厳しい。特に犬は家族同然として大切にされる存在で、飼っている人も多い。そんなイタリアらしい法律といえば、そうなのかもしれない。
ちなみにこの散歩の際は自転車などに乗るのは禁止。犬に過度の運動を強いることのないよう、人間は犬と一緒に歩いたり走ったりしないといけないとも決められている。イタリアで犬を飼うのは時間と体力が必要そうだ。
スペイン階段でジェラートを食べてはいけない
ローマの中でもコロッセオやトレビの泉と並ぶ有名観光地として人気の高いスペイン階段。波を打つように上へと続く階段は優雅で、初見なら間違いなく「おおー!」と声が出てしまう存在感がある。
このスペイン階段は映画『ローマの休日』の中でも登場していて、オードリー・ヘップバーン扮するアン王女がジェラートを食べるシーンがある。そのため、ローマを訪れたら同じようにジェラートを持って写真を撮りたいと考える観光客が多いのだが、実はこの行為は法律で禁止されている。その理由は「歴史的建造物の保全のため」なのだそうだ。
イタリアのジェラートは柔らかくふんわりとしていて、しかも「これでもか」というくらいたくさん盛ってくれる。美味しいけれどこぼさず食べるのは慣れが必要で、街中にはよく大きな塊がべしゃっと落ちているのを見かける。確かにそんな感覚でジェラートを落とされたら、保全も何もあったものではないのかも。
というわけで、ローマでスペイン階段を訪れても、残念ながら「ローマの休日ごっこ」はできない。取り締まりの警官も多く、こっそり写真を撮ろうとしても確実に見つかるのでご注意を。
レシートは必ず受け取らないといけない
買い物や食事など、お金を払う際に受け取るレシート。いちいち見返すこともないし、財布の中に溜まりがちなので受け取らないという人も多いかもしれない。ただ、イタリアではこれも法律違反になってしまう。
イタリアは日本と比べると何かと税金が多い。ざっくりした計算だが、会社員の場合は収入の1/3ほど、個人事業主の場合は半分近くが税金で引かれてしまう。
ただ、したたかなイタリア人は税金対策にも長けていて、商店やレストランの場合はわざとレシートを出さずに会計して、売上を低く申告することで税金を抑えようとする人もいる。
この法律はそんな税金逃れ対策として施行されているもの。
(鈴木圭)