全国各地で「スターバックスコーヒーが観光名所」に 日本初の「船で行くスタバ」も
スターバックスコーヒー厳島表参道店。
昨年11月22日に開店したばかりで、表参道商店街の一等地への出店となった

昨年11月22日、世界遺産・宮島の表参道に新たな「名所」が誕生した。それは「スターバックスコーヒー」だ。

いま、全国の観光地でスタバの出店が相次いでおり、新たな観光名所にもなっているという。実際に「スターバックスコーヒー厳島表参道店」へと足を運び、その成功の秘訣を探った。


宮島の一等地にスタバ メニューは一般店舗と同じなのになぜ人気?


宮島で初となるスタバが出店したのは島の中心商店街にあたる「表参道商店街」。観光客でいつも混雑している商店街の厳島神社寄りというまさに宮島の一等地で、すぐそばには「揚げもみじ」(もみじまんじゅうの天婦羅)で知られる「紅葉堂」などの人気店も多い。
国内でスタバが島に出店した例としては淡路島や石垣島があるものの、淡路島は高速道路のサービスエリア内、石垣島は空港ターミナルビル内への出店で、スターバックスコーヒージャパンでは同店を「国内初の船で行くスタバ」とアピールしている。
全国各地で「スターバックスコーヒーが観光名所」に 日本初の「船で行くスタバ」も
大きな窓に映る豊国神社の五重塔。海側のみでなく山側の景観も抜群だ

しかし、観光地の一等地といえどもメニューは特別なものが提供されている訳でもなく一般のスタバと同様のもの。これだけ聞くと「わざわざ観光地でスタバに行く意味はあるのか?」と思うかも知れないが、このスタバの最も大きなウリは店内から楽しめる「美しい景観」だ。
海に面した建物は3階建てで、スタバはそのうち1階と2階に出店。大きな窓が設けられた客席からは宮島の街並み、厳島神社の大鳥居や豊国神社の五重塔、そして瀬戸内海や廿日市(宮島口)の街並みなども望めるほか、店内には宮島の名物である木製しゃもじを使ったアートも設置されており、いつものコーヒーでありながら、旅先でおだやかな海を眺めながら優雅なひとときを過ごすという「非日常感」を思う存分に味わうことができる。
全国各地で「スターバックスコーヒーが観光名所」に 日本初の「船で行くスタバ」も
店内にはお馴染みとなった各店独自の黒板画も健在

また、同店のもう1つの特徴は、建物内の1階の一部と3階に地ビールメーカー「宮島ビール」の立ち飲みバーとレストラン「宮島ブルワリー」が出店していることだ。
こちらの店内ではクラフトビールはもちろんのこと、牡蠣などの名物を使った食事を楽しむこともできる。
筆者の訪問時にはスタバ、宮島ブルワリーともに国内外の観光客で長蛇の列ができており、その人気っぷりを見せつけられることとなった。


「観光地といえばスタバ」から「スタバ自体が観光名所」に


1996年のスターバックスコーヒー日本進出から約20年。
東京・銀座にアジア一号店を出店した同社は、その後、都心から地方都市中心部、そしてロードサイド、観光地へと店舗網を拡大。今やアメリカ、カナダに次いで世界3位だ。
なかでも近年、国内では観光地や景勝地への出店を積極に進めており、函館レンガ倉庫街、弘前公園、上野公園、京都三条大橋、神戸異人館、出雲大社、福岡大濠公園、太宰府天満宮、別府温泉などといった日本人の誰もが知るような観光地のスタバは、ほとんどがそれぞれにおける「一等地」と言える場所にあるのが特徴。観光の合間や電車・バスの待ち時間に「ほっと一息つきたい」と思わせる立地が多く、こうした観光地への積極展開は他の大手カフェチェーンとは一線を画す戦略だ。
全国各地で「スターバックスコーヒーが観光名所」に 日本初の「船で行くスタバ」も
出雲大社参道入口の「勢溜の大鳥居」にあるスターバックスコーヒー。和を感じさせられる木造の建物が特徴で、大社を眺めながらコーヒーが飲める縁側風の特製ベンチも設置されている
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別府温泉のスタバ。この店舗は普通の内装であるが、こうした英字のみの黒板を見るのも「観光地ならでは」の楽しみだ

スターバックスコーヒーは観光地の店舗であってもほとんどの場合、通常店舗と同様のメニューのみの提供となっているが、その一方でこうした店舗の多くは地域の歴史遺産や伝統工芸などをスタバ流にアレンジして取り込んだ「スタバならでは」の上品な内外装となっており、いわばご当地スタバとも言うべき「コンセプトストア」となっている。
また、弘前公園や神戸異人館の店舗はもともと同地で長年親しまれてきた登録有形文化財の建物をリノベーションした店舗であり、京都市清水寺近くにある築100年以上の古民家をリノベーションして昨年6月に開店した「スターバックスコーヒー京都二寧坂ヤサカ茶屋店」は世界で唯一の「畳に座りながらコーヒーが飲めるスタバ」として国内外で大いに話題となった。
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スターバックスコーヒー太宰府天満宮表参道店

建築家の隈研吾氏が「自然素材による伝統と現代の融合」というコンセプトで手掛けたもので、「インスタ映えする記念撮影スポット」として外国人観光客からも人気となっている。
全国各地で「スターバックスコーヒーが観光名所」に 日本初の「船で行くスタバ」も
スターバックスコーヒー京都二寧坂ヤサカ茶屋店2階の座敷席(ニュースリリースより)

先述したとおり、今回開店した厳島表参道店も、しゃもじを用いた内装や店内から厳島神社や瀬戸内海の風光明媚な景観が楽しめることで人気を集めており、こうした「思わず入ってみたくなる店舗づくり」をすることで、今や全国各地の観光地ではスターバックスコーヒー自体が観光名所の1つになっていると言っても過言ではない。
スターバックスコーヒーでは、昨年12月22日にも木造洋風駅舎として親しまれる伊予鉄道道後温泉駅に「Line to Coffee Travel」をテーマとしたコンセプトストアを出店。有名観光地に行った際にはこうした「ご当地スタバ」へと足を延ばし、店舗ごとの特徴的な内装や黒板画を見つつ豊かな景観のなかでコーヒーを楽しむ、という観光スタイルが定着する日も近い。
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伊予鉄道道後温泉駅。言わずと知れた有名温泉地・道後温泉の玄関口だ。スタバは洋風駅舎の1・2階に出店する(ニュースリリースより)
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スターバックスコーヒー道後温泉駅舎店の完成予想図(2階)。建物に合わせたレトロモダンを感じさせる店内となる(ニュースリリースより)

(都市商業研究所)
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